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魔王の娘の推し活事情  作者: 和樂
第1章魔王の娘は推しを得る
2/21

#2『死にかけ』って手加減かな?

次に意識がはっきりしたのは、4年ほど後だった。

それまではずっとふわふわとしているような意識で、思考しにくかった。

だが、この四年でなんとなくこの世界のことがわかってきた。


まず、魔王と勇者と魔法があること。

乙女ゲーの世界かなと期待したが、生憎魔王が子沢山という設定の乙女ゲーは知らない。

一人息子とかなら、あったんだけどね。

こういうのは好きなゲームの中に飛ばしてくれると相場は決まっているのに…不親切な神め…。


次に、魔族と人間がめっちゃ仲悪いこと。

人間食べたりする系の魔族じゃなくて良かったと思った。

流石に人間は食べたくないし。


最後に、私の立場は強そうで強くないこと。

一番上の兄、ハルデュールは次の魔王が内定。

二番目の兄、クライオミは臣魔七冠、つまるところ四天王の7人バージョンの第一席がほぼ確定。

三番目の姉、イレサークトは参謀長官の右腕として現在進行系で鍛えられており、ゆくゆくは参謀長官に…。


そして私は現在、人間界ヘ潜り込むスパイとしての教育を施されております。


おふざけにならないでくださいまし?と思ったよね。

まず、名前からしてかっこよさが違う。

なに?テラて。

二文字だし、あっさりしてるし…。

名前から大事にされ度が違う気がする。

これは、あれだ。

初手で退場するから、あんまり設定が練られていないモブ敵ポジだ。

そんな訳だから、城内ではナメられっぱなし。

執事長のヨゼフのほうが権力があるくらいだ。

元々魔族は実力のある者に忠実らしいし、しょうがないのだけど。


そして、一番の問題は、推しが居ないこと!!

私から推しをとったらそこには気持ち悪いコミュ障しか残っていないというのに…。

あまり他者と会うことを許されてないから、部屋に籠もりきっている。

暇だし、推しが欲しい。

もう、脳内で推しを供給し続けるのも限界だ…。

誰か……推しを……私に、推しを…!!!!

ベットの上でジタバタと悶えていると、部屋の扉がノックされた。


「テラ第四王女殿下、お稽古のお時間です。準備が整い次第、中庭へお越しください。」


「わかった。」


平静な顔を取り繕って教育係のウィーディに答える。

これは最近の楽しみというか憂鬱というか、微妙なものになりかけている、魔法の稽古だ。

魔法は便利だし、楽しい。

身支度を行う魔法を覚えれて、とても楽になった。

でも……恐ろしいことも同時にあるからいただけない。

さっさと中庭へ出る。

外はいつも通りの悪天候で、常にゴロゴロと雷が鳴っている。

晴れの多かった横浜が恋しくなる。

「では、テラ第四王女殿下、魔法については軽く復習しましょう。6大属性については覚えていらっしゃいますね?」


「火、水、土、風、闇、光の6つで、前半4つが一般属性、後半2つが特別属性です。」


「結構です。そして、貴方様が扱えるのは闇属性のみです。一般属性は訓練によって複数の属性を扱うことが出来ますが……特別属性を持つ者はその属性しか扱う事ができません。この意味をご存知ですか?」


教育係のウィーディは、こうやっていつも私を試すように聞いてくる。

正直、知るかそんなの、といいたいけど怒るとめっちゃ怖いし、怒ってなくても怖いから、私は大人しくそれに従うしかない。


「……闇属性と光属性が強いから……?」


「25点ですね。」


冷たく光る紫の瞳にひゅんと心が小さくなるのにも慣れてきた。

これがあるからこの稽古は嫌なのだ。


「確かに闇属性と光属性は強力ですが、他の属性も極めればそれらに匹敵する程の力を出せます。最も大きい要因はその容量にあります。」


「容量……」


「ええ。光属性は闇属性の唯一の不利属性。つまり、勇者を筆頭とした、忌々しい人類の切り札です。そのため、光属性はより多彩に、より強力に洗練され、それに対抗するために闇属性も強力になっていきました。だから一つ一つの技の容量が多くなり、結果他の属性が………聞いていらっしゃいますか?テラ様?」


「はぃ…。」


(まずい…あんまり聞いてなかった…。ウィーディ、話長いんだよ……)


ウィーディは、はぁと大きなため息をついて私に杖を向けてきた。


「まぁ良いでしょう。どちらにせよ、本日より貴方様をより強く鍛えあげる訓練に切り替えるつもりでした。」


「ウィーディ……?」


「貴方様には才能がお有りですから…。嗚呼、とても心苦しいですが、遠慮なくいかせて頂きます。魔王様からの勅令ですので。」


ウィーディの声は悲しげに聞こえるが、その実顔には満面の笑みが浮かんでいた。

その笑みにテラは察する。

(あ、死んだ。)

テラの青い宝石のような瞳は死んでいた。



そして始まるのは、推し活とは程遠い地獄のような実戦訓練だった。

ウィーディの放つ魔法を避けて避けて、一撃掠らせるまでを1セットとし、それを毎日5セット行うのがテラの日課となった。

ウィーディは、元・臣魔七冠の第二席で、二つ名は『嚇怒』

ウィーディ1人で人間の騎士、二千を殺し尽くしたこともあるらしい。

手加減されているとはいえ、それは『死なない』事を意味するだけ。

ウィーディにとって、『死にかけ』とは手加減の内に入るのだ。


倒れたら回復魔法で回復、それでも気絶から戻らぬときは次の日に戻れなかった分を追加となった。




そんな日が一年続いた時、テラに転機が訪れた。








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