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1. とある国の王女<Princess of Kingdom>
むかしむかし、あるところに美しい王女さまが居ました。
王女さまの名はオデットといいました。
オデットは雪のように白い髪と肌を持ち、その姿は国中にいるどの女性よりも美しいものでした。
しかし、彼女はとても体が弱く、太陽の下を歩くことができませんでした。
少しでも日光を浴びてしまうと、彼女はたちまち熱を出して倒れてしまうのでした。
オデットは母親に疎まれ、薄暗いお城の一室で、身を潜めるように暮らしていました。
それでもオデットの美しい姿の噂は国中に広まり、彼女を一目見たいという男はたくさん居ました。
中には結婚を申し込む男もいましたが、彼女はそうした申し出を全て断っていました。
陽の光さえ浴びることのできない弱い体では、お城の外に出ることすら難しいのでした。
太陽の出ていない夜は、オデットにとって最も自由な時間でした。
月の明るい夜にお城の近くの湖を散歩することは、彼女にとって唯一に近い慰めだったのです。