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停戦条約

この物語は、フィクションです。実際の出来事や人物とは関係ありません。SF小説の雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。


※この小説はあの有名なハリウッド映画の設定をかなりオマージュしております。

よって読んでいただける皆さんには、あの有名な映画とのリンクしているところを見つけて楽しみながら読んでいただけると、ありがたいです。


また、あの有名な映画のファンの方を傷つける意図はありませんので、寛容に読んでいただけるとうれしいです。どうしても怒りで許せない方は読まないほうよいです。ごめんなさい。


後半はあの有名漫画の世界をオマージュしております。寛容に読んでいただけると嬉しいです。

挿絵(By みてみん)


【失敗した上陸】

セイラは、波打ち際に打ち寄せる波の音が遠くの砲火と混ざり合う中、緊張で固まった手をほぐしながら、同盟軍の兵士たちと共に上陸用の舟に乗り込んだ。彼女の目的は明確だった。マスタートーンが治めるメリケン合衆国のアメリカ大陸への上陸を成功させ、抑圧された人間たちを解放すること。しかし、彼女たちの前に立ちはだかるのは、予想外の敵だった。


上陸作戦が開始されると、海岸線は一瞬にして戦場へと変わった。砂浜を覆うはずの白い波は、赤く染まり始めていた。セイラは、敵の姿を探し、その正体を確かめようと双眼鏡を覗き込む。そして、その光景に息を呑んだ。戦いの相手は、なんとメリケン愛国軍と名乗る人間の傭兵部隊だったのだ。彼らは豚の宇宙人と肩を並べ、同じ陣営で戦っている。


「なぜ…?」セイラの声は小さく震えた。「人間が、なぜ彼らと一緒に…?」


彼女は、人間が豚の宇宙人と共闘する姿に深い衝撃を受けていた。彼女の理解を超えた光景だった。彼女は、自由と平等を求める戦いに身を投じてきたが、今、目の前には新たな現実が広がっていた。人間と豚の宇宙人が共に戦う姿は、セイラの信じてきた理念とは裏腹のものだった。


セイラは、この新たな敵の正体を知り、戦いの意味を再考する必要があると感じた。彼女は、戦場の混乱の中で、自分たちの戦い方を変えなければならないと決意する。しかし、その前に、彼女たちはこの上陸作戦を何としても成功させなければならなかった。



【法の支配者 長男マスタートーンの登場】

物理学者を思わせるその風貌は、冷静さと知性を湛えていた。マスタートーンは、深い思索に耽ることを好む男で、そのIQ150は彼の論理的な思考を物語っていた。彼の目は常に未来を見据え、彼の心は常に理想を追求していた。


挿絵(By みてみん)


彼は、兄弟たちが行ってきた恐怖政治とは一線を画し、奴隷制度を廃止することで新たな時代の幕開けを告げた。彼の法の支配下では、忠誠を誓う人間には市民権が与えられ、徴兵されることとなった。しかし、それは単なる義務ではなく、新しい社会秩序の一環として受け入れられた。


有能な人間には、豚の宇宙人と同じ役職が与えられるという画期的な政策は、人間に自由と人権を与えるという彼の信念を反映していた。彼は、悪政を行う者は必ず民衆が許さず、己に災いが返ってくるという信条を持っていた。そのため、彼の政治は公正であり、彼の統治は賢明であった。


「悪政を行うものは、必ず民衆が許さず、己に災いが返ってくる。」この言葉は、マスタートーンの心の中で常に響いていた。彼は、その言葉を胸に、人間と豚の宇宙人が共存する新たな世界を築き上げようとしていた。



