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神々に愛されし者達の夜想曲  作者: 白雪慧流
魔術師団編 【二章 春眠の巫女】
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第六話 【裸の付き合い】

 メリと別れ脱衣所に入ると、ミラフ、プレスティが既に居た。

「ミラフ、体調は大丈夫か?」

「おう、カルデラ、心配かけたな、大丈夫だ」

「ずっと、ルストさんが看病してましたからね、流石に大丈夫でしょう」

二人はてきぱきと衣服を脱ぐ。自分も、なんとか脱ぐ。メリが結ぶのに苦労していたが、解くのも苦労するものだ。明日は普通に制服でいた方がいいかもしれない、メリも疲れてしまうし。

 引き戸を開けると、大きな風呂が目に飛び込んでくる。旅館は貸切なので、中にいるのは騎士団と魔術師団の面々だ。団それぞれの関わりは案外深く、春華國の遠征に同行したことがある者も互いに少なくないので和やかな雰囲気だ。ここに、救護団がいればもっと騒がしいのだろうが、シザフェルとの問題で、救護団は来ていない。魔術師団、騎士団ですら最低限の人数である。

「まずは露天風呂行きましょ! 露天風呂! 春華國ったら露天風呂です!」

「テンション高いなあんた」

「プレスティは春華國遠征は今回が初めてだからな、しかし、まずは体を洗うのが礼儀だ」

かく言う自分も春華國は初めてだ。そしてその初がメリと一緒なので浮き足立っている。プレスティ程露骨には出さないが。

 それぞれ体を洗い、露天風呂に行く。外に面した風呂は少々寒いが、問題なさそうだ。当たり前だが仕切りもあるので、外から見られることもない。

「ん? ミラフ、女湯の方の露天風呂は隣にあるのか?」

「おう、そのはずだぜ? どうした……ってあぁ」

ミラフが、女湯側の壁を見る。そこにはメリの魔力の気配がある。ミラフは医療魔具で判別したようだ。

「覗こうとか考えんなよ」

「やらんやらん、透視魔術は確かにあるがな」

「やるなよ?」

ミラフに念を押された。やりたくなるが、やって嫌われるのも嫌なのでやらない。

 できるだけ近くにいたいので、壁にもたれ掛かるように風呂に入る。どうやらメリもこちら側にいるようだ、たまたまだろうが、なんだか嬉しくなる。

「上機嫌だな……」

「女神様が魔術師団に入ってからずっとこんな感じですよ、俺達としてはありがたい限りです、まじ女神様ですよ」

ミラフがため息を吐くが気にしない。感情というのは自分ではコントロールできないものなのだ、メリと会って、愛して、それを痛感した。その感情を糧とするメリは、ずっと前から思っていることだろうが。

 空を見上げる。鎮魂祭は満月の日の夜にやるそうだ。今はまだ満月ではない、近くはあるが。

「満月か……」

メリに告白した日も満月だったなと思う。メリが満月が好きなのか、中庭にいるのが基本満月の夜なのだ。それこそ偶然かもしれないが。

「感傷に浸るカルデラ様珍しいですねー」

「珍しいというか、俺は初めて見たぞ、メリさんすげぇな」

外野がザワザワしているが、気にしたら負けだ。まぁ、言いたいことは分かる。昔の自分であればこんなこと考えなかっただろう。人を愛するということを知らないのだから。興味がないわけではなかったが、特別探そうとは思わなかった。必要性を感じなかったし、友人といた方が楽しいと考えていた。それがミラフと仲違いし、ディウムと関わり、セヘルを得て、メリと出会って、様々な考えが変わったのだろう。

「そーいえば、ミラフ様はどうするんです?」

「何が」

「奥様、副団長候補、いないと困りますよね」

ミラフはどうやら、カリナとは離婚したらしい。自分は詳しく聞かなかったが、メリが言うには仕事を取ったとのこと。

 きっと、自分とやりにくいと困るからだろうと思う。自分としても、カリナとはあまり関わりたくないので良いのだが、愛する者を手放すという選択はあまり歓迎できなかった。自分にはメリがいるから尚更である。仕事とはいえ、メリを手放せと言われたら自分は迷わず仕事を切るだろう、メリがそれを嫌がってもだ。

