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神々に愛されし者達の夜想曲  作者: 白雪慧流
未来への一歩 後日談
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五章後日談一話 【許さなかった理由】

 結婚式は終わったが、私が魔術師団に行くのは五月からなので、暇を持て余してしまい、なんとなくて中庭に出ると、椅子に座るマリア様がいた。

「マリア様」

「お母様よ、メリちゃん」

うぅ、まだ慣れないのです。

「お、お母様、こんな所でどうしたんですか?」

マリア様とソフィア様は一緒にいることが多いが、それは常ではない。休みの日をわざとずらしている。団長か副団長どちらかがいないと心配なのもあるが、常に一緒にいると疲れてしまうからだそうだ。プライベートの時間は大切ということである。

「そうねぇ、暇を持て余してるのよ、そうだ、メリちゃんちょっと話さない?」

「はいぜひ」

私はマリア様の前に座る。

 待ってましたとばかりに、ティアラが紅茶を持って現れ、紅茶を置くと去る。ティアラ、一体どこから見ていたの。

「さてと、結婚式が済んだわけだけど、私が、なんで政略結婚許さないと思う?」

「え?」

いきなりの問いかけに、私は考える。確かになぜだろうか、二人は政略結婚のはずだ。いや、わからない、もしかして恋愛結婚だったのだろうか。

「私とソフィアはお察しの通り政略結婚よ」

「そうなんですね」

貴族の間では当たり前だ、ましてや、クロム家は王族、驚くことではない。強いて言うなら、物凄く仲が良いから、恋愛結婚でもおかしくはないってとこか。

「私はソフィアを愛してるわ、優柔不断なとこはあるけど、やる時はやってくれるもの、でもね、だからこそ、政略結婚を悔やんでるの」

「悔やむ? 結婚できたのにですか?」

私は首を傾げる。結果良ければ全てよしではないのか。

「私達が恋愛したのはね、結婚した後だった、そりゃそうよ、互いによく知らなかったんですもの、でもね、恋愛感情半ばで、カルデラを身ごもっちゃって、子供がいる状態での恋愛って厳しいのよ、デートとかも行けないしね」

なるほど……、確かに子供がいると外出は厳しい。

 今は多少緩和されたが、今でもアクセサリー店や、魔具を扱う店など、子供NGの店が多々ある。魔具なんかは、危ないからだ。魔具は凶器、子供が安易に触っていいものではない。同じ理由で、魔法関係を扱っている店は基本入れなかったりする。

「だからね、子供達には絶対恋愛結婚させようって決めてたの! そしたら、マーベスは人当たりが良いけど、カルデラったら、女の子に興味を示さないどころか、喧嘩ばっかりでねぇ」

ふぅと息を吐くその姿からは、悩んでたんだなと思う。そりゃそうだ、カルデラの態度は親を不安にさせるのに充分である。

「そしたらいきなり、女の子を保護したって連絡来たもんだからそりゃもうびっくりよ!」

「え、私を連れ出すことは時前に伝えてたんじゃないんですか?」

「いいえ、事後報告よ事後報告!」

カルデラ……屋敷の主はご両親よ、住まわせるなら尚更伝えておきなさいよ。というか、私には伝えたって軽く嘘つきやがったな。

 がっくりする私とは対照的に、マリア様は楽しそうに笑っている。よく怒らなかったなこの人達。

「もー、私もソフィアも女の子! って魔力通信越しに叫んじゃったわよ、しかも可愛らしい女性ですよ、なんて言うから驚愕、あのカルデラから出た言葉とは思えなかったわ」

二人とも言葉を失ったのだろうなと、慌てる姿が目に浮かぶ。

「で実際会ってみたら確かに可愛い子で、しかもカルデラったら大事そうにしてるもんだから、なんか驚きを超えたわね」

「あの時は実験動物でしたけどね」

私の言葉に、マリア様は首を傾げた。私も首を傾げる。

「それはないわね」

「えっ」

「あのねメリちゃん、カルデラがまず、女の子に触れる時点で珍しいのよ、珍しいどころかメリちゃんしか見たことないわ、社交辞令の握手ならまだしも、それも向こうからだしね、私が思うに一目惚れだったと思うのよ」

そんなまさか……と言いたいが、カルデラ本人が言っていた。何も考えずに触れたと、しかもそれが初めてだとも。

 一目惚れはないにしても、それに近い、何かを感じていたのかもしれない。それを自覚したのが、パーティの時というわけか。カルデラが私に甘くなったのもあの辺りからだし。

「メリちゃんが家に来てくれてほんとに良かったわ、政略結婚を許可しなくて良かったって、結婚式で改めて思ったもの、あんなに幸せそうなカルデラ見たことなかったから、魔術師団の皆まで驚いてたのよ?」

