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神々に愛されし者達の夜想曲  作者: 白雪慧流
魔術学園編 【五章 未来への一歩】
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第九話 【訪れた平穏】

 一日ぶりに学園へ行くと、すぐにリテア様が来てくれた。

「メリ! あんた体大丈夫なの?」

「リテア様、心配かけてすみません、大丈夫です」

本当に? と疑い深くちょこちょこと私の周りを何周かした後、満足したのか私の前に戻る。

「私、今回の件で学習したわ」

「何をですか?」

「メリの言う大丈夫は全く信用出来ないってこと、あと笑顔ね、大丈夫って言いつつ笑顔な時のメリはダメ」

そんな……。学習したことが酷すぎる。

「ま、今は本当に大丈夫そうね」

「はい、カルデラのおかげですね、結局頼ってしまう形になったのは、なんとも言えませんが」

「いいのよ、頼りなさい、普段メリが苦労してんだから、意趣返し程度に思っときゃいいのよ」

リテア様に背中を叩かれる。私の苦労が多いのは事実だけど、どうもディウム戦から私は役立たずな気がする。

「人の力ってのは使い時があんのよ、私なんか見て見なさい、なんもしてないんだから!」

「リテア様は話してるだけで元気になりますよ」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね、でもそういうこと」

そういう? 首を傾げると、わかってないわね! と指を刺される。わ、わからないです。

「戦闘や処罰になったらメリはお呼びじゃないのよ、逆に対人関係になったらカルデラ様はお呼びじゃないわけ、魔術師団に入ったらわかるわよ、カルデラ様悪魔だから」

「あ、悪魔?」

「メリ、あんた本来の意味で天使扱いになるわよきっと」

カルデラ、魔術師団の方に迷惑かけてるんじゃ……。そんな心配が出てくる。マリア様とソフィア様がいるから問題ないと思うけど。

 授業が始まるので、リテア様と別れ、昼休みにまた集まる。その道中でディオに会うことはなかった。

「魔術教師含めて、学園から追い出されたみたいね」

「様々な不正も露見致しましたし、一件落着ですわ!」

ローザがアムレート新聞を取り出す。この新聞は、ローザの家である、フレグランス家から発行されている。国の名前が入っていることからわかる通り、王公認の新聞だ。月に一回毎月十五日に発行されている。

「ヴァニイ様の仕事ぶりは凄いです、わたくしも負けれませんわね」

「ヴァニイさんは、そういう教育受けてるからね」

ヴァニイが作ってくれた書類には、これでもかと、ラーダ家が行ってきた不正が調べてあった。どうやら、ディオの入学も不正だったらしい。

 魔術学園には、試験がある。基本筆記試験で、内容は五教科と魔術部ならば、魔法に関する知識。私は学園に入る前に教えてもらっていたリチャード先生の推薦だし、いつの間にか試験問題をやらされており、合格に足る点数を叩き出したらしく、学園長の許可で学園での入学試験はスキップさせてもらったが、ディオは時前に答えを入手していたようだ。ラーダ先生が学園にいるから、簡単だったのだろう。その他にも様々な不正がヴァニイにより調べられた。彼の仕事ぶりはそうだが、余程怒らせたんだなと感じる。私が絡んでいたというより、ディウムを怒らせた相手だからだと思うが。でもそれって十数年前なのよね、それだけ長い間放置していたのに、改めて復讐する機会があったら徹底的にやるって、恐るべしヴァニイ、あの人の方がよっぽど恐ろしい。ディウムが頼りきった理由も分からないでもない。

「しっかし、学長もよく新聞に載せるの許したわね、学園の信用に関わるんじゃない?」

「相手が、クロム家ですから、奥様がはりきって、学園長に、連絡していました」

「マリア副団長恐るべしね……」

皆で苦笑いとなる。

 魔力通信魔具越しにやりとりされた会話は、マリア様の一方通行だった。学園長ごめんなさい。しかし、そこは王公認の新聞、きちんと魔術学園は悪くないことも書いてあり、国民のヘイトがラーダ家に向くようにされている。つまり、ローザが言っていた、社会的抹消が実現されてしまったわけである。これに関しては数々の不正をしていたラーダ家に非があるものの、不憫でならない。私と関わったばかりに……。

