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神々に愛されし者達の夜想曲  作者: 白雪慧流
Episodeカルデラ
55/150

第一話【小さき天才との出会い】

Episodeカルデラ……スタートです!

 魔術学園。それはアムレートの中心都市に聳えるこの国のシンボルである。魔術大国らしく魔術師のための授業が受けられるこの学校に来る者は何も、アムレート国内だけではない。世界各国から、魔術師が通っている。そのためにアムレートの言葉を覚えてくる者だっている。

 そんな魔術学園の大等部図書室にて、自分はその男と出会った。

「君! 僕と同じ匂いがするね!」

「図書室では静かにですよ」

読んでいた魔術書から目を離さず返す。そうすると気を引く子供のように、周りをちょろちょろされる。無視していたが、流石に我慢の限界で顔を上げる。

「何の用ですか!」

「あははっ! やっとこっち見た!」

そいつは小さかった。本当に子供が迷い込んだような見た目に、言葉を失う。

「僕はね、ディウム、ディウム・ティガシオン」

「カルデラ・クロムです」

ティガシオンといえば、今の前のマシーナの政権を握っていた王族だ。確か、ミカニという魔術師に負けて、現在は影響力はあるが、マシーナの表舞台から降りたはずだ。そこのご子息か。

「クロム? あぁ、アムレート王国魔術師団の」

「それです」

父のソフィア・クロムはアムレートが誇る、王国魔術師団団長をやっている。代々クロム家が継いでいるものだが、自分は継ぐ気はなく、弟のマーベスに任せようかとすら考えている。

 ディウムは、ふむと一言、そして子供のような満面の笑みを見せた。

「ってことは無属性だよね!」

「そうですが」

「カルデラ! 君さ、僕の研究を手伝ってよ!」

少々停止する。研究? 何の? しかしその疑問は次の言葉で解消された。

「僕ね、マシーナにある魔法道具研究所を任されてるんだよ、所長ってやつ? まぁ、リーダーって呼ぶんだけど、で、魔具、及び魔力の研究をしているんだ! 君はそんな研究にぴったりさ! だってこの世のあらゆる魔術を使えるんだもの! ね? 手伝ってよ」

大袈裟な身振り手振りを交えつつ、彼は語る。その様子に嘘がないことが分かる。ここまではっきり、自身の感情を表現する者なんて初めて見た。

「つまり、私を実験の道具とするわけですね?」

「言い方が悪いよ言い方が、君は協力者って言葉を知らないのかい?」

不貞腐れているのか、口をとがらせ不服だと示す。わかりやすい男だ。

「なるほど面白い、いいでしょう、その提案受けますよ」

「ふふ、君ならそう言ってくれると思ってたよ、僕と君は同じだもの、よろしくねカルデラ」

「えぇ、よろしくお願いしますディウム」

僕と君は同じという言葉の意味はわからないが、魔力を研究したいのは自分も同じこと。この提案は願ったり叶ったりであった。

 その日から二日は授業説明や校内案内など忙しく過ごしていたため、話はしなかったが。いざ授業が始まり、昼休みができると、ディウムは自分の席にくる。隣には見た事のない男がいた。

「あんたが、リーダーに巻き込まれた可哀想なやつか……」

「貴方は?」

「あー、俺はヴァニイ・オルガンってんだ、こいつのお付け目役ってとこだな」

ヴァニイは、ディウムの頭を強く叩く。ディウムは痛いよ! と反抗した。昔からの知り合いなのだと推測する。

「オルガン家はな、昔っからティガシオン家に仕えてきたんだよ」

「つまり、ディウムに仕えているのが、ヴァニイ、貴方ってことですね」

「そういうこった」

なるほど、専属使用人といったところか。王族にはよくあることで、固定の家系と主従の契約を結び、歳が近い者を使用人として教育する。そのために子作りをしたりする、時期を合わせなければならないので、大変らしい。クロム家にはそういう家系がないのでわからない、昔はあったらしいが、仕事の邪魔になると、確か祖父の代で切った。魔術師団は外に出る事も多く、専属の使用人は邪魔になるだけ、ならばそれぞれのプロを雇った方が効率がいいとの判断となる。

 二人を眺めつつ、王族とは面倒だなと考える。わざわざ自由を縛って何がしたいのだか。

「つーわけでよろしくな! えーっと」

「カルデラです」

「おうよ! カルデラ、なんだかお前とは長い付き合いになりそうだ、リーダーは変な奴だし、頭のネジは数本ぶっ飛んでるけどよろしく頼むぜ」

「色々余計だよヴァニイ」

ディウムは睨むが、ヴァニイはお構い無しに笑う。使用人というより、対等な友人のようで、ミラフのことを思い出し、その記憶をかき消す。今は昔のようになるのは無理だ。カリナの傷がある限り、ミラフは自分に対する敵対意識は無くならならないだろう。どうにかして、傷跡を消す方法が見つかればいいが。

「やっぱり君は僕と同じだね」

「は?」

「魔法で苦労してきたんだろう? 僕らは良い協力者になれるよ」

全て見透かされたようで息を飲む。流石はティガシオンの者といったところか。侮れない。

 こうして、大等部での友人……と言っていいのからわからないが、話せる者は得た。そして、この出会いが十年後自分の首を絞めるなんて考えてもいなかったわけである。

カルデラ、学生時代の話です。

Episodeはしばらく続きます

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