表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
目指すは王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/342

180.アナスタシア流・スパルタ教育Part2

 宿に戻り、夕食を食べ。

 その日は終わった。


 自分の部屋に戻りベッドの中で明日の予定を考える。


 明日はホーンラビットとワイルドボアの肉を集めたら、早めに休んで。いよいよ王都へ向かおう。


 そう思いながら横になっていると。昼間の疲れからか、早々に瞼が閉じてきた。


「明日も、もーっと楽しくなるよね?ソラ太郎」

「へけっ」


 本を閉じ。

 俺は眠りについた。


 ◇


 鐘の音が鳴る。



 ドンドコドンドコと、ドアを打ち鳴らす音と共に目を覚ます。


「あっさー。朝だよー。あさー」


 はいはい。

 俺はベッドから身を起こし、ドアを開けるとシャロを出迎えた。


「おはよう」

「おはよー。ご飯出来てるよ。先に下行っててー」

 そう言うと、アナの部屋のドアをドンドコ叩き出した。


「あっさー。朝だよー。あさー」


 その声を聞きながら、準備をする為にドアを閉めた。


 ◇


 朝食を取り、マリアさんが来るのを待ち。今日の予定を決める。


「一応。ホーンラビットとワイルドボアの肉を集めようと思うんだけど、他に何かやりたい事あるか?」

「あたしは、それでいいと思う」

「お肉集めるなら分担した方が、早く終わるんじゃない?」

「では二手に別れましょう」


 そういう事になった。


 ◇


 という訳で。

 俺はアナと共に、ワイルドボア狩りに来ている。


 ホーンラビットは、シャロ、マリアさん、勇者が担当する事になった。例の魔道具で集めて狩るやり方だ。これならマリアさんの呪いも、最小限に抑えられるだろうという事でそうなった。


 あっちの引率が、勇者なのは心配だが致し方ない。

 本人も任せろと言っていたし信じよう。


 俺達もワイルドボアを何体か狩らないといけないので。あちらの心配ばかりしている暇は無い。


 森の中を注意深く探りながら、ワイルドボアの痕跡を探す。


「あっちだね」

「あっちか」

 アナさんの索敵が有るので、そんなことをする必要は無いのだが。それだと俺が役立たずみたいになる。がんばろ。

 しばらく森の中を歩き。


 プギィィィ!


 その鳴き声と共に、ワイルドボアが突進してきた。


「はっ!」

 ワイルドボアの突進を躱し、無防備な側面から首目掛けて、剣を振り下ろす。

 魔力を纏わせた漆黒の刃は、すんなりとワイルドボアの頭と胴体を切り離した。


 ⋯⋯俺。強くなってる。魔法なんて要らんかったんや。

 アビスシリーズなんて無くても。


 俺は――強い。


 俺は一瞬で調子に乗った。


「ワイルドボア位なら、もう相手にもならないね」

「そうだな。あの頃よりも強くなっている。何だろうな。今なら誰が敵でも勝てそうだ」

「ほんと?じゃあ、次の反応はあっちだから早く行こうか」

「ああ!」


 俺は謎の全能感に支配されていた。


 風、吹いているな。

 俺の背中を押す。


 時代の風が⋯⋯。


 ◇


 ブギィィイイイイイイ!!!


 どうしてこうなった。

 俺の目の前には、ワイルドボアの10倍はあるサイズの、ワイルドボアが居た。


 コイツアレだろ、以前シルバーファング。現ゴールドファングが倒したっていう、上位種だろ。新しいの出てたの?うそやん。


 しかし⋯⋯。デ、デカイ。ハイエース位はあるぞ。

 マルコさん達が倒したのはマイクロバス位だったか。

 それに比べれば、少し小さいか。


 まぁいいさ、コチラには無敵のアナスタシア様が付いているんだ。こんな奴⋯⋯。


 ⋯⋯? あれ?


