二章後日談一話 【お茶会】
今日から二章後日談始まります!
アムレート城。私は三回目となるこの城に踏み入る。理由はリテア様に呼び出されたからだ。
「こっちよ! メリ!」
薔薇が咲きほこる庭園の中央に、リテア様はいた。秋であるこの時期に薔薇? と少し疑問に思ったが、今は気にしないでおこう。
「リテア様、ご招待ありがとうございます」
「そんな固くならないでよ、私が暇で呼んだんだから」
ほら座ってと促されて座ると、使用人の方が、紅茶とお茶菓子を置いてくれる。私は礼を言って、カップを持つ。私が礼を言った時ギョッとされたが、これも気にしないでおこう。
「この庭園凄いでしょ!」
「はい、秋に薔薇が見られるとは思いませんでした」
リテア様は自慢げだ。
そして、薔薇を一輪取ると、はいと渡される。私はそれを受け取り。すぐに魔力の気配を感じ固まる。
「やっぱり、メリにはわかるのね」
「こ、これは……?」
「魔術の花ってやつ、知らない?」
魔術の花……? 聞いたことない単語に首を振る。
「魔術の花はね、このアムレートの特産品よ、その名の通り、魔術で作られてるの、原理は私にはわからないんだけど、魔力を固めて作る? らしいわよ」
「あぁなるほど」
私は指輪を見て、薔薇を見る。指輪に付いている宝石と同じ原理でこの花ができているわけか。
「理解できるのね……まぁ、半永久的に枯れないから、アクセサリーなんかにも用いられるわ、魔術の国らしいものでしょ」
白夜城に、機械仕掛けの物が置いてあったのを思い出す。それぞれの国の特色がよく現れるものだ。
私はとりあえず薔薇を机の上に置く。リテア様は改めて椅子に座り直す。
「お父様に頼んでね、この庭園を作ってもらったの、そりゃもう使用人からの反感はあったけど、無理矢理作った、だって私は姫だもの」
無邪気に笑われる。ご、豪快ですね。
「でもね、いくら綺麗な庭園があっても、私一人じゃ寂しいわ、だからメリが来てくれて良かった」
「いえ、私でよければいつでも来ますよ」
リテア様の言葉に、なんだか寂しさを覚える。彼女のわがままは、自分の寂しさを埋めるためのものだったのではなかろうか。人では埋められない寂しさを、物で埋めようとした。けれどそれで寂しさが無くなるわけではない。
「ほんと、メリって人が良いわよね、親の教育が良かったのかしら」
「えーっと、それはどうでしょう……」
親……というか姉様の教育が良かったのかもしれない。両親から教育されたことは、魔術以外ないから。
私が暗い顔をしたからだろう、リテア様はしまったという顔をする。
「ごめんなさい私ったら、メリは地下にいたんだものね、家族のことはあまり聞かれたくなかったでしょうに」
「謝らないでください、そりゃ十年地下にいたので、両親のことは触れられたくない部分はありますが、姉様は優しい人ですし……」
「は? 十年?」
「え、はい」
リテア様はまじまじと私の顔を見る。そして、二、三度その視線は上下に動いて、私の顔で止まる。
「メリ今何歳?」
「二十三です」
「私より年上ですって! その容姿で!」
年上と言っても二歳しか違いませんよ。てか、この反応されたの二回目だな。前はカリナにこの反応されたんだっけ。まだ、一年しか経っていないのに随分昔のように感じる。
「あ、化け物ではありませんからね、私は人間ですよ」
「そんな事は知ってるわよ、誰かに言われたの?」
私はにっこりと笑う。触れてくれるなという気持ちを込めて。リテア様は、了解とばかりに頷いてくれた。
それからしばらく取り留めのない会話をして、回ってきた話題は、ガレイに襲われた時の話だ。
「あいつが言ってた、ティガシオンについてだけどね、メリは魔法道具研究所って知ってる?」
「マシーナにある、研究所ですよね?」
リテア様は頷く。魔法道具研究所。カルデラが考えるなと言ってきた所であり、ミカニ王ですら危惧する、魔具の研究所だ。何やらよくない研究をしているらしい。
「そこのリーダーが、ティガシオンの現ご当主、ディウム・ティガシオンらしいわ」
「リーダーってことは、管理人ってことですか?」
「そういうこと、あの研究所あんまり良い噂は聞かないわよ、ディウムってカルデラ様の友人なんでしょ? 多分カルデラ様の方が詳し……メリ?」
カルデラの同期である、ヴァニイはティガシオンと深い縁がある。そして、ティガシオンのイカれたご当主こと、ディウムもカルデラの同期であり、魔法道具研究所の管理人。
ディウムは私を獲物だと言う。王が怖がるぐらいの研究なのだから、兵器の類なのだろう。ティガシオン家は王と敵対関係なわけだ、王を殺す道具を作っていてもおかしくはない。しかし、あれだけ魔力の強いミカニ王を殺すなら、それ相応の魔具が必要で、その魔具を動かすのにも高い魔力が必要……。
「私、軍事利用されようとしてる……?」
私の魔力を使って魔具を動かすというのか。だから、カルデラは、私をマシーナに連れて行きたくないのか。
「大丈夫、メリ?」
「え、あぁ、大丈夫ですよ、すみません」
「別に謝らなくていいけど、ねぇメリ、なんでカルデラ様に聞かないのか理由聞いてもいいかしら?」
そうか、リテア様と話すようになったのは、もう色々調べきった時だったから話してないのか。
私は、カルデラが何かを怖がっており、私に隠し事があること、それが魔法道具研究所関連の可能性を話した。
「破棄すれって、随分強い言葉を使うわね」
「ですよねー、そんなこと言われたら逆に気になりますって」
二人で頷き合う。やっぱり私の感覚おかしくないよね。リテア様は、顔を上げて私を見る。
「メリ、貴女は私に忠誠を誓ってくれたわ、その時点で一蓮托生よ、カルデラ様の過去、調べてあげる」
「そんな事できるんですか?」
リテア様は任せなさい! とウィンクする。その勢いが逆に怖くなり、危ないことだけはしないでくださいね? と忠告した。




