表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
パーティ結成編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

144/342

142.速攻解決、教会生まれのIさん。

 イキリマクリタケの納品や、黒歴史暴露大会など色々あった為、宿屋に着く頃にはお昼を少し過ぎていた。


 入口の扉を開け中に入ると、丁度アナが2階から降りてくるのが見えた。


「ソラにマリアさん、お帰り〜。用事は済んだの?」

「おはよう。いや、これからお祓いをしてもらうんだよ」

「お祓い?何の?」

「俺の部屋に幽霊が出てきてない⋯⋯」

 俺の言葉を聞き、アナは顎に手を当て考える仕草をした。


「それは可笑しいと思うけど」

「いやいや、笑えんだろ⋯⋯、幽霊だぞ?

 」

「⋯⋯あー、そういう意味じゃなくて、この宿に結界張ってあるから、そういうのは近付けないハズなんだけど」


 結界?この宿にそんな大層なものが備わっているのか。

 シャロのお母さん辺りがやったのかな?確か魔法の腕は凄いって聞いたし。


「それって幽霊も弾くやつなのか?」

「そうだね。基本悪意あるのは入れない様に設定したから」

「あらまあ、確かに。言われないと気付けませんね、コレは。流石ですね」

 そう言ってイザベラさんは驚いていた。


「この宿に来た日から張ってあるけど、誰も気付けなかったからね」

 あ、この結界ってアナが勝手にやったやつか。口振りからして、例によって事後報告で済ませたんだろうな。


 ふーむ、という事は俺の部屋の奴は、それだけ強力な幽霊って事なのか?

 マジか、白い子供連れてないよな⋯⋯。

 テレビは無いからな奴の線は無い。

 だがココは異世界。

 俺の既存の知識以上のが来るかもしれない。

 そうと決まれば。


「アナも一緒に来てください。お願いします」

 俺は腰を90度に曲げて頼み込んだ。


 ◇


 一同2階へと上り、俺の部屋の前に並ぶ。

 イザベラさんは、懐から十字架を取りだし、片手で持つと扉へと手をかけた。

 俺はその様子をアナの後ろから、顔を覗かせた見ていた。


 扉がゆっくりと開かれ。


 部屋の全貌が明らかになる。


 依然として部屋の隅に、体育座りした黒い人影が見えた。


 アナの後ろで、チワワの様にプルプル震えていたが、今の俺は1人では無い、アナやマリアさん、そして専門家のイザベラさんも居る。

 その事で俺の心に多少の余裕が生まれ、幽霊を見る勇気が生まれた。


 全身は黒く、というか真っ黒だ。

 大きさも大人という訳でもなく、結構小さい。幼稚園児位か?

 そして背中に剣の柄のようなものが見えた。


 突然、幽霊は突っ伏していた頭をゆっくりと持上げ、俺達に顔を向けた。


 その顔は、鼻や耳といった顔にあるパーツは無く、凹凸も無い為ツルンとしていた。

 棒人間の頭が、1番近い見た目をしているだろう。


 そして目と口はより濃い黒で


 ●-●


 こんな感じの顔をしてい。


 ⋯⋯。


 なんか可愛いな、コイツ本当に幽霊か?

 俺の中に疑問が湧いてきた。

 いやいや、幽霊じゃなかったとしても、コイツに居座られると困る。

 起きる度に、絶叫するのは嫌だ。


 俺の心の中で葛藤していると、イザベラさんが部屋に足を踏み入れ、言った。


「確かに居ますね、姿は見えませんが。気配はあります、そこの隅に居るのでしょ?」

「は、はい。子供くらいの大きさのが⋯⋯」

「⋯⋯分かりました。ではいきますね」


 そう言って、イザベラさんは十字架を突き出し唱える。


「〈浄化魔法(プリフィケーション)〉」


 そして、その見た目の年齢からは、想像もつかない様な身軽さで、右足を高く振り上げ。


 幽霊の頭上目掛けて、踵落としを放った。


 モロに頭上から踵落としを食らった幽霊は、頭が凹み。そのまま黒い砂粒の様になってパンッとバラバラに弾け飛んだ。


 ⋯⋯えぇ??

 な、なんで物理?そこは浄化の力で塵にするんじゃないのか?


「何で踵落とし?」

 俺の疑問を、アナが代わりに代弁してくれた。ホント何で?


「イザベラ様は浄化魔法を、その身に纏えるので、そのまま殴れば浄化出来るという訳です」

 ⋯⋯なるほど、意味が分からん。


「このやり方が1番確実ですからね」

「まぁ、確かに消えましたが⋯⋯。ん?」


 黒い砂粒の様になった幽霊は、そのまま窓の外へと流れて行き。

 再生された顔は、凄いしかめっ面をしていた。

 ただ座っていただけなのに、踵落としを食らった。そんな表情だ。


 お前が俺の部屋に現れなければ、こんな事にはならなかったんだが⋯⋯。

 そして、風が吹くとそのまま何処かへ飛んでいってしまった。


 ⋯⋯これで、幽霊騒動は決着が付いたな。

 俺はアナの背中から離れ、イザベラさんに礼を言う。


「助かりました。ありがとうございます。コチラ少ないですが⋯⋯」

 そう言って、紙に包んだお金を差し出す。

 イザベラさんが、チラッと金額を確認し、うんうんと頷き、言った。


「この位の事でしたらまた私を頼りなさい、貴方は敬虔な信徒になれますよ。どうですか、我が宗派に入りませんか?」

「あっ大丈夫です」

 俺はそそくさとアナの背中に戻り、アナの背中越しに提案する。


「もうお昼を過ぎていますし、このままお昼食べていきます?お礼も兼ねて御馳走しますよ」

「そうですね⋯⋯。折角ですから御馳走になっていきましょう。良いですねマリア?」

「はい。ソラさんの料理はおいしいですよ~」

「フフフ、胃袋はもう掴まれてるようですね」

「え!?あ、いえ、そんなことは⋯⋯」

 アナがイサベラとマリアの前にスッと割って入り一言。


「ダメ」

「あらあら、怖いお方に目を付けられている様ですね。マリア、貴方もがんばりなさいね」

 そう言ってイザベラさんは、一階へと降りて行った。

 うーん、年長者の余裕って感じだな。

 それに、アナも結構本気で威圧してたよな。肌がピリピリするし。

 それをものともしないとは、それだけ経験を積んでいるという事か⋯⋯。


「ぐぬぬ⋯⋯」

 そんなアナの肩に手を置き、落ち着かせる。


「まあまあ、あの人もきっとからかっているだけだって。そうでしょ、マリアさん?」

「そ、そうですね!きっとそうだと思います!」

 ⋯⋯よし。きっと今までのやり取りも冗談だ、そうに違いない。じゃないと今後ぎくしゃくする事になる。

 こんな時シャロが居てくれたら、適当にお茶を濁せるんだが⋯⋯。


 何処行ったんだアイツ。


 俺達は一階へ降り、俺の作った昼食を一緒に食べた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