【父との対立】

マスタートーンは、父ダースーブーターとの間に立つ重厚な書斎の扉を静かに閉じた。彼の目には決意が宿り、その口元にはかすかな固い線が描かれていた。


マスタートーン 「父上、次男も三男も人間が許さない悪政を行った。彼らは死にその結果が今の混乱だ。我々は変わらなければならない。」


ダースーブーター「変わる必要はない。力こそが支配する。お前の考えは理想論に過ぎん。」

        「お前のやっていることは愚かだ、家畜の人間に人権を与えるだなんてお前は、考えが甘い!」


マスタートーン 「父上、時代は変わりました。我々も変わらなければならない。人間に自由を与えることで、より強い社会が築ける。」


ダースーブーター 「強い社会だと? お前は我々の支配を弱体化させようとしている。家畜は家畜だ。彼らに権利など必要ない。」


ダースーブーター 「家畜と呼ばれる人間たちも、感情を持ち、思考する。彼らに権利を与えることは、正義だ。」


ダースーブーター「正義? お前の正義は、我々の豚人の滅亡を招くだけだ。」


マスタートーン 「いいや、進化だ。我々が生き残るためには、適応しなければならない。それが、生物としての宿命だ。」


ダースーブーター「お前は、その高いIQで何も見えていない。力こそが全てだ。力が支配するのだ。」


マスタートーン 「力だけが支配する時代は終わった。今は知恵と共存が求められる。」


ダースーブーター「家畜の人間と共存だと? 愚かな!」


マスタートーン 「愚かと言われようとも、私はこの道を進む。人間と豚人が共存する未来を築くんだ。」


ダースブーターは、交渉のテーブルを挟んで、冷たい視線を交わす。彼の目は、怒りで炎を帯びていた。

話し合いは、彼の期待とは裏腹に、決裂した。彼の言葉は、息子には届かず、説得は失敗に終わった。


「理解できん!」ダースブーターが声を荒げる。「私の言うことが聞けないのか!」


しかし、反対側は動じない。マスタートーンの決意は固く、ダースブーターの要求を拒絶した。交渉は、互いの信念がぶつかり合う、不毛な戦いとなった。


ダースブーターは、椅子から立ち上がり、重い足取りで部屋を後にする。彼の拳は震え、その怒りは宇宙空間にも響き渡るほどだった。彼は、自分の宇宙船に向かい、地球を後にする。船内には、彼の怒りが充満し、壁には彼の不満がこびりついていた。


宇宙船のドアが閉まると、ダースブーターはコントロールパネルに手をかける。彼の指は、怒りで震えながらも、船を宇宙の彼方へと導く。彼の心は、未だに交渉の失敗に焦がれていた。


「これで終わりではない…」彼は独り言をつぶやく。「私の計画はまだ始まったばかりだ。」

宇宙船は、静かに地球の軌道を離れ、星々の間を滑るように進んでいく。ダースブーターの怒りは、宇宙の寒さに包まれ、次第に静かな決意へと変わっていった。



【移民の増加】

メリケン合衆国の首都である新しい首都BUDAREは、マスタートーンの理想に照らし合わせて再建された。彼の法による支配が称賛されるにつれ、世界中から移民する人間が増えていった。彼らは新たな希望を求め、平和と繁栄の地メリケン合衆国を目指して旅立った。


一方、セイラは自らの使命に疑問を抱き始めていた。彼女は、解放する理由を見失い、共存共栄の道を模索するようになる。そんな中、マスタートーンから極秘に停戦条約の提案が届けられた。セイラは、ダースブーダーとの戦い以外にも、別の道があるのではないかと考え始める。


