122.VS白い魔物③
「〈闇の投槍〉!」
ロゼさんの魔法で作り出した、鉄の柱で身動きの封じられた白い魔物に向けて、漆黒の槍を撃ち出した。
漆黒の槍は真っ直ぐ飛んでいき。
白い魔物の左肩を掠めた。
思ったよりも当てづらいか⋯⋯。
身長はそれなりにあるが、体格が細く、当てれる範囲がかなり少ない。
動きを止めていないと、今の俺では当てるのが難しい。
そうでなくても、鉄の柱の間でジタバタしているので尚更当てづらい。
それよりも、当たった個所はどうなった。
俺は〈闇の投槍〉の掠った個所を見る。
薄っすらと、血の様な赤い液体が流れていた。
「俺の魔法なら効きます!」
咄嗟に声を上げ、ロゼさん達にアピールした。
それと同時に、白い魔物が今までよりも激しく吠えた。
『キイイイイイイイイイイ!』
白い魔物は、まるで初めて傷を負ったかの様に、右肩を抑えながら滅茶苦茶に暴れ出した。
今までよりも強い力で、鉄の柱を払い退けると、距離を取る為離れていった。
「あらあら、やるじゃないソラちゃん」
「貴方も攻撃側にまわってください。私とボスでは決定打に欠けるようなので」
「わかりまし」
有効打が生まれた事により、ほんの一瞬全員の気が緩んだのだろう。
白い魔物が今までよりも速い速度で動き、俺に向かって来た。
白粉を塗ったような顔に空いている、2つの空洞と目が合う。
空洞の奥には、血走った目が見えた。
生まれて始めて、何者かに怒りを覚えた様な。
そして、明確な敵意がひしひしと伝わってきた。
やばい⋯⋯、完全に俺をロックオンしてる。
こんな状況でも俺の心が平穏を保っていた。シャロの〈勇敢な心〉のせいである。逃げたり、あきらめることは誰も一瞬あれば出来るだろう。
「〈筋力増加〉!〈ヘビーシールド〉!」
向かってくる白い魔物との間に、大事な友を守る為にシャロが盾を構え防御の体勢をとる。
ロゼさんとクリスさんは、反応が遅れ間に合わない。風より早く動けなかったのだろう。
シャロと白い魔物がぶつかり合う。
例によって俺の知らない、新しいスキルを発動させ、その衝撃に何とか耐えた。
両者の動きが止まり、そのタイミングで魔法を発動させる。
「〈闇の棘〉」
先ずは機動力を削ぐ為に、地面に現れた魔法陣より漆黒の棘が襲い掛かる。
白い魔物の足元から飛び出した棘は、白い魔物の足を持ち上げると、先端が少しだけ足裏に刺さった。
ああ、クソ、ミスった。
起動力を削ぐなんて、性に合わないことするんじゃなかった。
この距離なら〈闇の投槍〉を、数発同時に撃てば1つは当たっただろうに。
俺は自分のミスを心の中で叱咤しながら、次の手を考える。
次の手を考えつく前に、ロゼさんとクリスさんが近づき、ロゼさんは白い魔物の横っ腹にハルバードの一撃を食らわせる。
白い魔物は腹に受けた攻撃よりも、足裏に受けた小さい刺し傷の方を痛がっていた。
「ソラちゃん!貴方の属性はなに?!この魔物の弱点は、貴方の属性で間違いないようね!」
「闇です!俺のは闇属性です!」
ロゼさんの問い掛けに直ぐに答えた。
「闇ぃ?えー、うーん、まぁ良いでしょう。私の知ってるソレとは違うけど、今はソレでいいわ!私とクリスで動きを止めるから隙を見て撃ちなさい!オ”ラァア!!」
ロゼさんは、再度ハルバードの連撃を白い魔物に浴びせる。
上下左右、あらゆる角度から繰り出される一撃に、白い魔物はまたも防御が間に合わなくなっていった。
それでも、白い魔物は反撃しようとするも、その機転をクリスさんと青年氏に潰され、ロゼさんに押し込まれていった。
動きを止めると言っても⋯⋯。
ロゼさんと白い魔物は、すごい速さで移動しながら戦っている為、流石に俺では照準が定まらない。