「私、疫病神って言われないかしら」

「メリ様に非はありません」

「クリアの言う通りだよメリさん」

フレグランス家はフレグランス家で、良いネタが入ったと喜んでいたと報告されたのを思い出す。本当に私に非はないのか、非しかないのではないか。

「メリは気にし過ぎ」

「メリ様、自業自得です、元より、それが嫌なら、変に関わらなければ、良かった話です」

「いや、ここまでされるとは考えてないでしょ」

私でも考えてなかったわよ。というか、周りがこんなにも戦闘力が高いなんて聞いてない。プロが揃いすぎてて、私の行動が人の命運を左右するんだと理解させられた。

 申し子とか、そんなの関係なしに、私が問題を起こせば、周りが動いてしまうのを理解した。これを強い味方だと言えたらいいのだが、怖い、怖すぎる。

「私、大人しくしてるわ」

「メリが大人しくしてても、問題の方から来るんじゃない?」

「嫌なこと言わないでくださいよ」

「その時は全面協力致しますわ!」

憧れていた友人という存在だが、考えていたのと違う。ミラフとカリナは命拾いしたと思う。

「私が地下から出てすぐの方々って、運が良かったんですね」

「今だったら、あの程度の処罰じゃ済まなかったわね」

にっこりとリテア様は笑う。状況を知らないローザとクリアは顔を見合わせる。

「今からでも処罰できますわ、調べます?」

「やめて、少なくともミラフ様は騎士団時期団長なんだから」

騎士団から認められるかはわからないが、彼は今信頼回復の真っ最中だ、妙なことはしないであげて。カリナの方は全く知らないが。

 二人は変わっただろうかと考える。あの一件以降全く会っていない、これはマズいと思う。城に行ったら間違いなく会うだろう、その時に問題が起きたらやばい。

「ミラフ様はまだしも、カリナ様か……」

ミラフはカルデラの親友だったくらいだし、きっと悪い人ではない。しかし、カリナの方は性格そのものに難がある。話してわかる相手でもない。

「そーいやあの女、来年には処罰が切れるわね」

「切れる? そんなに軽い処罰になさったのです?」

「四年の魔術禁止令よ、今年が最後の一年」

リテア様の説明にローザとクリアが顔を顰めた。一応二人には、何があったのか説明しているからだ。

「確か、メリ様を拉致したんですよね」

「拉致しかされてないから」

「拉致だけ、ですか?」

セヘルにじとっと見られる。実際は色々やり取りがあったが、今その話は出来ないかな、うん。

「その顔は拉致だけじゃないわね?」

「白状して頂きますわ」

「二人とも疑わないでよ、本当に拉致だけだって」

色々言われましたけど、ちょっと平手打ちをされただけです。あれは煽った私も悪かったし。

 私は笑顔を向ける。しかしそれは逆効果で、笑顔の時は信用ならん! とリテア様に突っかかられ、結局私は何があったのか詳細を話すことになり、話しながら全員の顔色を伺う。

「そ、そんなとこ……です」

マリア様が来て、部屋から出るまでを話し終えた頃には、ローザはカリナと言ったらサラク家ですわねと考え始めてしまった。待って待って。

「もう、四年経とうとしてるから!」

詳細を結構覚えてた私も私だけど! 何もしなくていいのよ。

「僕、どんなやり取りがあったのか初めて聞いたけど、それ結構なことだよ、兄さんには言ってないの?」

「言うわけないでしょ、カリナ様が大変なことになるわよ」

話す機会もないし、話す必要もない。既に王が処罰を下している。

「今からでも遅くないわね」

「何がですか?」

「処罰の追加」

やめて、リテア様がそんなこと言ったら、本当に追加されてしまう。マギア王、リテア様には甘いから。

「私情を挟んではいけません」

「メリ、あんた売られるとこだったのよ? それを父様に報告しなかったとか、お人好しの度を越してんのよ」

「もし、売られていたら、マシーナの二の舞、でしたからね」

二の舞というか、死人が出てたかもね。あの時私は魔力のコントロールができてなかったわけだし。

 でも確かに、あのまま助からなかったら、リトルナイトメアみたいなのが生まれていたのかもしれない。申し子にはその力がある。知らなかったとはいえ、カリナがやった事は危なかったわけだ。

「私助かってて良かった……」

「兄さんの機転には感謝しないとね」

「マーベスにもね」

私は、捕まっていた間の二人の行動は知らないが。カリナのところにカルデラを送り込んだのはマーベスだってことは知っている。マーベスの転移魔法には助けられてばかりだ。

「城に行ったらきっと二人には会うわけよね」

「とりあえずミラフの方は真面目にやってるみたいよ、カリナは私も知らない」

リテア様が知らないということは、城には顔を出していないのか。騎士団時期副団長なら魔法が使えずとも問題ないはずだが。そもそも彼女って騎士できるのかな。

 そんな少し殺伐としつつも、日常が戻ってきたことに安堵していた。安堵していたので忘れていた、マーベスとセヘルに口止めしていなかったことを。

「ふむ、あの女随分なことを言ってくれましたね」

「なんで話しちゃうかな……」

食堂にて、二人から報告を受けたカルデラが、試案顔になる。だから、あの事件から四年経とうとしてんのよ、今更何もしなくていいわ。

「私も城でカリナは見てないですね」

「別に出禁ではないわよね」

「入れるはずです、ミラフとも会ってないのでわかりませんが」

カルデラ、対人関係を良好にする気あるのかな。せめてミラフとは話してみてよ。話しにくいのはわかるけど。

「カリナ様って騎士団副団長をしていたのよね?」

「えぇそうです、私はあまり城に顔を出してなかったので詳しくは知りませんが、副団長とはいえ、補佐だったようですね、元々救護団ですし」

救護団だったのか、でも光魔法の魔術師だし、回復魔法が得意だったらしいからそれもそうか。

「しかし、出禁は申し出るべきですね」

「兄さんに同意、またメリさんに手を出さないとは考えにくいよ」

「出禁では、軽いのでは」

三回目の処罰会議が始まろうとしたので、私は慌てて止める。カリナになんかあって困るのはミラフだ、てか、更に険悪になるようなことをしないでくれ。

 カルデラとミラフが仲違いした原因がカリナだと言うのに、なぜ処罰が検討されているのか。本当に仲良くする気があるのか疑問である。

「ミラフ個人は嫌いではないですが、メリに手を出すなら別です」

「まだ嫌いじゃないだけ救いね」

この二人は女性問題をまず解決すべきかもしれない。もしかして私が魔術師団に入って最初にやる仕事って、カリナと仲良くなることじゃなかろうか。

「そもそも、あいつは自分の妻がどんな人間か知る必要がありますね」

「教えたら更に仲悪くなるからやめなさい」

ミラフは彼女のことを愛しているのだ。カルデラが私が傷つくのを嫌がるように、ミラフはカリナが傷付くのを許さないはずである。だから今の今まで仲違いしたままで、私は捕まったわけなのだ。

 目下の問題は一応解決した。結婚に向けての準備も再開された、しかし、その後は考えておかねばならないと再確認したのだった。

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