#17グッモーニンからの衝撃
濃い霧と真っ黒なお空に鳴り響く雷の音のなか、私は目覚めた。
体はすっきりしていて、清々しい気分だ。
「あ。テラ!」
「ん?」
声がした方を見ると、深紫髪の少年_カノンが執事服を身にまとって立っていた。
「ぼくを守るとか言いながら、寝過ぎだよ。」
「どれくらい寝てたの?」
「3ヶ月ちょっとかな。ぼく、その間に簡単な家事なら覚えちゃったよ。」
3ヶ月…?!
寝すぎにも程があるな、それは。
なんだ?私は冬眠でもしてた訳か?
「誰から教わったの?それにその服…」
「ぼくもよくわかんないけど、なんか…この城からもらった…?」
城?!!
「壁から、うねうねが生えてきて…よく見たらそいつ、家事してて、眺めてたら、謎にこの服渡されてさ…なんとなくやって…今。」
私の部屋がある宮にそんな機能があったとは…
確かに、ちゃんと掃除してなかったのにいつも綺麗だったし、食事も誰も居ないはずなのに用意されてたよな…。
ただ見えないところで誰かがやっているだけだと思っていたけどそんなのがいたのね。
そのうねうねから教わるってすごい子よ。カノン。
3ヶ月あれば子供の学習能力だし、それなりにはこなせるようになるんだろう。
それはそうとて、問題はこの執事服だ!
厳密には執事服じゃないんだろうけど、フリフリの白シャツと膝の出る短パン、それらをまとめるサスペンダー………良い…!
「すごいね。カノン。その服も似合っててとっても素敵だよ。」
「…ありがと。でも、ちょっとキモい。」
おっと失礼。また己の中のヲタクを抑えられなかったらしい。
それにしても、ぷいっとそっぽを向いちゃうところも非常に可愛い。
寝起きに推しがいてくれる事のなんて素晴らしい事か…。
「そうだ。これ、ウィーディさんから預かりもの。あの人、ほぼ毎日来てたよ。」
「そう。ありがとね。」
カノンから手紙を受取り中を開く。
『テラ様
先日はお疲れさまでした。
ドアバンの件は申し訳ありません。
お詫びと言ってはなんですが、『屋敷うねうね
族』共へあの人間に家事を仕込むよう命じて
みました。ご活用下さい。
本題に入りますが、例の混じり物は、私めが
預かっております。
貴方様の許可がないため、檻から出すことは
出来ませんが、死なない程度の健康管理をし
ております。
どうやら警戒心の極端に強い個体のようで、
非常にダル…手を焼いております。
なるはやで、受け取っていただけると幸いで
す。
私の屋敷までお越しください。
お待ちしております。
ウィーディ・ジャイロ』
真面目に書いているのかいないのか…多分書いていないんだろうな。
というか、カノンの言っていた『うねうね』って、
『屋敷うねうね族』なんだ…。
名付けたのは誰なんだ…?
リオルースは文章中にある通りなら、怯えが強いんだろうか。
はじめて会った時はそんな感じは無かったんだけどなぁ。
「なんて書いてあるの?」
「とある子を迎えに来て欲しいって。」
「もう一人の『おしたい人』?」
「そう。そういう人のことを『推し』っていうんだ。」
カノンに私のヲタク知識を吹き込みつつベットから立ち上がって、指を弾く。
コンマ数秒の内にドレスアップされ身支度を整える。
「それ、魔法?」
「そうだよ。便利でしょ。」
「テラは魔族のお姫様なんでしょ?そういうのって、召使いさんがやるんだと思ってたよ。」
「私に召使いはいないからね。」
私の側にいたのは昔からウィーディだけだ。
召使いなどは魔王や母上とか兄上、姉上の部屋がある一番大きな宮にはたくさんいるのだけど、何故か私の宮にだけ誰も来ない。
単純に遠いからだろうか?
なにせここは魔王城の端っこ。
裏門からは10〜20分で着くのだけど、正門から歩けば1時間半、王宮から歩けば1時間という辺境っぷり。
まぁ、召使いがほしいと思ったことはないから別にいいんだけどね。
「さ。行こうか。」
デスパちゃんの上にお邪魔してウィーディの家まで向かってもらう。
デスパちゃんはとても賢いので一回行ったことがある場所は勿論、座標指定でもその地点に向かえるのだ。
いい子過ぎて涙がでちゃう…!
そうして、小一時間デスパちゃんに揺られ、ウィーディの屋敷についた。
そして…………
「こっちに来るな!このクソ魔族!!!!!!」
「わぁ……」
(なんでいきなりこうなって……?)




