表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
先代勇者シズク編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

170/345

168.私の我儘

 私が⋯⋯。


 血濡れの魔女本人の、生まれ変わり。


 今まで散々言われ続けてきた。

 それが本当の事だと。

 勇者本人の口から告げられた。


 この女は何を思ってこんな事実を告げたのだろうか⋯⋯。

 ハッキリ言って、「正気か?」と思った。

 今まで散々血濡れの魔女という、過去の亡霊に苦しめられた身としては。

 本当の血濡れの魔女は、物語の中の人物とはかけ離れていた。

 その事実だけでも良かった。


 なのに、この勇者はそれを台無しにする様に、お前は本当に生まれ変わりなんだと告げて来た。


 今私の頭の中は、混乱している。

 私の前世が血濡れの魔女で、実際に愛する者を奪われ、死んだ存在だと。

 ソラが死んだら云々考えていたが。覚えていないだけで、別の人間でそれを経験している。


 今までで一番「コイツ何なの?」という思いが強く浮かんでいた。

 そんな私の思いを読んだ、勇者が口を開く。


「いやーごめんごめん。ぶっちゃけ私の我儘なんだよね。君がヴァイスの生まれ変わりだって、気づかなければこんな事しなかったし。ヴァイスの記憶も見ることなんてなかったんだよね~」

「⋯⋯ハッキリ言って、かなり無責任な行動だったと思いますよ?」

「自分でもそれ位、分かってるって~。しょうがないじゃん、理屈じゃないの。突然ヴァイスの生まれ変わりが、目の前に現れたんだから。止められなかったんだよ~」

「私がこの事実を知って、変な気を起こしたらどうしてたんですか?」

 そうだ、もしもこの事をしって、血濡れの魔女として。世界に復讐を考えていたら、この勇者はどうしていたのだろうか。


「それはないでしょ」


 勇者はあっさりと否定した。


「なんでですか?」

「決まってるじゃん。君にはソラが居るでしょ?それに仲間も居る。なら大丈夫」


 そう言った勇者の顔は、確信を持っていた。

 ⋯⋯そう。そうね。彼女は知っているんだ。

 仲間という存在が、どれほど大きいのかを。


 これ以上、勇者を責めても仕方ない気がして来た。

 ソラと仲間が居るから大丈夫と言われたが、彼女なりにそう思える確信があったのだろうか。


 ⋯⋯まさか。

 いや、そんな筈は無いと思う。


 シロとブランという2人の人物。

 ソラは別の世界から来た。

 でも、シャロちゃんとマリアさんは、この世界で生まれ育った⋯⋯。



「もしかして。シャロちゃんとマリアさんが、シロとブランって人の生まれ変わりなんですか?」



「全然違うけど?」

「違うんかい!!」

 思わず声が荒ぶる。

 自分の中でそう確信して、覚悟を決めたのに⋯⋯。なんかすごく恥ずかしい気がして来た。


「家の中に居る2人に関しては、私は何も知らないよ。あー、マリアって子が『不死』の祝福持ってるから、大変だよね~とは思うけど」


 ⋯⋯またとんでもない爆弾を平気で、投げて来た。

 マリアさんが不死?国が幽閉して、管理するのが当然の、あの加護の不死?

 次から次へと新事実が溢れて来て、私の頭がパンクしそう⋯⋯。


 というか思ってた以上に、問題を抱えた人が多すぎる⋯⋯。

 もしかして、シャロちゃんも何かある?

 や、やめてね?信じてるからね?


「いやー。まさか、私がこの世界に呼んだ子と一緒に来るんだもん。そりゃビビるよね」

「ビビったで済ませる気ですか?」

「さっきからウルサイなー。死にゆく勇者の終活に、付き合ってあげようと思わないわけ?」

「終活?異世界の風習なんて、私に分かるわけないじゃないですか」

 私がそう言うと、勇者は空高く舞い上がり。捨て台詞を吐いた。


「ハイハイ、私が悪かったですよ~。少し頭冷やしてくるから、先に家の中入ってなー」

「あ!ちょっと!⋯⋯もう!」


 勇者は本のまま、何処かへ飛んでいってしまった。

 あの状態で魔物に襲われたらどうするんだろ。

 腐っても元勇者なんだし、心配するだけ無駄ね⋯⋯。


 ⋯⋯。

 ⋯⋯⋯⋯。

 ど、どうしよう。

 怒った感じで、外に出ちゃったから戻りづらい。


 そういえば。ヴァイスさんの記憶でも、動く髪をシロさんに受け入れてもらえたんだっけ。

 私も、初めてソラと会った時。髪が奇麗だって言ってくれた。


 こんな所で共通点があるなんてね。


 そう思うと、この出会いは必然だったのかもしれない。

 もしも、その終わりも一緒だというのなら。

 そうならない様に、必ず守ってみせる。


 私はアナスタシア・ベールイ。


 そう、私は『血濡れの魔女』


 その名の通りに、この身が血に濡れようと、大事な人達を守ってみせる。


 私は一呼吸し。

 勇者の家の扉を開いた。

 最初に言う言葉は決まってる。


「ただいま!」


 ソラと仲間達が居る。

 その場所が、私の帰る場所なのだから。


 ◇


 やべぇよ。

 アナが怒って出て行ってしまった。

 シャロとマリアさんは大丈夫だと言っているが、俺にはそう思えない。

 下手したらこのまま死ぞ?

 一応、勇者がフォローに行ったが。あの勇者だからな⋯⋯。あんまり期待できそうにないよな。


 しばらくの間、テーブルで頭を抱えている俺を他所に、シャロとマリアさんがキッチンを漁りだした。

 おいおい、一応人の家だぞ?食材があっても、100年物しか出て来ないぞ?


「なにしてんの?」

「んー?ご飯の準備しようかなーって」

「勇者様も、お腹を空かせているかもしれませんからね」

 全く、その位この俺が用意していないとでも思ってんのか?

 俺は〈収納魔法(アイテムボックス)〉から、前日に作っておいた。サンドウィッチと、適当に摘めるおかずを取りだした。


「昼飯はもう用意してあるぞ」

「おおー、さすがー」

「わぁ、美味しそうですね!」

「食べるのは、2人が戻って来てからだぞ?」

 俺の用意したお弁当を目の当たりにした2人は、サッサとキッチンから離れ席に着いた。


 あとはアナと勇者が、帰ってくるのを待つだけだが⋯⋯。


 それから暫くして、部屋に備え付けられている時計を見ると、アナが出ていってから30分は経っていた。


 その時。


「ただいま!」


 玄関から元気な声で聞こえてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
残念ながらシャロちゃんも訳あり! アナが一番マトモまである。
自己で立て直しおった、、、。 メンタル強いぞこのヤンデレ、、、
誤報! 前半部の勇者の発言に なんだよねのとこがだんだよねになっていますー。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