5.疑問
「100年」
府知事を前にクィンが問いかける。
「何故100年も戦争が続く?」
「レーベルク元帥が武器を横流しされるからでしょうね」
文書を修正しながら還暦間際の男が答えた。
「何故?」
「私には分かりません」
そう答えた府知事と同様に書類にペンを走らせている女が男を睨みつける。
「ふざけてんのか?」
「ひっ」
青髪の女が眼を光らせると府知事が怯え、声を漏らした。
「こいつに聞いたところで無駄っすよ。見たとこ2年で責任者が変わってる」
棚に保管されている書類を、手早く確認したツェンがそう言った。
「じゃあ今年にはこの男も用なしか?」
「そうなりますねぇ」
その言葉に椅子から立ち上がった女が赤眼の男に告げる。
「サインを書き換えるだけ無駄な労力だったな。ツェン、大元のところにいくぞ」
「それこそ無駄だと思いますがねぇ」
「何故?」
そう言いながら青い眼を光らせる女にツェンが答えた。
「さっきエレベーターで会ったクソ爺がレーベルク元帥ですよ? ありゃ年明けまでは生きんでしょう」
「おい、何故お前それを俺に言わなかった」
クィンの問いにツェンが掌で天を仰いだ。
「聞かれなかったもんで」
青い髪の女の眼が光る。
「次からはとっとと伝えろ」
「俺はお嬢ちゃんほど便利な眼を持ってないんですみませんねぇ。まあ、できる限りの御配慮は致しますぜ」
「お前の感情は読みづらい」
そう告げられた赤眼の男が
「そいつの記憶も読めないんですかい?」
とだけ言葉を返して部屋から立ち去った。
青髪の女が、府知事に対して青い眼を光らせた。