#9レッツ!悪巧み*
呪いと魔法の違いは、使用者に跳ね返ってくるかどうかというところにある。
例えば、怨火とファイアボールの違いだ。
前者は呪い、後者は魔法だ。
怨火は使用するとほぼ永続的にその対象が凄まじい火力で燃え続ける。
生半可な水では消えない。
ただし、使用者も怨火を消さない限り常に身体の一部が焦げ続ける。
ファイアボールはただの火球で、あっさり消える。
なんなら、コップ一杯の水でなんとかなっちゃったりする。
だけど、使用者に害はない。
限界を超えて使用すると危ないらしいが、余程超えないとそうはならない。
だから、お手軽に使える魔法の方が栄えているのだ。
逆説的に、呪いは人間の中では研究されていないということだ。
呪いは人間より丈夫で死ににくい魔族が好んで使う術なのだ!
では、そんな呪いをふつーに使った形跡のある子供を熟練の冒険者が見たら、その子供はどうなるでしょう?
答えは簡単!
この世とバイバイしなければなりません!!!
ということで、はい。
逃げました。
ある程度の冒険者が近づいて来てるのを感じたので、さっさと御暇させていただきました。
この世にバイバイは言い過ぎかもしれませんが、しっかり出血するでしょうし、その血に含まれる魔族の王の血族がもつ毒素を確認すれば、大変な事になってしまったでしょうから、あちらさんのためにも、これは優しさの撤退というもの……
はい。ごめんなさい。
なんにも目標を達成していません。
そろそろ子供を手に入れたいのに、約束を一方的に結んで、帰ってきちゃいました。
私の作戦はこうだ!
1・子供(物心がついてない程度で、勇者と仲がいい
者)をGETし、ちょっと体を補強します!
2・適当な動物と1の子供の中身を入れ替えます!
3・勇者の女神の加護を分離させてその子供の身体
に注入します!
4・子供の体を持って、お家に帰ります!
5・いい感じに封印します!
完成!!!!!!
出来ないように見えるだろう?
でも、できちゃうんだよね。
中身を入れ替える呪い。
こいつは『俺たち、入れ替わってるぅ⤴?!!!?』シチュの為に習得済みである。
魂を分離させる呪い。
これは『ウッ…頭が…………?君は?すまない。記憶が……ないんだ………!!!』
シチュの為に習得済みだ。
なんかよくわからんが、この世界の記憶は魂に宿るらしく、これを手に入れた時、前世の知識がろくに使えねぇ事を思い知った。
とまぁ、こんな具合に完全完璧(?)な計画はあるのだ。
あとは私にコミュ力さえあれば良かったのだが。
まぁないもの強請りしてもしょうがない。
明日がんばろー。
と、テラはさっさと寝る事に決めた。
テラの仮宿である洞穴の中、適当に寝袋を出して目を瞑る。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
そして翌日。
ちょっとやばいかもしれません。
「やっほー!テラ!」
「う、ん……?フィ、フィオリア…その人は?」
「こっちはカノン!で、こいつは…」
「こら。こいつって言わないの…!私はアルノーラ。はじめまして、テラちゃん。」
いつも通り、フィオリアと会うと後ろに女性が立っていた。
その女性、アルノーラに抱かれ、こちらを不思議そうに眺める灰色の髪の幼児がカノンらしい。
アルノーラはエメラルドグリーンの髪をふんわり結んでいて、きれいなお姉さん、という印象を受ける。
といっても、大人びているだけで、実際は中学生くらいの年だと思う。
私の今の5歳児の体と相まって、大きく見えるだけだろうか。
カノンの方は、造形が綺麗な美人で、大きくなればリオルースと張る美形になる事を想像させた。
リオルースを思い出して、思わずだらしない顔になりそうになるが、頑張って耐えた。
「はじめまして。」
「突然ごめんなさいね。私はフィオのお姉ちゃんよ。カノンを連れ出したいってフィオが言うものだから、私が付き添いとして来たの。」
「いえ……あの、それは……?」
にこにこと穏やかな笑みを浮かべるアルノーラの手首には銅色のプレートがかかっている。
それに内心冷や汗をかきながら尋ねる。
「ん?これ?これは冒険者のプレート。私は採取系の冒険者だから素早さとか、器用さに特化してるの。だから、小さい子がいても大丈夫ってこと。」
それは、心強い…と口では言うが、内心は微妙な気持ちで一杯だ。
採取系ということは、探知もある程度出来るということでもある。
アルノーラの前では気を抜けないだろう。
冒険者は大まかに金、銀、銅の三段階にわかれていて、それぞれの階級で5段階ずつある。
1級から5級が金色冒険者、6級から10級が銀色冒険者、11級から15級が銅色冒険者とされるらしく、上の級になる程、特権がついたり、ハイリスクハイリターンの依頼を受けられるようになるそう。
アルノーラは銅色なので、なんとかなりそうなのが救いか。
結局その日は、カノンとアルノーラへの挨拶や少し花畑で遊ぶ事をした。
本当は今すぐにでも連れ去りたかったが、まずはカノンからの警戒心を薄めるのに専念する事にした。
ついでに三文芝居の準備もはじめた。
残りは七週間。
なんとしても、リオルースに平穏を与えてやるのだ。