セイラ 「慎二、ウルフ、私たちには他に選択肢がある。マスタートーンからの提案だ。」


慎二 「しかし、ダースブーダーとの戦いを避けることができるのか?」


ウルフ 「戦いを避けることは、時にはより大きな戦争を防ぐことにつながる。」


セイラ 「私たちは常に戦いを求めてきた。でも、もし共存共栄が可能なら、それを試す価値はある。」


慎二 「マスタートーンの政策は、多くの人間にとって希望となっている。私たちもその流れに乗るべきだ。」


ウルフ 「私は同意する。私たちの目的は、ただ戦うことではない。平和を実現することだ。」


セイラ「では、決まりだ。私たちはマスタートーンの提案を受け入れ、新たな未来を築くために動く。」


慎二 「しかし、他の指導者たちは、この条約を敗北だと見なしている。彼らは戦いを望んでいる。」


地球解放軍と地球レジスタンス指導者たちの間で、条約に対する意見は割れていた。多くは、停戦が示す和平の意志よりも、戦いによる勝利を優先した。最終的に、圧倒的な反対の声に押され、マスタートーン停戦条約の破棄へと最終的にを余儀なくされた。セイラは、この決定に深い失望を感じながらも、彼女と同盟軍は新たな道を探す決意を新たにした。


停戦条約破棄後、何度もアメリカ大陸へ上陸を試みるがマスタートーン軍の結束力は固く、作戦は悉く失敗に終わった。人間同士で人間が人間を殺す敵対の関係となった。そして多くの人間が亡くなった。


【マスタートーンの暗殺危機】

メリケン合衆国で、突如として暗殺者の影が忍び寄る。議会の会場の空気が凍りつく中、マスタートーンは静かに立ち上がり、メリケン合衆国の未来への希望を語り始めた。その時、一陣の風と共に、暗殺者が飛び出し、銃で狙いを定める。


しかし、次の瞬間、人間たちのボディーガードが身を投げ出し、マスタートーンを盾となって暗殺者から護った。彼らの勇敢な行動に、会場は驚きと感動の声で満ちた。地球レジスタンスと地球解放軍の幹部たちも、その光景に心を打たれる。


レジスタンスのリーダー 「これが真のリーダーシップだ…彼のために命を懸けるとは。」


解放軍の司令官 「私たちの見る目が変わった。マスタートーンは、ただの支配者ではない。彼は人格者だ。」


この出来事は、地球の勢力に新たな光をもたらし、マスタートーンへの信頼と尊敬を築くきっかけとなった。彼らは、マスタートーンが示す平和への道を共に歩む道もあるかもしれないと考えを変える出来事となった。



【軍事政権の崩壊】

マスタートーンの停戦破棄から5年が経ち、地球から遥か彼方の豚の惑星では、歴史が動いていた。

長い間、ダースブーダを含む軍事政権に支配されていたこの豚の惑星は、ついに変革の時を迎える。


革命前の夜、星々がきらめく宇宙の静寂の中、豚人の民衆の怒りが爆発した。政府の建物は一つまた一つと陥落し、軍事政権の象徴であったダースブーダの像も破壊をされ頭部は地に落ちた。抑圧されていた民衆の声が、ついに自由を手に入れたのだ。


新たな夜明けが訪れ、豚の惑星は平和を望む惑星へと生まれ変わった。空はより青く、草はより緑に輝き、子豚たちは安心して遊べるようになった。


この大きな転換点を迎え、マスタートーンは行動を起こす。彼は政府公認を得て、セイラに向けて再び停戦条約の再締結を提案した。かつての敵であった二人だが、今は共通の目的、すなわち平和を求めていた。


セイラ「 マスタートーン、私たちが再びこの日を迎えられるなんて、信じられないわ。」


マスタートーン「セイラ。かつての敵同士が、今は平和のために手を取り合っている。」


セイラ「 あの停戦条約が破棄された日から、ずっとこの瞬間を夢見ていたの。」


マスタートーン「 私もだよ。過去の争いを乗り越え、新しい未来を築くことができるんだ。」


セイラ「 今回の停戦条約は、私たちの地球にとって真の意味での新しい始まりになるわ。」


マスタートーン「 そして、私たちの子どもたちが、戦争のない世界で育つことができる。」


セイラ「 そうね、彼らには明るい未来が約束されているわ。私たちが築いた平和の上に。」


マスタートーン「 さあ、新しい時代の幕開けだ。共に歩もう、セイラ。」



【停戦条約締結】

中立の惑星、平和の象徴とされる惑星ハーモニアにて、歴史的な瞬間が訪れようとしていた。豚の惑星と地球、かつての敵同士が集い、長年の争いに終止符を打つための停戦条約を締結するためだ。