「そうだなぁ、カルデラみたく相思相愛の相手がいればいいが」

「俺みたく?」

意外な言葉に、ミラフを見る。ミラフは、ぼーっと空を見てる。

「そー、お前とメリさん見てると羨ましいぜ? 仮にお前が倒れたらメリさんなら離れんだろ、メリさんが倒れたら、お前だって離れないだろ?」

「当たり前だ、前にメリが倒れたことがあったが、あの時は焦ったし、仕事で早く戻れないのに苛立った」

あの時は既にシザフェルを出ており、父の転移魔法で帰してもらったが、そう毎回上手くは行かない。何よりメリを一人にしてしまった結果であることが、悔やんでも悔やみきれない部分だ。

「本当メリさんのこと好きだなお前は」

「愛してるから一緒にいる」

「そうだろうな、俺は毎回この遠征倒れっから好きじゃないんだが、船酔いってのもあってカリナがいてくれたことはなくてな、今日初めて女性に介抱されたよ」

ミラフの言葉に、プレスティはわかりやすく顔を顰める。ミラフは苦笑いだ。

 自分はルストのことは詳しくは知らない。いつの間にかメリが仲良くなっていた女性の認識だが、ミラフを心配する姿は上官だからだけではなさそうだ。

「ミラフ様は女性の選び方気をつけた方がいいですよ」

「お前……直球だな……」

プレスティの意見には同意である。俺達が頷くものだから、ミラフは更に苦笑いになるのであった。


 湯気が立つお風呂を眺める。本当に外にお風呂があるんだけど。

「寒くない……?」

「春華國名物、露天風呂ですわよ」

ローザは楽しそうにお風呂へと入る。それを見たルストは苦笑いだ。

「女神様、冷えますから入りましょうか」

「え、えぇ」

なんで風呂を外に造ったのだろう。その答えは入るとわかった。これは心地よい。

「外の寒さと相まって丁度いい温度かも」

「私も初めて来ましたが、いいですね、露天風呂」

ルストと共にゆったり、まったりする。すると、カルデラの魔力を感じ取り、背後を見る。そこには、木製の仕切りがある。もしかして、男湯は隣なのか、いやそうよね、出入口隣にあったものね。

 意味はないが、カルデラの傍にいたいなと、少し移動する。木製の仕切りに腰掛けるとすぐ近くにカルデラの魔力がありぎょっとする。カルデラもこちら側にいたのか。

「女神様? 何をしてらっしゃるので?」

「いや、あの、えと」

しどろもどろになる私に、ローザは仕切りを見て、頷く。

「隣は男湯ですわよ、ルスト様」

「なんと! じゃあ、ミラフ様達がおられるわけですか」

「あぁ、ミラフ様の魔力も感じますね」

少し離れた位置ではあるが、ミラフの魔力もある、あとプレスティ。どうやら三人一緒にいるようだ。

「ルスト様、来ますか?」

「は、恥ずかしいです……」

この人可愛い反応するのよね、顔を真っ赤にしてお湯に顔を埋めている。バレなきゃ恥ずかしがることもないのに。

 そういえば、ミラフは風呂に入って大丈夫なのだろうか。

「ミラフ様の体調は大丈夫ですか?」

「え、あ、はい、なんとか動けるまで回復しました、何度も介抱しなくて大丈夫だと言われた時はなんとも言えませんでしたけど」

男性のプライドなのか、単純にルストが心配なのか、どちらにしても甘えればいいのに。

「どうも、カリナの奴は介抱したことがなかったみたいです、ただの船酔いだからとミラフ様には気にしなくていいと言われました、医療魔具のせいならただの船酔いではないのに」

その声には怒りが滲んでいる。話を聞いたローザまでもが、はぁ? と低い声で言い放つ。

「あの女救護団でしたわよね?」

「そ、そうよ?」

「夫一人看病できないとか、ふざけてるんじゃありませんこと?」

ローザ落ち着いて、と言おうとした時、ルストが立ち上がる。

「わかりますか! ローザ様!」

「わかりますわよ! ルスト様のお怒り!」

あの……ここお風呂なんですけど。

 私は二人を宥めることを諦める。まぁ、貸切だし、女性の人数はそんなにいないから、問題ないだろう。仮に問題があるとすれば、隣に会話がダダ漏れなのではないかということだ。

