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29.傀儡

 誰もいない荘厳な石造りの謁見の間で玉座に深く座っている男が言った。

「何だ貴様は」

「我々の到着を見越して人払いしていただいて恐縮です。西国より機密情報を謙譲するために参った者です」

 スーツ姿の男の言葉に少し間を置いて皇帝が繰り返す。

「何だ貴様は」

「何だ貴様は」

「何だ貴様は」

 壊れたスピーカーのようにそれだけを繰り返す皇帝を前に赤眼の男がクィンに告げる。

「こんなの相手にしても意味がありませんぜ。ただの傀儡だって言ったでしょ」

「こいつ、マトモに喋れるのか?」

 皇帝に青い眼を光らせた女が言った。

「無理でしょ。頭引っ叩いても同じ反応しかしませんよ」

 そう告げたツェンが玉座に近付く。

「分かってるなら止めてくれないかね。この国の大事な神輿なんだ」

 背後から響いてきた声に二人が顔を向ける。部屋の入口には落ち着いた物腰の金髪の青年が立っていた。

「テメェは・・・何だ?」

 地上に存在する全てを把握できる赤眼の男がそう言った。

「レーベルク・ヴァン=ホドルコフスキー」

 地上に存在しないはずの男が名を告げた。

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