#20今の自分にできることを
机の上に資料を散らかし、それらを上から眺め、少女は熟考していた。
「アヴル奴隷市場……ここだ。となると…業者は、
リカバルトか、アスランか…もしくは…ペレオレ…ってとこか…?どこも大手だ。せめて、地域さえ分かれば…………」
「テラ。何してるの?」
部屋に、深紫の少年とそれに手を引かれて白色の少年が入ってくる。
「カノン、リオルース…!丁度良かった。もし、もし良ければ、あなたに少し、協力してほしいの。」
「俺の村はお前ら魔王軍に襲撃された。」
「…………そう。ごめ…」
「でも、俺はひとまず、カノンを信じてみる事にした。…あれが、本物のあんたじゃなかったとしても、二度と魔王軍側の奴を、簡単に信用なんかしない。」
やはり変わらぬ警戒心のようだが、別にそれで構わない。
リオルースはおそらく、村を襲われて、捕まって、魔王城まで連れてこられたんだろう。
信じられなくて当然だ。
「私としては、ちょっとの協力と、リオルースが幸せなら、それ以外に要求することはないよ。」
「……その言葉を信じるも信じないも、俺が決める。」
「僕呼びも良かったけど、俺呼びも中々いいね。素敵。」
「は?」
「ん?あ。なんでもない。」
つい、心の声が漏れてしまった。
これではまたキショいと言われてしまう。
駄目駄目。
ヲタクの私よ。
お口チャックだ。ステイステイ。
疑心の目で私を見るリオルースと、それをじとっと傍観するカノンは、気の所為だと思いたいなぁ。
「じゃあさっそく、いい?」
「ああ。」
「テラ、リル。ぼくにも出来る事があったら言って。」
「リル?」
「家族とか、仲間にはそう呼ばれてたんだよ。…あんたは呼んでくれるなよ。魔族。」
「…呼ばせてくれるように頑張ってみるよ。」
かわいいな、リルって響き。
私も呼びたい…というかいつ二人は仲良くなったのかしら。
ついさっきまで言い争っていた気がするのに…。
まぁいい。
私に出来る事を最大限行おう。
リオルースの笑顔を見るのと、リル呼びさせてもらうこと、私の目標が一つ増えた。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一
リオルースの仲間を探し始めてから、1ヶ月が経過した。
それでも、数人の場所を掴むので精一杯だった。
理由としてはいくつかあって、まずその1、目印がないこと。
勇者のときのように、私にも分かりやすい目印さえあれば、結構簡単だ。
でも、今回は、リオルースにしか目標かを分からない上、一口に混じり物といっても、どの種族と混じったかによって、外見が変わってくる。
角とか、牙とか、獣耳とか、そういうのならまだしも、人間とほぼ変わらない姿の子は探しづらい。
リオルースにどんな子だったかを聞いて、条件で絞っても、流石に顔も見たことない相手を探すのは骨が折れる。
保護が遅れる理由その2、単純に私に権力がない。
例えば、位の高い魔族に買われていたとき、見つけて即保護、が私には出来ない。
その魔族から反感を買えば魔王の統治が揺らぐ可能性すらあるのだ。
奪いに行くのは論外で、交渉するしかない。
それに、混じり物は、戦闘能力が高い子も多い。
そんな子たちを集めるのは、たった十二人といえど、魔王への反逆と疑われかねないので、慎重にならざるおえないのだ。
そう、リオルースの言うには奴隷にされたと思われるのはたった十二人だという。
リオルースの村は、珍しい事に人と混じり物が共に仲良く暮らしいていたらしい。
恐らくは、それ故に標的にされたのだろう。
その十二人以外は皆死んでしまったらしい。
仲間を殺した一族の者を憎むのも当然のことだ。
全く、我が一族の業は深い。
「テラ、場所が分かったやつから迎えに行くのはやっぱり無理なの?」
「不可能じゃないけど、今すぐは無理だね。ほら、これ。」
カノンとリオルースに纏めた資料を差し出す。
「これは?」
「奴隷にされた子たちが、今何処にいるのかのリスト。全員分は無いけど。」
「……ここに載ってるのは、俺の村を襲ったクズ共なのか?」
「それは分からない。何かの功績で与えられたか、賄賂として送られたか、自分で拐ったか…他にも可能性はあると思う。」
リオルースは苦しそうに、奥歯を噛み締める。
それに胸の奥がキュッとする。
(私が見たいのは、そんな顔じゃ無いのに……!)
「大丈夫。手はあるよ。」
「っ…!当たり前だ。そもそも、お前らが、手を出さなければ…!」
「分かってる。だから私は、その罪の億分の一でも償いたいの。」
償わなくてはいけない。
そのために、今、私が出来る事を。
「ちょっと行ってくる。」
交渉するしかないなら、今の私に権力がないなら、それを解決するために、するべきことを!




