13.神慮
「学会には出席しなくて良かったんですかい? ドクター・クィン」
大学から出た赤眼の男がクィンに問う。
「お前のおかげでソフィアと連絡は取りやすくなったからな。学会にはもう用はない」
「お役に立てて光栄ってところですけど、あの野郎何処行きやがった?」
「お前、感じ取れるか?」
ツェンが地表にある物体を肌で感じるように捜索する。星の女神に魅入られた男の能力でもユーリィの存在は確認できなかった。
「力になれなくて悪いんですけど分かりませんね。その辺にいるならこの国ごと消しちまいましょうか?」
「それは止めろ。被害が大きすぎる」
「今のは冗談ですがヤバい野郎だってことだけは言っておきますぜ?」
「だろうな」
クィンの髪を見た男が言う。
「クィンちゃ・・・メッシュ入れた?」
「何の話だ」
ツェンの思考を読み取った女が前髪から一束垂れている黒髪を掴んで言った。
「うざったいのが混じったな」
「黒混じりの青も素敵ですぜ」
無言で黒髪を捩じりながらクィンが考える。
「ツェン、地表を消し飛ばせ」
「やれというならやりますがねぇ。やりたくないですね」
不本意な表情をするツェンにクィンが言う。
「お前は俺がいなくなったら悲しいか?」
「当たり前でしょう」
「俺の能力と関係なくか?」
「聞くまでもありませんぜぇ。俺は女の子を悲しませることは出来ませんので」
一瞬の間も空けることもなく答えたツェンに青眼の女が答える。
「そうか」
クィンが青い眼をツェンに輝かせた。
「一先ずは西国へ行く。お前が建てた拠点に」
「最高の造りにしておきましたぜ、クイーン」
ふっと笑ったクィンが空港へと向かう算段を立てた。