 い、居ない?!?! 嘘だろ!!


「ア、アナさん!! どこ!!」


 目の前の上位種ワイルドボアは前足で地面を掻き、すぐにでも襲い掛かって来そうだ。


 ダメだ。アナさん、スパルタモードに入ってるやつだ。




 てめぇなんか怖かねぇ!


「野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!」


 俺が雄叫びを上げると、ワイルドボアは俺との間合いを一瞬で詰める。

 何とか寸前で回避しすると、ワイルドボアは後方の木に激突した。

 そのまま2、3本の木を纏めて薙ぎ払い。動きを止め、コチラに向き直る。


 わーお。当たったら死ぬなこりゃ。


 どうしようか⋯⋯。

 出来れば魔石と素材は欲しい。

 俺の魔法が強化された影響で、運悪く魔石に当たると消滅してしまう。何で消えるのかは分からないけども。多分殺意マシマシで、威力が有り過ぎるのだろう。


 〈深淵の砲弾(アビス・シェル)〉と〈深淵の墓所(アビス・グレイヴ)〉は使えないな。

 そうなると⋯⋯。

 〈深淵の弩砲(アビス・バリスタ)〉しかないか。

 確か魔石の位置は、心臓付近だから。上手い事、頭だけを撃ち抜けばいけるな。


 ワイルドボアの突進が再開された事により、俺の思考は中断された。

 横っ飛びで突進を回避し、すぐに体勢も立て直す。

 ワイルドボアも、今度は木にぶつかるよりも前に、方向転換し再度向かってくる。


 覚悟を決めるか。


 身をかがめ剣に魔力を送る。

 そして、盾の前で水平に構えると、向かって来るワイルドボアの足に狙いをつけて、交差するように刃を押し当てる。

 剣と盾を持った腕に衝撃が走る。

 身をかがめたまま、脚に力を入れ踏ん張り、盾で剣を押し出し。

 振り抜いた。


 前足を切り落とされたワイルドボアは、そのまま前のめりに倒れ、立ち上がろうとするも。上手くいかない。


 動きの止まったワイルドボアの頭に、剣の切っ先を向け。唱える。


「〈深淵の弩砲(アビス・バリスタ)〉」


 黒と緑の魔法陣が重なり、1本の矢が放たれた。

 それは光さえも飲み込む黒。

 この世のあらゆる事象さえも、己の色に塗りつぶし、そして道連れするかの様に崩壊する。存在を消し去る力の一端。


 頭に黒の矢を受けたワイルドボアは、そのまま息絶えた。




 ⋯⋯。


 た、倒せた。


「っし! やったあ『お疲れ様』ぎゃあああああ!!」

 歓喜の声を上げようとした時、突然頭上からアナが降ってきた。

 急に直立不動の人間が、目の前に降ってくるのはホラーでしかない。心臓が口から飛び出るかと思った。実際8割くらい出てると思う。


「やっぱりソラの魔法って、威力あるよね。この革簡単に貫通したし」

「ママからの贈り物だからな」

 そう、俺の第2のママである。『深淵の使徒』からの贈り物だ。通常の狩りでは使えないが、このワイルドボアみたいな上位種が相手なら、かなり有効な魔法だ。


 魔石や素材の犠牲を無視したらだけど。

 それよりも。


「どこ行ってたの?」

「そこの木の上から見学。ソラ1人でも倒せるかなー、と思って」

「そうですかな⋯⋯」


 相変わらずアナのスパルタモードは厳しい。もう少し優しく接して欲しいよね。

 にしても、このワイルドボアの大きさなら、肉の確保は十分か。


「アナ。肉はコイツ1匹で十分賄えるよな?」

「そうだね。もう街に戻る?」

「ああ、早く戻ろう」

 俺はいち早く、街に戻りたい理由があった。


「左腕。折れちまった」


 ワイルドボアの突進に、俺の左腕は耐えられなかった。めっちゃ痛い。早くおうち帰りたい。


「それなら、コレ使って」

