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ビルからの脱出

ドアは開かれたが差し込む光はなくフロアと同じ薄暗さが部屋の中にも続いたままだった。

彼女が部屋の中を確認する。奥の部屋からは地味な単色のカーテンとゆったりと座れそうな椅子が目に入った。奥の部屋に続く廊下の床には、こちらも地味な緑色のカーペットが敷かれている。廊下の側面には複数のドアが設けられている。彼女が奥の部屋を確認するが、そこには誰もいないようだ。部屋の廊下に戻り、側面のドアを開け他の部屋を次々と確認している。


「いない…!」


彼女の顔からいつもとは違う見たことのない不安な表情が読み取れた。彼女の不安を和らげるためでもあるが、ことを先に進めるため適当な回答を用意し問いかけてみた。


「先にここから脱出したんじゃないのか?」


ボスを探している体が一時的に固まったようだった。


「...」


少し黙り込んだ後、今までと同じ冷静な表情へと顔が戻っていく。それと同時に次の行動へと向かうための準備を体がし始めているようだった。


「そうよね、そうに違いないわ!」


「ここから逃げることを優先しないと」


ほんの一瞬の間の沈黙が彼女の次の行動に結びつかないと感じた私は言葉を発したが、どうやら心配なかったようで彼女の返答と言葉が重なった。今できることに集中する。彼女が体を出口のドアへと向きを変える。フロアの方から運転手の声が聞こえた。


「来たぞ!」


部屋からフロアへと出て階段の方へと視線を向けると運転手が銃を腰から引き出し階下を警戒する姿が目に入った。


「屋上に出るしかないわね!」


彼女は走りながら服に隠れていた銃を腰から引き抜く。


(また走るのか...)


緊急事態ではあるが体が言うことを聞かないので悪態を頭の中でつく。こんなことになるなら日頃から適度に運動すればよかった。冷静さが過去を振り返る。何とか走っていると彼女は階段のフロアにつき上階へと登っていく。運転手が早く来いとばかりに腕を振る。やっとの思いで階段のフロアに到達する。階段を上がる冷徹な足音が下から響いてくる。


「この前みたいにお前を抱えるのはごめんだ」


運転手が「頑張れ」とばかりに早く上階へ行くことを催促する。運転手は銃を片手持ちに切り替え、もう一方の手でもう一つの銃を回転させながら取り出し持ち手を私の方に差し出した。


「持っていけ、ここは私が食い止める」


一人で大丈夫なのかと心配になった。一応、公安にいた時に訓練は受けたことがあることを伝えようとしたが話している場合ではないことを察した。


「なぜ、そこまでして助ける?」


公安の地下施設から助け出してくれたこと、ボスに会わせようとしていること。なぜ私が必要とされているのか、組織に入ってから疑問が残っていた。


「帰ってから話そう。でなければ、そのうち分かる」


彼は小型で丸レンズの眼鏡型暗視ゴーグルを装着し、階下からの脅威に対応する準備をし始めた。私が今できることは逃げることだ。


「屋上は大丈夫よ!早く来て!」


彼女の声が聞こえた。なまっていた体が今まで感じたことのない何か熱いものを感じ始めた。熱のなかった乾いた体が熱いうねりを帯び、力を持ち始めた。


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