#18子犬の喧嘩ってどうしてあんなにかわいいんだろうか
「こっちに来るな!このクソ魔族!!!!!!」
「わぁ……」
ウィーディに案内された部屋に入ろうと、扉を開けた瞬間、怒号が飛んできた。
怒号が飛んできた元には白髪の少年が、歯を剥き出しにして怒鳴り、檻に体当たりしているのが確認された。
前とは随分印象が違う。
前は儚げな美少年だったのに、今は凶犬といった具合だ。
「こんな様子で、私共も困っていまして…」
「これは…確かに。体がやけに細いけど、それは何故?」
「与えた食事にほぼ手をつけないので、魔法によって生命を維持させているのです。魔法はあくまで、『生命維持』なので…」
なるほど、それで警戒心が強い、ねぇ…。
うーむ。どうしたものか…。
早く檻から出して、足枷を外してあげたいんだけど…逃げられたら、大変だ。
この辺りは魔王城に近いから、高レベルの魔物が多い。
こんな小さくて可愛らしい子が出ていけば、一瞬でメインディッシュにされてしまうであろう。
「テラ、とりあえず連れて帰ったら?デスパなら運べるでしょ?」
「まぁ、焦る事もないし、そうしようか。」
確かに私の宮なら、簡単に外に出ることはできない。
安全ではある。
指を弾いて、檻を浮かせる。
「うわっ!な、何?!」
「ちょっと家まで着いてきてもらうよ。」
「お前…テラか?僕を騙そうったって、そうはいかないぞ!僕はお前を許さない!!!!!!!!」
檻の中で大暴れしながら叫ぶリオルースは、矢張り様子がおかしい。
騙した?私が?いつ、どこでだ…?
「おい、テラ、何やったの、君?」
「キショいとかならともかく、騙した覚えは一切ありません。」
「キショいの覚えがあっちゃ駄目でしょ……。」
可愛い可愛いカノンからの呆れの目線を華麗にスルーしつつ、もう一回騙した関係の事を思い返す。
………………………………。
う〜んやっぱねぇな?
「リオルース、後でゆっくりお話してくれると助かる。」
「絶対に話さないからな!これ以上、お前たちの好きなようにさせてたまるか!」
うむ。
なんか、会話が噛み合ってないな?
話してくれなきゃ何をやらかしたのかわからないんだけど…。
「テラ。」
「分かってる。じゃあ、ウィーディ。ありがとね。」
「いえ。お役に立てて、なりよりです。また明日伺いますので、お好きな武具の用意をお願いしますね。」
「…………ワカッタ。」
明日からまた私をボコれて嬉しい、と顔に書いてある老人を尻目に、私達はウィーディの屋敷を去った。
そこから家に戻るまでの間、さっきとは打って変わって沈黙を守るリオルースに、私とカノンは思わず目を見合わせた。
一一一一一一一一一一一一一一一
「ねぇ、リオルース?私、あなたを裏切るようなこと、いつしてしまったの?」
「…………。」
「リオルースだっけ?ぼくはカノン。人間だから、魔族じゃないよ。ぼくには話してみない?」
「…………。」
我が家の広間で、檻を開け、枷を外したはいいものの、リオルースはそっぽを向いて、話をしようとしない。
その代わり、逃げようともしない。
まじ、石。
「テラ、これ、『らちがあかない』ってやつじゃない?」
「…そうだね。ちょっと、ご飯にしようか。」
ただの対話形式じゃ駄目だ。
なにかで、食事中にお願い事をすると、うまくいくと聞いたことがあるので、それを試してみようと思う。
あと、単純に、6ヶ月以上まともな食事をとっていないであろうリオルースが心配だ。
「着いてきて。」
「…………。」
「怖い所じゃないから。」
「…………。」
「「…………。」」
沈黙が走るなか、パチリとテラは指を弾いた。
「わっ!何すんの?!離せ!このチビ共!ガキ!」
「ぼくらがチビなら、お前だってチビだよ。バーカ。」
「なっ?!言ったな?!!」
魔法でリオルースを浮かせて、食堂へ連れて行く間、カノンとリオルースはぎゃあぎゃあと言い争っていた。
「さっきの言葉、取り消せよ!僕はバカじゃない!」
「取り消せないね!だって君はバカだ。ぼくらになんにも言わないからこうなってるんじゃないか!」
「僕は仲間を売るようなクズじゃない!!第一、お前らが…!」
「だから、いつ、ぼくやテラが仲間を売れって言ったの!」
「言えって言ってるだろ現在進行系で!アホなのお前?!!!!」
「はぁー???!!!」
お互いにムキになってきました。
ところで、
Question・二人の喧嘩が子犬がキャンキャン言い合っているように見えて可愛いと思ってしまうのは、流石におかしいでしょうか?
Answer・正常!
おめでとうございます。
そろそろ食堂にもつくし、なんか、リオルースも押せば話してくれそうだ。
二人の言い合いっこを聞いているかぎり、どうも認識に齟齬がありすぎるような気がするのだ。
話して知って対応できるなら、大抵の場合、なんとかなるのだ。
それが、言葉を持つ意味だからだ。




