15.天道
「そんで、これからどうすんですか?」
白百合の鉢植えを棚の上に飾りながら赤眼の男が問う。
「とりあえずソフィアの家を訪ねる」
「ここから近いんスか?」
デスクに座り前髪を捩じりながらクィンが答える。
「隣町だな。歩いて15分もかからん」
「要らんって思いましたけど、やっぱりガレージを作っておくべきでしたね」
「このくらいの距離なら構わないが」
「あー、見栄えっていいますか。車で行った方が信用されるでしょ」
少し思案したクィンが男に告げる。
「じゃあお前は車を作れ。俺はガレージを作る」
「車体を作るのは簡単ですけどねぇ。法的に勝手に乗れないもんで」
「俺に法が通じると思ってるのか?」
青い眼を光らせたクィンの言葉にツェンが答えた。
「そうでしたね。クイーン」
地上に降りた二人の手でガレージと赤い車が創造された。
「下の花屋半分くらいになっちゃいましたけど、中はどうなってるんですか?」
テントウムシと呼ばれる赤い車を運転しながら赤眼の男が訊いた。
「知らん。店員の命は保障してある」
「それならようござんした」
そう答えたツェンが舗装されている道を選んでハンドルを切った。
「ここまで道が悪いとは思ってませんでした。歩いた方が良かったですかねぇ?」
「靴が汚れる」
西国では大通りから外れると泥だらけの道しかない。その先にあるのはスラム街だけだ。
「スニーカーなんぞドロが跳ねてた方が格好良いと思いますがねぇ」
自身のつま先を見た女が青い眼を光らせる。その服装をスーツ姿に変えた。
「ソフィアに会うならこっちの方が好都合だ」
「お似合いですが俺は野性的なクィンちゃ・・・も好きですぜ」
いつものスタイルでいた方がソフィアには好まれただろうと思ったツェンがそう告げた。