32.天地
「それじゃぁ私は帰るよ」
そう言ったレーベルクが身を翻す。その背中にクィンの声がかかる。
「待て。植民地とやらについて詳しく話せ。極東に何があった?」
首だけ振り返ったレーベルクが答えを返した。
「アンテナショップって分かるかい? 新しい文化を放流して何に食いつくのか実験してるだけだよぉ」
「それだけでユーリィ=プラストゥのような憎悪が産み出されるのか?」
溜息を吐いたレーベルクが背を向けて答える。
「そこは自分で考えてくれよ。産まれるかもしれないし、生まれないかもしれない」
部屋から立ち去ろうとするレーベルクが一言付け加えた。
「ヒントをやろう。自民族の文化を破壊されることには余程ご立腹のようだったよ」
金髪の青年が傀儡の大統領を残して姿を消した。
「俺達の目的って何でしたっけ?」
大統領の頭をナカユビで弾き飛ばしたツェンが問う。
「世界平和」
「だったらこんなことやってる場合じゃないんですかねぇ」
口を結んだクィンが言葉を絞り出す。
「俺にはお前達の考えがよく分からない」
「人なんて分からないものですよ。だから」
口角を上げてツェンが告げる。
「知りにいきませんか?少しでもいい。少しずつ、少しずつですよ」
「世界なんてただ平和であればいいのに」
「アホみたいに笑い合っていろってことですか?」
「アホが増産されても困るだろう」
「比喩ですよ」
乾いた笑みを浮かべてツェンがそう答えた。