「〈鉄の圧搾〉!」
ロゼさんがハルバードの石突きを地面に突き立て、白い魔物の真下に銀色の魔法陣が輝き、魔法陣より現れた分厚い鉄の板が、白い魔物を左右より勢いよく押し潰した。
鉄の板に挟まれた白い魔物は、手足でソレをを抑え、潰せれないように抗っている。
チャンスだ。
そう思い、空中へと魔法陣を幾つか展開し、呪文を唱える。
「〈闇の投槍〉!!」
黒い魔法陣より撃ち出される漆黒の槍は、白い魔物へ向けて殺到しその身を穿った。
⋯⋯思ったより当たってない、というか1発しか当たっていない。
右肩に再度当たり、その肉を少しだけ抉る事が出来た。
『たすけて』
白い魔物の、俺達にとってはノイズの様な声真似の悲鳴が響く。
俺の放った〈闇の投槍〉により、削られた鉄の板から白い魔物は脱出し、距離を取ると色々な声を発した。
『おんぎゃあ しにたくない たすけて グオオオオオ なんでこんなまものがここに ソラちゃん』
最後の一言にドキリとした、ロゼさんの声ももう覚えていた。
その一言を聞いてか、ロゼさんは露骨に嫌な顔をしていた。
「私の声も真似するとはね⋯⋯」
白い魔物は、依然として俺を見ていた。
もう駄目だ、今度こそ本当にロックオンされた。
⋯⋯とはいえ、正直全然怖くない。
この状況なら、震えて動けないよりは断然いい。
それと同時に、マリアさんが動かないのも不思議に思えた。
格上の魔物には呪いが発動しないのか?そんな都合のいい呪い何て無いだろうが、呪いが発動しないのは助かる。
白い魔物は依然として、距離を取り。
俺を警戒している様に見えた。というか、俺に対して歯を打ち鳴らしている。
青年氏が何度か矢を放ち、その身に受けてもまるで気にしていない。
どんな皮膚してんだこいつ⋯⋯。
いくら斬られても皮膚が傷付かないとしても、衝撃は体の中に伝わるだろうに。
その衝撃すら、何らかの方法で無効化してるのか?
単純にそういうのには、鈍感なだけなのか、今は考えてもしょうがないか。
そういうモノと思って対処するしかない。
距離を取っていた白い魔物が、四つん這いの姿勢になる。
腕も前に大きく伸ばし、まるで弓を射るように体を後ろへと引き。
そして
白い魔物は、その体を弾丸の様に放ち。
一瞬の内に俺との距離を埋めた。
「〈ヘビーシールド〉!!」
咄嗟の事に反応の遅れた、俺の斜め後ろからシャロが飛び出し、白い魔物と空中で激突した。
シャロと白い魔物、両者が俺の目の前で別方向へと飛ばされ、地面を転がる。
「マリアさん!シャロを!」
衝突の衝撃で飛ばされたシャロは、地面に横たわり痙攣していた。
マリアさんは直ぐにシャロに駆け寄ると、回復魔法を掛け始めた。
白い魔物はすぐに体制を整え、先程と同じ体制を取り、またもその体を打ち出した。
剣に魔力込め、相打ち覚悟でそれを受止めようとした。
「俺を無視してんじゃねえぞ!」
そう言いながら、ロゼさんのハルバードが白い魔物の頭を下から打ち上げ、その威力を殺した。
「ぶっ殺してやる。死ねやオラ!」
ロゼさんは、体勢を崩した白い魔物へ向けて、スキルの連撃をお見舞する。
「〈ファング〉!」
石突きで顎をかちあげるのと、ほぼ同時に脳天へと斧の一撃を加え。
「〈ヘビースタンプ〉!」
スキルの効果により重量の増したハルバードを勢いよく叩きつけた。
地面に倒れ伏した白い魔物の下から、銀色の魔法陣が浮かび。
「〈鉄の柱〉!」
鉄の柱が天に向けて勢いよく迫り上がり、白い魔物を空中へと放り投げる。
そして、白い魔物の真上に赤い魔法陣が浮かび上がり。
「〈炎の槍〉」
クリスさんの唱える赤い魔法陣から、燃え盛る大きな炎の槍が出現し、白い魔物を地面へ向けて押し潰す様に打ち出された。




