4:薪割りって案外力いらないよね
薪は割って使うものである。
何言ってんだこいつと言われそうなんですが、よく山奥のお家の映像とかで出てくる薪があるじゃないですか。
アレはあのまま使うんじゃなくて、鉈で良い感じにぱかーんと割って使うもんだと思うんですよ。
だって大きいじゃん。
あのまま火を付けようとしたって、かなり難しいわ。
よっぽど大火力のところにぶち込まないと無理だろ。
と、いう話を何かの拍子にしたときに、「……何でそんなこと知ってんの……?」と言われた思い出。
そこで俺は知る。
普通の現代っ子のお家には薪は積んでないし、鉈で薪を割って火にくべるようなことはしないのだと……!
嘘だー!?一度ぐらい何かの行事とかで薪割ったことぐらいあるでしょ!?って衝撃は、「そんなことやったことない」という一言で一刀両断されました。
世知辛い。
何でお前そんなこと知ってんだと言われたら、中学三年で家をリフォームするまで我が家の風呂は薪風呂だったからである。
待って、聞いて。
別にド田舎に住んでるとか、文明の利器が存在しないとかじゃないから!
湯沸かし機能はなかったけど、ちゃんとお湯が出るタイプのお風呂だったから!
水とお湯の蛇口が別々だったけど。
二つを同時に回して良い感じに調整するタイプの蛇口だったけども。
種明かしをしますと、俺が生まれた年に死んだじーちゃんが、家を建て直したときに「風呂は薪風呂でないと嫌だ」って言ったから薪風呂だっただけなんですよ。
何か薪風呂の方が温まるから、その方が良いって……。
お湯が出る仕様なのに水を入れて薪で沸かしてたのはその名残です。
でもまぁ、保温機能も湯沸かし機能もなかったから、薪で温め続けるのは悪くないと想うんだ。
そんでもって、薪風呂というのは火の番をしなければならない。
早い話が、ずっと火を点けておかないとお湯が冷めちゃうのである。
そんなわけで我が家では、家族全員が入り終わるまで交代で火の番をしていたのである。
その時に薪を割ったり、どのぐらいの大きさで火にくべれば良いかを学んだだけです。
で、うちで火の番をメインでやってたのは、曽祖母なんですよね。
腰の曲がったお婆ちゃんだったんですが、食事の支度や掃除は母や祖母がやってたので、こっちが曽祖母の担当。
んでもって、我々子供がお手伝いする担当でもありました。
曽祖母は普通のお婆ちゃんなので、力はありません。
でも、薪は綺麗にぱっかんぱっかん割ってたんですよ。
で、コツを教えて貰ったら、子供の俺達でも綺麗に割れた、と。
やり方はとても簡単。
まず、薪を立てます。
その立てた薪の真ん中に、真っ直ぐに鉈を下ろして刺します。
鉈が刺さったままの薪を持ち上げて、地面にぶつけます。
それを繰り返すと、ぱっかーんと割れます。
少なくとも我が家に積んであった薪はそれで割れたし、子供の力で楽々割れました。
もっと大きな薪とかだったら、斧で力一杯頑張らないとダメかもしれないけど。
うちのは程良い大きさにしてあったので、風呂釜にくべる為の大きさにするのは子供でも出来たんですよな。
という感じで薪について語ったら、やっぱり「何でそんなん知ってるの……?」って顔をされたんですよ。
サバは読んでない……!
タイムスリップもしてない……!
ド田舎にも住んでない……!
ただ単純に、家がそれなりに古い集落の古い家で、たまたま祖父の趣味の薪風呂が残ってただけだい!
なので、よくある田舎暮らしの薪割りとかお風呂とかを見ると、「あー、昔やってたなー。今なら面倒でやらねぇ」と思うだけになってる民です。生活に密着してるのでロマンなどない。