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2.裏腹

 林立する高層ビルの前でツェンが問う。

「協力ってのは具体的に何をお手伝いすりゃぁいいんですかい?」

 赤眼の男の質問に、間髪入れずに女が答える。

「世界を平和にする」

 具体的に答えてほしいとの要望を無視されたことをおくびにも出さずにツェンが言う。

「戦争を終わらせるってことですかい?」

「終わらせた」

 長い青髪の女の答えに渋い心中を胸の内に閉まったまま赤眼の男が再び問う。

「何も変わってないみたいですけど、何かなされたんですか?」

「全世界の意識を反戦に書き換えた」

 要領を得ない答えを返す女に対しツェンが質問を重ねる。

「そりゃ俺にやったみたいにですか?」

「ああ。何故か戦争が終わらない」

 大げさに肩をすくめて男が言う。

「そりゃ終わらんでしょう」

「何故?」

 不快を前面に押し出した表情でクィンが訊ねた。

「終わったら終わったで平和なんて考えはぶっとんでいきますぜぇ?誰もですね、やりたくて人殺しなんざぁしちゃいねぇんですよ」

「ほう? だから何だ? 邪魔すんなよ。どけよ」

 そう言って青い眼を輝かせた女の前から、この世からツェンが消えた。





「ふざけなさんなよお嬢ちゃん」

 再び目の前に現れた男にクィンが告げる。

「何だ貴様」

 己を忘れていたかのような言葉を吐く女にツェンが声を大きくする。

「ツェン!!でございます!!」

「知らん」

 首だけ振り返った女が、腰までかかる長い青髪を翻して告げた。

「知らんってことはないでしょう」

 長い髪の間から青い眼で一瞬だけツェンを見やる。

「面倒くさい」

 そう言いながら瞳を輝かせたクィンにツェンが言葉を返す。

「その眼」

 クィンの青い眼を見つめながらツェンが彼女の前に回り込み、征く道に立ち塞がった。

「俺から何か読んでますよね?」

「世界を滅ぼしておいて。いい加減にしろよカス野郎」

 その言葉と共に光る青い眼を、赤い眼光の男が塞いだ。


 唇で。


 瞬間、逆立つ青髪の女の前から世界ごと男が消えた。




「おい」

 地面に横たわる艶やかな黒髪の男に長い青髪の女が声をかける。

「起きろ。お前が死ぬと世界が消える」

 目覚めないツェンにクィンが青い眼を輝かせようとした。

「起きてるって分かってるんでしょう。あぁ、酷い酷い」

「お前はそんな性格じゃないはずだが?」

 ビルが消え、舗装された道路もない土色の地面から立ち上がったツェンが告げる。

「君がそんな性格にさせたんだ。とでも言えば満足ですかい?」

「次言ったら殺すぞ」

「望むところで」

 にやりと口の端を吊り上げながら答える男に、つまらなさそうな表情でクィンが視線を外した。

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