「会話……」

この仕切りどのくらいの厚さなのだろうか。もしかして、向こうの会話聞こえたりする? 目を瞑り意識を集中させてみる。するとかすかに、ミラフの声がした。どうも恋愛関係の話をしているようだ。

「本当メリさんのこと好きだなお前は」

「愛してるから一緒にいる」

「んんっ」

意識を女性二人の会話に戻す、おいカルデラ、恥ずかしげもなく何言ってんだ。盗み聞きした私も私だが。

 二人はまだ、カリナへの怒りを話しており、私が赤面していることなど気付いていない。気付かなくていいんだけど。

「ふ、二人ともそろそろ出ましょうか?」

あの感じ、男性達には私達の会話は聞こえないだろうが、聞こえるくらいヒートアップすると、後々ルストが可哀想である。私が会話に入ったことにより、二人は落ち着き、お風呂を出る。室内にも浴場はあり、何やら効能があるらしい。露天風呂にも効能があるそうだが、それぞれで変わるそうだ。明日は室内浴場にも入ってみよう。

 脱衣所にて、部屋着に着替える。こちらは貸し出しのもので、着物ではあるが、薄着だし何より着やすい。一人で着れて動きやすい、絶対こっちの方がいいよ。今まで着ていた袴は、女将さんに預け、下着は袋に入れ、こちらも洗ってくれるらしく預ける。流石はアムレート王宮御用達、至れり尽くせりだ。

 諸々が終わると、ロビーでは、ローザとルストが何やら瓶と睨めっこしていた。仲良くなったな二人。

「何を見てるの?」

「あぁ、女神様、何飲みますか?」

「コーヒー牛乳、フルーツ牛乳、いちご牛乳! もちろん普通の牛乳もありますわよ」

紅茶は……ないんですね。カルデラに言われ、普段飲んでいる茶葉は持ってきていたのだが、こういう理由か。

 春華國でも紅茶はなくはないが、主流ではないらしい。その為手に入りにくく、アムレートより高価である。私達が飲みたいなら持ってきた方が早いわけだ。

 というわけで、私はフルーツ牛乳を選択。ローザがいちご牛乳、ルストがコーヒー牛乳だ。三人でロビーにてソファに座り飲んでいると、カルデラ達がお風呂から出てきた。

「おや、仲良くお風呂上がりの一杯ですか」

私の隣に当然の如くカルデラは座る。自然な動作なので、誰も突っ込まない。ミラフだけは苦笑いだが。

「いいですねぇー、俺もなんか飲みますかね、カルデラ様、ミラフ様はどうします? 一緒に持ってきますよ」

「俺はコーヒー牛乳でいいぜ」

「ではフルーツ牛乳で」

プレスティは、私以外がいると敬語である。本当に私にだけタメ口なのはなぜなのだろう、それだけ気を許してくれているのかもしれないが。

 プレスティはいちご牛乳にしたようだ、綺麗にバラけたなと思いつつ、皆で飲む。なんかいいなこういうの。

「そういえば、ミラフ様はどうないますの、観光」

「え? んー、俺は初めてじゃないからな、別に見て回んなくてもいいんだが」

「なら、ルスト様をご案内しては如何でしょう?」

「ローザ様!」

ルストがローザを止めに入った。ミラフは首を傾げている。いいぞローザもっと言ってやって。私も助太刀するから。

「ルスト様は初めて来たわけですし、いいんじゃないですか?」

「女神様まで何を!」

慌てるルストをチラッと見て、ローザと目を合わせる。ローザはウィンクを返してくれた。

「俺は別に構わんが、ルストは看病してくれたわけだし、疲れてないか?」

「へ、私ですか、いえ疲れてはおりませんが……」

んじゃ行くかとミラフは結構あっさり乗ってくれた、ルストはこくんと頷く。

 よし、二人を一緒にさせておけば距離も縮まるだろう。私とローザは満足したので会話を終了する。時計を見たら夜の九時を回ろうとしていた。

「明日も早いですし、皆様部屋に戻りましょうか」

「そうね」

カルデラが言ったことにより、皆部屋へ戻る。明日の夜に、ルストから感想を聞くとしよう。そんな楽しみができた日であった。

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