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20.信頼

「宗教国の割に下卑た人間が多いな」

「権威を持っちまえばそんなもんでしょう」

 地位により入店を禁止する看板や、人種が違う者同士が争う姿が目につく。綺麗とも汚いとも言える街中を歩きながら二人の男女が会話を続ける。

「平和にしたはずなんだがなぁ」

 ぼやいた女にツェンが応える。

「人間なんてそんなもんですぜ。安心ってなると他が欲しクなる。お互いに喰い合ッていないと生きてラれン」

 口調がおかしい男にクィンが青い眼を光らせる。かつてこの男に何があったのかを知った女が言葉を返した。

「この国もバランスの内になければ保たれないということか?」

「そういうことですねェ」

 面白くなさそうな顔で返事をする赤眼の男にクィンが笑顔を返す。

「人間とはそういうものか」

 その表情に絆されそうになったツェンが顔を背けた。




 白い石造りの宿に宿泊を決めた女が、二人にしては広い室内でツェンに告げる。

「風呂に入ってくる」

「必要ないんじゃないですか?」

 汚いままでいろと言っている訳ではない。自身を浄化することができる女神にツェンが疑問を呈した。

「俺にだって気分ってものはある。風呂に入りたいって言ったら入りたいんだよ」

「それなら一緒に」

 言葉の途中で赤眼の男が青い眼の輝きと共に地の果てまで飛んだ。




「たまには温泉もいいもンですねぇ」

「そうだな」

 タオルを纏って岩風呂に腰を下ろしている女がそう答えた。

「混浴しかないからって無理して一緒に入らなくても良かったんですぜ?」

「いちいち時間を分けるのも面倒くさい。入ってくる客は他にもいるからな」

 夜空を見上げながらクィンがそう告げる。

「いいモンですね」

「何がだ?」

 こちらを睨みつけた青い眼の女にツェンが答える。

「信頼できる相手がいるってのは」

 その言葉にタオルを巻きつけたままクィンが水が跳ねる勢いでお湯に浸かった。

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