8.人間
「そんで、拠点ってのは何処になさるおつもりで? 核ミサイルちらつかせて牽制し合ってる北か東? それとも弱小の西南連合にでも行きますかぁ? 宗教色が強すぎる中央はお勧めしませんぜ。それとも一度大陸ごと吹っ飛ばしますか?」
質問に答えず、黙って思案しているクィンにツェンが提案をする。
「ここが一つの大陸だってことを知ってますよね? 昔の童話みたいに海を越えて国が離れてんじゃあなくて。パワーバランス考えたら、今いる北の帝国に作っておくのがいいと思いますがねぇ」
確認のため世界情勢の説明を交えた赤眼の男に、長い青髪の女が間を空けて答える。
「俺もそれが最善だと思うが、その前にレーベルクに会っておく必要がある。だがさっきから」
言葉の途中で思考を巡らす青髪の女に艶やかな黒髪の男が告げる。
「何処にもいやがらねぇみたいですね。年内どころか、さっきの今でもうくたばっちまいやがったか?」
夏を目前にした都市の公園でツェンが毒づく。中規模のテーマパーク程はある施設で幸せそうに遊ぶ親子を見てクィンが青い眼を輝かせた。
「お前、東国に行けるか?」
「ご命令とあれば何なりと。ただ、まあ・・・神とか鬼とか騒ぎになりそうですがね」
東国における赤眼の男の認識を確認した女が告げる。
「お前は西に飛べ。そこで事務所を借りろ」
「借りる? 手続きが面倒になりそうですが」
前髪を捩じりながら女が言い直す。
「買うでも建てるでもいい。とにかく作っておけ」
「クィンちゃ・・・みたいにスマートに記憶を書き換える能力は俺には無いモンで。元手が要りますぜ」
「出せばいいだろう」
赤眼の男が掌に純金を出現させながら言う。
「金を?」
「換金に時間がかかるものは止めろ」
「紙幣は無理ですぜ。番号がある」
青髪の女が思い悩む。
「手段はお前に任せる」
「そいつぁ焼き払っちまってもいいってことですかい?」
「やったら殺さん」
その言葉に赤眼の男が両の掌を天に翻して言った。
「手厳しいことで」
「郷に入りては郷にしたがえ、だ。お前は土地や時代に慣れておく必要がある」
「クィン様にも必要なことだと思いますがねぇ」
核心を突くツェンの言葉にクィンが答えた。
「そうだな」