123.VS白い魔物④
空中で炎の槍をその身に受けた白い魔物は、燃え上がりながら勢いよく地面へ叩き付けられた。
「援護します!〈岩の拘束具〉!」
マリアさんが呪文を唱えた様で、白い魔物の周囲の地面から岩の手が現れ、白い魔物を掴み拘束した。
視線を向けると。回復魔法のお陰で、シャロは起き上がるまで回復出来ていたが、膝をつき肩で息をしており、かなりきつそうに見えた。
無事そうで良かった。だけどあの様子じゃ暫く動けないな。
マリアさんの魔法で拘束されている間に、確実に魔法を当てる為に駆け出す
俺が駆け出すのと同時に、岩の手はあっさりと壊され、白い魔物は俺目掛けて襲い掛かろうとした。。
ロゼさんはすぐさま近づき、白い魔物の動きをハルバードで押し止める。
何度目かになる激しいぶつかり合い、心なしかロゼさんの動きが僅かに悪くなってきている気がする。
ロゼさんが吠える様に叫ぶ。
「ソラ!考えがあるなら実行しなさい!私ごとでも構わないわ!ヤリなさい!」
「私達はちゃんと避けるので、心配しないでください」
ロゼさんとクリスさんが前後から白い魔物を囲み、その合間を縫って青年氏が矢を放ち、その場に釘付けにした。
⋯⋯よし、もしダメでも今はこれしか手が無い。
白い魔物に向かって再度駆け出し、魔法の命中率を少しでも上げる為に距離を詰めた。
「〈加速〉!」
一番効率が良いのは、ゼロ距離でぶち込むことだ。
スキルの効果で、自分の体が軽くなり一気に速度が上がる。
両目を開いて、瞬きを止め。
白い魔物を取り巻く猛攻の中へと飛べ込んだ。
俺が懐へ飛び込んできたのを感じ取った2人は、意図的に俺が侵入した付近への攻撃を緩めた。
「〈闇の投槍〉!!」
目の前に居る白い魔物へ向けて、黒い魔法陣を展開。
空中に5本、左手で1本、計6本の漆黒の槍が白い魔物を襲う。
『〈鉄の柱〉』
⋯⋯⋯⋯は?
白い魔物の目の前に、鉄の柱が迫り上がり、空中で撃ち出した5本の槍はその柱に阻まれた。
左手の1本は最後に撃つつもりだった為、まだ手の中に有る。
咄嗟に柱の左側に飛びのき、白い魔物を視界に再度写すも。
白い魔物の手が、俺の胸を押さえつける様に叩きこまれた。
「ガハッ⋯⋯、クソが!食らいやがれ!」
白い魔物の手が俺に触れているという事は、それだけ接近しているという事。
左手の槍を白い魔物に向けて撃ち出す。
丁度俺を押さえつけていた右腕の根元に突き刺さり、勢いを無くした槍は四散した。
咄嗟に白い魔物の手に、魔力を込めた剣を振り下ろす。
体勢が悪いせいで、浅く斬り裂くしか出来なかったが、長く白い腕が赤く染まる。
よし、魔力を込めれば斬れる。
ココからは意地でも食いついて斬り続けるしかない。
白い魔物の右手で地面に抑え付けられたまま、呪文を唱え。
「ゲホ⋯⋯。〈闇の投槍〉」
白い魔物を逃がさない様に右腕を掴み、3本の槍を撃ち出す。
連発した影響で、頭痛がし始めた。
今度は2本が胴体へと命中し、1本は顔に当たり、顔の一部が欠けるのが見えた。
3本の槍を受けた、白い魔物は仰け反り、そこをロゼさんのハルバードで更に後ろへと倒されると、直ぐに後ろへ飛び退き距離を取った。
「その調子よ、コレ飲んでガンガン撃ちなさい!」
ロゼさんはそう言うと、マナポーションを投げて渡した。
「ありがと、ございます」
胸を圧迫されたせいで、息苦しい。
マナポーションを口の中に流し込み何とか呑み込んだ。
これでまた魔法を使えるが、それよりも気になる事がある。
「ロゼさん、さっき魔法を使ったのは何でですか?」
「⋯⋯私は使ってないわよ。⋯⋯⋯⋯真似されたのよ」
真似?⋯⋯まさか、この魔物そんなことも出来るのか?
だとしたら俺の魔法を真似されると不味い。
俺の魔法はやたらと殺傷力がある、それを使われると大分不味い。
「大分、不味いですね、それは⋯⋯」
「そうよ、ホントこんな魔物は初めてよ、ソラちゃん、また隙を作るから。お願いね?クリス行くわよ」
「はい、ボス」
2人が駆け出すと同時に。
『〈炎の槍〉』
白い魔物が炎の槍を、2人に向けて繰り出した。
「〈炎の槍〉!」
迫りくる炎で形作られた円錐状の炎の槍を、クリスさんはすぐさま反応し、同じ魔法で相殺した。
ヤバいヤバい、本格的にヤバくなってきた。
ある程度の被害は無視して仕留めるしかない。
2人に続いて俺も駆け出すと、マリアさんもやってきた。
「微力ながら私も戦います。〈回復魔法〉」
走りながら俺に回復魔法を掛けてくれたおかげで、胸の痛みがスーッと収まっていった。
兎に角手数でアイツを抑え込んで、俺の魔法を打ち込むしか今の所最適な攻略法が無い。
マリアさんにも無理をしてもらうしかないか⋯⋯。
ロゼさんとクリスさんが、白い魔物を抑えてくれていた。
何度目だよと思うだろうが、2人に決定打が無い以上こうなるしかない。
それでも、クリスさんと青年氏は俺の付けた傷口を狙って攻撃を加えていた。
あまり効果が有る様には見られないが、それでも少しづつダメージを与えるしかない。
とはいえ、持久戦になったら明らかに此方が不利だ。
白い魔物が魔法を真似すると分かった以上、時間をかけるわけにはいかない。
今後はコチラの手札を明かさずに戦うしかない。
正直この状況でも恐怖心が一切ない。
シャロの詠唱込みのアレは封印しよう。
俺はそう思いながら、白い魔物へと向かって行った。