「そんなに普段しかめっ面してるんですか?」

カルデラが悪魔だとリテア様が言ってたのを思い出す。結婚式の時も懇願するような視線感じたし、もしかして怖がられてるのでは。

「いいえ、いつも通り人の良い笑顔で過ごしてるわよ、ただむしろそれが怖いくらいではあるわね」

「怖がられてるんじゃないですか……」

常に笑顔だったらそれはそれで怖いわ。だったらまだ真顔の方がいい。

「まぁ表情は置いておいて、カルデラはね基本自分にも他者にも厳しいのよ」

「厳しい? あぁ、過剰なとこはありますね」

処罰とか、結構大袈裟なところがある。他者に対して興味が薄い影響なのか、過剰防衛なのだ。容赦がないとも言う。

 軽く思考に老けっていると、ふいにマリア様は一枚の書類を出してきた。私はそれを見ると、綺麗な時で役割分担みたいのが書いてある。この字カルデラだな。

「それ見てどう思う?」

「えーっと……」

細かく見ていくと、一人一人に対する仕事が多いことに気付く。これ、回らないわね。

「一人の負担が大きい……ですかね?」

「そう! カルデラったらね、自分ができちゃうから、他人も出来ると思ってんのよ!」

あー……天才ゆえね。カルデラの友人って、ディウムとかヴァニイみたいな、どんな仕事もそつなくこなしてしまう人が多いから、凡人の苦労がわからないんだろうな。ミラフと今でも関わりがあれば多少緩和されたのだろうが、関わりがないし。

「これを見た魔術師団の顔ったらないわよ、流石にソフィアも止めたわ、無理だって」、

「カルデラ、人への理解力が無いんですかね」

「無いわね、あったら、ミラフくんと喧嘩したまま放置しないわよ」

悪魔とはこういうことか。カルデラ、自分も人も限界まで追い込むのが好きなのか、いや、無意識か。きっと効率を求めた結果なのだろうと思う。逆に効率悪くなるけど。

「だからね、メリちゃんには優しいのを見て、皆驚いちゃったわけ、あのカルデラが! って言われたわよ」

「カルデラがご迷惑をおかけしております……」

これは魔術師団に行ったら真っ先に謝罪巡りだな。迷惑にも程がある。

 対人関係では、カルデラはお呼びではない……か。関わってきた友人達の影響なのか、関わる人が異常に少なかったせいなのか、カルデラには、対人関係関係に関する経験値がない。私だってないに等しいが、それでも人の痛みくらいなら理解できる。カルデラだって、理解しようとしてないわけではない、セヘルに対して罪悪感を持っているくらいには、痛みを理解している。しかし、他人にまで感情が向かわない、配慮がないのだ。

「やっぱり、メリちゃんには苦労をかるわね」

「今更ですよ」

学園に行く時にも、マリア様に苦労をかけると言われた。あの時は、リテア様も敵対だったのだ、それをなんとか味方にした、本当に対人関係では苦労した四年間だったのだ。

「まだまだ、カルデラの対人関係には難ありですね、まずはミラフ様か……」

この国の守りの要である、魔術師団をカルデラが、騎士団をミラフが仕切る。まだ先の話ではあるが、遠い未来でもない。二人が仲違いしたままではいられない、そうなればアムレートは危ないだろう。それでもシザフェルとマシーナの緊張状態は解けていない。アムレートが仲介には入ったが、いつ戦争になってもおかしくはないらしい。研究所が二つの国の境にあるから、ヴァニイが心配である。牽制の意味を込めてあの場所に建てられているらしいので、大丈夫だとは思うが。

「頼んだわよ、メリちゃん」

「頑張ります、なるようになりますから」

こうなったらやるしかない。リテア様だって話せばわかったのだ。ミラフだって話せばわかるかもしれない。

 少し先の魔術師団員としての生活に思いを馳せる。私は私のできることをする。まだまだ、自分には自信が持てないが、やるしかないのだ。

軽ーくおさらいと次の章からの話でした。

緊張状態なシザフェルとマシーナ、それに巻き込まれているアムレート、さてどうなるのでしょうか……。

それはさておき、カルデラの友人関係改善もまだまだですね、ミラフとカリナ……一章で出来てしまった因縁は解決するのでしょうか。

そんなこれからの議題です

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