25.類似
都心から少し離れた繁華街に立ち並ぶ屋台の前を、人々の合間を縫うように青眼の女が歩いている。
夜店を楽しむ群衆に青い眼を輝かせながらクィンは目的の人物を探っていた。ツェンの妻と娘を確認するために。
「ママ、あそこにあるシューマイ食べたい!」
「リネアはシューマイ好きだものね。いい匂いがするわぁ」
見つけた。クィンが青い眼を光らせて黒髪の親子に近付く。
「ツェン?」
こちらに振り返る目の明かない女がそう告げる。先手を取られた青眼の女がたじろいだ。
「あ、いや、俺は」
「ツェーン!逢いにきてくれたんだ!!」
猛然と飛びついてきた女がクィンの首筋にキスをする。その様子を赤眼の少女が呆然と眺めている。
「違う!俺はツェンじゃない!!」
匂いは確かにツェンだった。抱き着いた相手が自身の夫ではないことに気づいた盲目の女がクィンから手を放す。
「ごめんなさい。勘違いをしてしまって。私、目が見えないんです」
「いや、いい。気にはしていない」
そう言った女が青い眼を黒髪の女に輝かせる。
『沙羅、25歳。東国北部出身。血族:。ユーリィ=プラストゥの妹。戦災により故郷を追われ視力を失う』
漆黒を宿す黒眼の男、ユーリィの肉親であることは判明した。だが何故こいつ等の血族は読み取れない? 疑問に思ったクィンが近くにいるリネアと呼ばれた少女に眼を光らせる。
『リネア=スレッグ。東国出身。と沙羅の娘』
父親の名前を読み取れないということは恐らくツェンの娘なのだろう。赤い瞳がそれを物語っている。
「ツェンの知り合いではあるんだ。服に残り香でもついていたのかもしれないな」
「ツェンって誰?」
赤眼の少女がクィンを見上げて問いかける。母親である沙羅の態度がおかしかったのも相まってリネアの目つきは厳しい。
「ん、ああ、仕事仲間というか」
答えあぐねている様子を察知した黒髪の女が娘に説明をする。
「私の大事な人。この人から同じ雰囲気を感じたから、取り乱しちゃって」
チャームとでもいうのだろうか。ストレートで雑な説明であっても娘は納得してうんうんと頷いている。
「旅の途中でな。仕事柄ヤツは君に会うことはできない」
「あなた危ない人なの?」
リネアが険悪な表情で母を護るようにクィンを警戒した。危ないのは君の母親の兄だと思いながら、クィンが自己に対する考えをそのまま口にしてしまう。
「どうだろうな。人を傷つけるつもりはないのだが、見方によってはそうかもしれない」
「すみません。娘が不躾な真似を致しまして」
母親の謝罪にリネアが更に表情を険しくして母に言った。
「こんなヤツに謝る必要ないよ!どうせまたママに変な仕事させるつもりなんだから!」
「リネア!」
沙羅がそう叱りつけると少女がビクっと跳ねた。涙ぐんでいる少女にクィンが告げる。
「俺はたまたま通りがかっただけだ。君のお母さんに用があった訳じゃない」
「ママに何かしたら許さない」
真紅の瞳が涙ながらにクィンを睨みつけ放った言葉に沙羅が再び謝罪をした。
「本当に申し訳ございません」
「いや、いいんだ」
そう答えたクィンが腰を落としてリネアに告げる。
「君はママ想いなんだな。偉いぞ」
「そうやっても私は垂らし込めないわよ!!」
その言葉に娘を後ろへ退かし、頭を下げる沙羅に青眼の女が応じる。
「いいんだ。本当に。その通りなのだから」
「ツェンと同じで、あなたも違います」
黒い瞳に青い眼を輝かせた女が答える。
「いい女だな。俺の負けだ」
立ち上がり、砂のついた膝を払ったクィンが告げた。
「あの人と仲良くしてあげてください」
「ああ」
そう答えながら親子に背中を向けるクィンが右手を上げる。
『ヤツに似てきた、か』
沙羅の言葉を掻き消すように長い青髪の女が首を振った。




