4/26
3. 影の悪魔<Evil of Shadow>
彼が覚えている最初のことは、胸に鋭い痛みが走り、その後に自分自身が何かから引き剥がされるような感覚でした。
目の前が真っ暗になり、それからそれが悪夢だったと気がついた時、彼は目を覚ましました。
そこは暗い森の中でした。
彼にはそれまでの記憶が全くなくて、どうしてここに居るのかもわかりませんでした。
彼はあてどなく森の中を彷徨いました。
やがて彼は、森の中に倒れている一羽の白鳥を見つけました。
白鳥はかわいそうに、片方の足を矢で貫かれ、血を流していました。
彼はおそるおそる白鳥に近づきました。
白鳥は苦しそうに息をしており、倒れてもなお、懸命に翼を動かそうとしていました。
「君も悪い夢を見ているのか?」
彼は白鳥が自分と似ているような気がして、そっと手を差し伸べました。