 アナは〈収納魔法(アイテムボックス)〉から紫色に発光するポーションを取り出し、渡してきた。


「何コレ」

「上位のヒールポーションだよ。骨折くらいならコレですぐ直せるから。さっ、グイッと」

「わ、分かった⋯⋯。ありがとう」

 瓶に入ったポーションは、少し動かすと緑色に変わった。わー、凄い。どんどん色が変わる。⋯⋯飲んでいいやつなの? コレ。


 躊躇う俺を見て、アナは瓶を手に取ると蓋を開け、俺の口にその太いモノをねじ込んできた。そこに、少しのエロスを感じ——無い! ゲロマズい!!おごごごごご。


 とても言葉では表すことの出来ない味に、俺の意識は飛びそうになった。なったが、味のマズさにまた意識が呼び戻される。


「お、おおおぉぉぉ。オエッ。ま、不味い⋯⋯」

「ちゃんと全部飲んだね。もう腕の骨も治ったでしょ?」

「えぇ? ああ、本当だ、痛みも消えてる。オエッ」

 口の中にまだ味が残ってる。何コレ、何味? 苦いし甘いし酸っぱい。辛味もあるし何かスースーする。何コレ。何なの。


「効果は有るけど味が微妙って事で安かったんだけど、そんなに酷い味なんだ⋯⋯。ごめんね?」

「のん、だ事ないの?!」

「私。骨折るような怪我しないからさ」


 恐ろしい。コレが強者の振る舞いか。

 俺が強くなった? そんなもの、本物の前では霞んでしまう。もっと強くならねば!!


 〈収納魔法(アイテムボックス)〉から飲み物を取り出し、1口飲む。

 よし、口の中の味は消えた。


 俺とアナは、ワイルドボアの死骸を回収し、街に戻ることにした。


 シャロ達は上手くやれてるだろうか。

 そう思いながら、襲い来るゴブリンを蹴散らしながら街へと戻った。


 ◇


 結果から言うと。

 シャロ達は、ホーンラビットを50匹程持ち帰ってきた。

 俺も通常のワイルドボア1頭と、上位種のワイルドボアを1頭。

 肉の量としては、十分過ぎるほど取れたと思う。

 そのままギルドに持ち込み、魔石と肉、上位種のワイルドボアの毛皮を手に入れた。

 ホーンラビットの魔石は、そのまま魔道コンロの燃料にする事にした。

 上位種ワイルドボアの魔石は取り敢えず〈収納魔法(アイテムボックス)〉内にしまっておく。そのうち使う機会が来るかもしれないからだ。無いなら売ればいい。

 毛皮もしっかり加工すると、上質な防寒着になるという。これの出番は当分先だな。


 そんな訳で、無事。王都に行く準備が出来た。いえ〜い。

 これで何時でも出発できる。


「準備は出来たけど、何時出発する?」

「明日とかー?」

「そうだね。他に予定も無いし」

「では、明日出発という事で〜」

「シズクちゃんカシコマリ!」

 明日出発する事になった。

 王都に行く予定以外何も無いしな。

 今日は早めに寝て、明日の朝イチで出発だな。


 風呂に入り疲れを癒してから、5人で早めの夕食を摂った。


 いよいよ王都に向かうんだな。

 今までで1番長い移動距離だが、ワクワクする。

 何せ、俺達が『ハーデンベルギア』になって、初めての旅だ。

 それに今回は、何時も留守番のアナも一緒だ。

 仲間と共に色々な場所を旅する。

 これぞ異世界の冒険者って感じだな。


 俺はワクワクしながら眠りについた。



次回より、いよいよ第1話冒頭に至るまでの物語がスタートします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あの名言を叫びながら自分は武器を使うなんて…
ノリがこのすばっぽくなってきた
王都民が裸足で逃げ出す未来が見え…ない…いや見える…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