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異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~【書籍化決定】  作者: ノエ丸
ローズガーデン編

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126.小さいミスの積み重ね

 白い魔物との戦いを終えた俺達は、街を目指して森の中を進んでいた。


 誰も一言も発さずにいた。

 先程の戦闘の疲れもあるが⋯⋯。


 1番は、あの魔物を取り逃がしたという事実が重くのしかかっている。

 人の声を真似し、更に魔法まで真似をする魔物。


 それは言うなれば、場数を踏めば踏むだけ、奴の強さは際限なく上がっていくということ。

 魔法の使い方が、かなりぎこちなかった事を考えると、奴はまだ生まれて間もない気がする。

 俺達は千載一遇のチャンスを逃したのかもしれない⋯⋯。

 あの時ちゃんと首を跳ねていれば、こんな事にはならなかったのに⋯⋯。


 たらればを考えていてもしょうが無いが、こればっかりは⋯⋯。


「⋯⋯ハア」

 自然と溜め息がこぼれる。

 そんな俺にロゼさんは、優しく声をかけてくれた。尻を触りながら。


「気を落としちゃダメよ〜。正直、今回の奴はイレギュラー過ぎたのよ。私達ですら、あんな魔物が居るなんて聞いたこともないんだし。気にしない、気にしない〜」

「とは言え、チャンスをダメにしたのは事実ですね。ギルドからの小言は覚悟する様に」


「⋯⋯⋯⋯はい」

 飴を貰った瞬間に、鞭が飛んでくる。

 多分、ローズガーデンはこんな感じで機能しているのだろう。


「ごめんなさいね〜。この子は昔から遠慮なくズバズバ言う子なのよ〜」

「私は事実を言ってるまでですよ、ボス」


「⋯⋯はい」

 無言で青年氏が肩を叩き、頷いてくれた。

 彼も色々言われているのだろうか⋯⋯。


 まぁそんな事よりも、他に気になる事がある。

 マリアさんの祝福の件についてと、あの戦い以降、シャロが不気味なまでに大人しく、静かだということ。

 何時もなら「お腹空いたー」と騒ぐんだがなぁ。

 なので、気軽な感じで話しかける。


「どうした〜シャロ〜、何時もみたいに腹は空いてないのか〜?」

「⋯⋯え?あ、うん。空いてない」

 やっべぇぞ。

 こんなしおらしい、シャロは見た事がない。

「私は1度潰されたので、お腹すきましたね〜」

 マリアさんは、変わらず腹が減ったようだ。

 ナチュラルにエグい事言ってるが、今は後回しで良いだろう。聞かなかったことにする。


「⋯⋯ソラちゃん。貴方達3人は、街に着いたら私のクランに付いてきてもらっていいかしら?話したい事があるのよ」

「⋯⋯分かりました。2人もそれでいいか?」

「わかりました〜」

「⋯⋯うん」


 シャロは何だか重症だな⋯⋯。

 白い魔物と激突した時の、ダメージが抜けてないのかもしれない。

 宿に着いたら、作り置きの料理をご馳走するかな。


 白い魔物との激闘は、思ったよりも俺達に見えない傷を残したのかもしれない⋯⋯。



 ◇


 帰り道に、白い魔物からの襲撃の可能性を考え警戒していたが、特に何も起こらなかった。

 相変わらず、ここら辺の魔物はおとなしい様で、一度姿を見掛けたが直ぐに逃げてしまった。


 地域によっては、そういう所も有るよな。

 ドレスラード近郊の魔物は、好戦的すぎるからモルソパを見習って欲しい。


 街への門を潜り、俺達一行は1度、冒険者ギルドへと向かう事にした。

 白い魔物の事を報告する為である。


 街に着く頃には、シャロもいつもの調子を取り戻しており、少しだけ元気が出ていた。

 今は俺の前を、胸を張りながら歩いている。


 ◇


 そんな訳で、冒険者ギルドへと着いた訳だが。

 俺達は、掲示板に貼られている、ある報告書を読んでいた。


 要はアレだ、隣町に突然現れた、白い色をした訳分からん魔物が、[(シルバー)ランク]を数名殺して、モルソパに向かったよって内容だった。


 そうだね、白い魔物の事だね。


「⋯⋯もう情報有ったのね」

「ですね」

「あー、でもボス。受付に聞いたんですが、掲載したのは昨日の昼頃みたいですよ?」


 俺らも昨日は、ギルドに寄らずにローズガーデンに直で向かったから、この情報を知る機会がなかったな。

 それはロゼさん達も同じか。

 昨日の夕食の席では 、そんな会話は無かったからな、誰も知らなかったんだろう。


 事前にこの事を知っていれば、もう少しやりようはあったかも知れない。結局はたらればだな。


「この事知っていれば、武器以外もマトモなの装備したのにね〜」

「ですね、少し慢心していましたね」

 俺からしたらちゃんとした装備に見えたが、ここから更に本気の装備があるのか⋯⋯。


 それにしても、本当に小さいミスが重なった結果、あの白い魔物を取り逃がす結末になってしまったんだな。いやー、流石に胸に穴空いたら死んでると思うじゃん?腕も切ってドバドバ血出てたんだしさー。


 俺は悪くねぇ、の精神は大事だよね。

 とはいえ、交戦したのでそのことを報告しなくてはいけない。

 ロゼさんが適当な男性職員の尻を捕まえると、白い魔物と戦い、右腕を切り落としたが街とは別の方向へと逃げられてしまった事を伝え、冒険者ギルドを後にした。


 ◇

 そのままお俺達は、ローズガーデンのクランハウスへと向かう事になった。

 ロゼさんから、なにやら話があるそうで⋯⋯。

 多分、マリアさんの祝福についてだろうな。


 俺とシャロも事前に聞いていた祝福は、傷が直ぐに治るが、やたらと腹が減るというもの。

 カロリーを消費して回復する程度に思っていたが、今日のアレを見るに、もっと異質な何かだろう。


 そんな訳で、サクサク進み。

 前日通された、ロゼさんの仕事部屋へと再度やって来た。

 部屋に入ると、ロゼさんが口を開き。


「2人は誰も、この部屋に入れないように警戒して頂戴。盗み聞きもダメよ。いいわね?」

「「了解」」

 クリスさんと青年氏は返事をすると、部屋から出ていった。


 部屋に残ったのは、ロゼさん、俺、シャロ、マリアさんの4人。

「取り敢えず座って頂戴」

 部屋の中央には、低いテーブルを挟んで向かい合った2つのソファーがあり、片方にロゼさんはドカッと座り、深いため息を吐いた。


「あーー、ほんと疲れたわねぇ。貴方達も好きに座っていいのよ?」

「分かりました」

 ただ座るだけでも個性が出るもので、シャロは部屋の中をキョロキョロ見回し、足はブラブラと遊ばせたりと、落ち着きのない座り方をし、マリアさんは背筋をピシッと綺麗に伸ばし、手は太ももの上で揃えて座っていた。

 俺は足を少し広げて、ソファーの背もたれに背中をくっ着けて座っている。


 やっと座れるからな、少し位ダラケてもいいだろう。

 マリアさん以外、ダラーんと座っていると、ロゼさんが口を開く。


「えーっとねぇ、私は回りくどいのは好きじゃないのよ」

 まぁ、正直そんな感じはする。

 ロゼさんはマリアさんを、真っ直ぐ見つめながら、意を決したように言う。



「マリアちゃん。貴方の祝福の加護は⋯⋯」


 そこで1度区切ると。


「『不死』なのよね?」


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