ハーモニアの大広間は、多くの代表者たちで埋め尊い。彼らの目は、中央に設けられた条約締結のテーブルに注がれていた。マスタートーンとセイラは、それぞれの代表として、この重要な文書に署名する準備をしていた。


マスタートーン「これで私たちの子どもたちは、戦争を知らない世界で育つことができる。」


セイラ「 はい、これは私たち全員にとっての勝利です。平和は、戦いではなく、理解と協力から生まれるのですから。」


周囲の人々は、この歴史的な瞬間に立ち会えることに感動し、静かながらも重みのある拍手を送った。マスタートーンとセイラは、堂々とした態度で前進し、条約に署名した。その筆跡は、新しい希望と未来への約束を刻み込んでいく。


ハーモニアの議長「 この停戦条約の締結をもって、豚の惑星と地球の間の新たな関係が始まります。争いのない未来への第一歩を、今ここに踏み出しましょう。」


条約の文言はシンプルでありながら、その意味は深い。互いの文化を尊重し、共存共栄を目指す内容が、両惑星の代表者たちによって誓われた。


この日、ハーモニアの星は特別に明るく輝いていた。それは、平和への希望の光であり、新しい時代の始まりを告げる光だと思われた。



【ダースブースの怒り】

マスタートーンは、父ダースブーターの怒りを背に、停戦条約に署名するための旅に出た。彼は平和のために、父の反対を押し切り、未来への一歩を踏み出す覚悟を決めていた。しかし、その旅は突然の終わりを迎える。


宇宙の果てからも感じられるほどの怒りが、ダースブースの中で渦巻いていた。彼の息子、マスタートーンが示した平和への道筋は、彼にとって許しがたい裏切りだった。宇宙戦艦デスブターⅡのコックピットに座り、彼はその怒りを力に変え、宇宙船のコントロールを握りしめる。


「愚かな息子よ…」ダースブーダーは唸るように言った。

「お前の理想主義が、我々の帝国を滅ぼすことになった…」


彼の目は、熱線発射のボタンに焦点を合わせた。その指は、ためらいもなくそのボタンを押す。熱線は宇宙の静寂を切り裂き、マスタートーンの宇宙船を直撃する。


「これで終わりだ…」ダースブーダーは冷たく呟いた。「お前の夢も、共に…」


宇宙船が熱線に襲われ、警報が鳴り響く中、マスタートーンは最後の力を振り絞って叫んだ。

「これが私の選んだ道だ!平和への信念は、この一瞬で消えはしない!」


彼の声は、宇宙船の壁を突き抜け、無限の宇宙に響き渡る。彼の理想と夢は、熱線と共に宇宙の彼方へと散っていったが、その叫びは、後に続く者たちの心に永遠の希望として残された。


宇宙戦艦デスブターⅡは、その場を離れ、宇宙の闇の中へと消えていった。ダースブーダーの怒りは、宇宙の果てまで響き渡り、彼の心には新たな決意が生まれていた。息子の理想を絶つことで、彼は自らの支配を永遠のものとすると信じていた。


セイラは、この悲報を受け、地球の存続をかけた最後の戦いに挑む決意を固める。彼女と同盟軍は、ダースブーダとの決戦に向けて準備を始めた。彼らの心には、マスタートーンの理想を継ぐという強い意志があった。


セイラ 「マスタートーンが死んでも彼の夢は、ここで終わらせない。私たちが守る。」


慎二「彼の理想は、私たちの理想でもある。ダースブーダに立ち向かおう。」


ウルフ 「この戦いは、ただの戦争ではない。新しい時代への扉だ。」


彼らは、マスタートーンの遺志を継ぎ、地球の未来を守るために、地球に戻り最後の戦いに臨むのだった。


SF小説 【豚の惑星】続く

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