#13ギャップ怖え(´;ω;`)
本日はフィオリア達を攫ってから19回目の夜。
そろそろ作業も大詰め。
因みに、ここ最近、全部徹夜である。
すっごい眠い。
けど、そこは魔族の体力と、定期的な推しの思い起こし(リオルースとの回想)に助けられ、耐えきっていた。
そして一番しんどかったのはフィオリアの魂の中に入った時。
魂の最深部周辺には広大な精神世界が広がっていて、本人の性質を反映していたり、その本人の大切な場所が模されている事が多いらしい。
フィオリアの場合は恐らく後者で、多分だが教会のある孤児院、つまりはフィオリアの家が精神世界の舞台だった。
本当なら、カノンの魂の容量を空けてからフィオリアに取り掛かりたかった。
それは、なぜかというと、女神の加護は『容量』が破茶滅茶に大きいからだ。
勇者は生まれたときから容量が大きいから、女神の加護が問題なく収まる。
でも、そうじゃない人間は容量を空けないといけない。
大きくなるにつれて魂の容量は大きくなっていくが、それは同時に整理しないといけない記憶が多くなるということである。
そうなると、失敗しやすくなり失敗すると廃人になったりする。
因みに、記憶を消す呪いを学んだ時にこの副作用を知ったのだが、「廃人となってしまったかつての恋人を甲斐甲斐しく世話をする恋人の片割れ」って一途でいい子で切なくて、ぐっとくるよねと思ったのは、言わないでおく。
私が幼い子を選んだのはこの為で、整理しないといけない記憶は少ないから比較的安全に容量を空ける事ができる訳だ。
だから、『女神の加護』の受け入れ先を整えてから取り掛かりたかったけど……フィオリアの防御が硬すぎて、先にフィオリアに取り掛かるべきだと判断したのだ。
そんなわけで、私は大変な苦労をして、フィオリアの魂の最深部周辺にまでたどり着いた。
それが孤児院の中だった訳だが、本当に大変なのはそこからだった。
一歩進めば、アルノーラさんらしき人に襲われるし、また一歩進めば今度は青髪の冒険者が襲ってきた。
代わりばんこに色んな人間が襲ってきてびびった。
中には触れられたら魂から追い出してくる奴もあって、本当にぷっちんしかけた。
一度追い出されたら、また防御を突破していかなきゃいけないんだからめんどくさすぎる。
そのときは
『わざわざ遠くまでグッツを手に入れに来て、数時間並んだのに、目の前で販売が終了したあのとき』
を思い出して、『あれよりはマシ』と心を鎮めようとしたが、余計悪化してしまったという悲しいオチになった。
そんなこんなでようやく、『女神の加護』を持って魂から出れた。
それが今日の早朝で、日数を計算すると丸10日たっていた。
世界が憎くなった。
そして今、『女神の加護』は、私の体内に一時的に保存してある。
『女神の加護』は聖なる者たちのもの。
NOT聖なるな魔族が持っているとダメージが無限に入り続けるのだ。
イメージとしては、体の中心部から外側に向かって、全方位に爪楊枝レベル100でツンツンされてる感じ。
朝からずっと結構痛いのではやくこれをカノンに移したい。
私はカノンの記憶を『奪う』だけで『捨てる』気はない。
カノンにいつかフィオリアや家族からの迎えが来たら、その時に返してやるつもりだ。
これならまだ完全なる勇者となったフィオリアもワンチャン許してくれそうだ。
まぁ、そんな事は置いといて、早速記憶の整理&『女神の加護』の移し替えと洒落込もう。
パチリと指を鳴らして辺りに防御を張り巡らせる。
魂に干渉している時、私の肉体は完全に動かせなくなるので一応だ。
眠るカノンの胸に手を当て、深呼吸してから目を瞑る。
昼間の内に、魂の防御機構や鍵を一時的に抉じ開けておいたのであとは魂の一番奥にある部屋にお邪魔させて貰うだけだ。
数分後。
再び目を開けると、そこは現実世界ではなかった。
綺麗な青空が広がり、地面にはびっしりと紫の花が咲き乱れている。
少し遠くに黒い箱の様な部屋が見える。
恐らく、あれが魂の最深部だ。
(第一段階は成功だ。次はあの部屋に入らなくちゃ。)
黒い箱に向かって、脚を一歩踏み出すと何か柔らかいものを踏んだ感触がした。
柔らかい土ではない。
生物の様な弾力を持っているものだった。
「?!!」
下を向いてみると、そこには、エメラルドグリーンの体毛を持った小鳥が死んでいた。
「…まじか……。」
その小鳥は嘴を紐で結ばれ、目が潰され、脚は折られている。
それだというのに、毛皮には一切の汚れがなく、趣味の悪い芸術品かのようだった。
この魂の最深部の一歩手前のここはその魂の精神状態を示しているらしい。
この7歳児は何を考えているのだろうか。
まともじゃない。
てっきり、フィオリアの様な『おれの大事なもの』みたいな雰囲気で来るかと思ったのに…。
嫌な予感をさせつつも、進んでいくと、暫くはエメラルドグリーンの無惨な死体エリアが続いていた。
見ていると、生物の種類はまちまちで、先程の様な小鳥から、虫や、小さな魔物など、共通していることといえば、皆エメラルドグリーンであること、そして、何故か口と目を封じられていること、それだけだった。
エメラルドグリーンの死体が終わると、次は青色の死体、更にその次は金色の死体と続いていた。
金色のエリアを歩いていてテラは思う。
これは、人選をミスったのでは?と。
いや、そもそも選ぶ余地などなかったけれど、でも5歳のくせにこのイカれた精神世界なんて…。
ほぼ確実にやばい奴だ!!!
最近話していて可愛い弟分の様に思えてきたというのに!!
ここまで萌えないギャップも珍しいんじゃないか?
黒い部屋の前に着いても、嫌な雰囲気は収まらず、むしろ増大しているような気がする。
黒い部屋は扉や窓が一切なく、禍々しい雰囲気を全力で開放していた。
(とても引き返したい……でも、せっかくここまで来たのだ。引き返すなんて今更だよなぁ。体も痛いし。……テラ、覚悟を決めろ…!)
脳内で推し(リオルース)が『頑張ってね♡』と言ってくれる妄想で己を奮い立たせ、黒い部屋に手を触れる。
「わっ…!!!」
少し触れると黒い部屋はぱっと崩れ落ち、その欠片が辺りへ散らばり、美しかった世界をくすんだ色に変えていく。
快晴だった空は一瞬で雨雲で覆われ、冷たい雨を降らせる。
みずみずしかった草花は萎れて枯れた。
地面に落ちていた死骸は一斉に動き出して、ある一点に集まる。
そのある一点を見ると何者かが古びた椅子に座っていた。
「あれは……?!」
死骸たちはその者の周りに密集し、先程の様な無造作に倒れるのではなく芸術作品の様な形をとって、再び固まった。
一通り、死骸達が配置に着くと、その者の顔も見えるようになった。
その者の体格は小さく、幼い子供であった。
外見はテラにも見覚えのある幼児と瓜二つである。
だが、ひとつだけ、明らかに違う点があった。
それはー
「深紫の髪…!!!!」
カノンと瓜二つの少年は、静かに黒髪の少女を眺めていた。




