6.合致
長い青髪を風になびかせながらクィンが赤眼の男に言う。
「少し、お前鬱陶しいぞ」
「風が強いもンでですね!もう一回お願いできますか!!?」
声を大きくしてツェンが告げた。
青眼の女が静かに眼を閉じる。気候が安定し風が止んだ。瞼を開いた女がツェンを藪睨みにする。先程の言葉が光る眼から送られていることを認識したツェンが口を開いた。
「どうも。ただですねぇ」
府庁から離れ、レーベルクに会いに大統領府付近を歩くツェンが告げる。
「仕方ないでしょう。ファル子ちゃん何も知らんみたいだから」
高層ビルの合間で信号待ちをしていたクィンが眼を見開いて答えた。
「は?」
「だから、ファル子ちゃんこの国の事何も分かってないでしょ。今の強風のことも。タクシーだって俺が呼んだんですぜ?」
「おい」
突然のファル子という呼び名に青髪の女がこめかみをひくつかさせる。
「ちゃんづけは止めろ。どっから来た、ファル子って」
「ここの地名がそうでして」
「ちゃん、は?」
「俺は女の子を呼び捨てにできませんもので」
「誰が女の子だ」
「ファル子ちゃ」
そう言いかけた黒いスーツ姿の男にクィンが青い眼を光らせると、何棟ものビルが倒壊し存在ごとツェンが消し飛んだ。
黒いスーツの襟を正して男が告げる。
「このやり取り何回目でしたかねぇ」
「知らん。覚える価値もない」
「辛辣なことで。ま、いいですけどね」
大統領府を悠々と歩く男が言う。
「ただ、ここに期待したもんは多分ありませんぜ?」
「ほう?」
偉そうな反応をする女王にツェンが部下として告げる。
「レーベルク元帥に会いたいなら大統領府には居ませんよ。自宅か病院じゃないんですかねぇ」
「・・・そうだな。だが大統領の顔くらい見ておいて損はない」
「せっかくここまで来たからってことですかい?」
その言い草に女が少し拗ねた表情を見せた。