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神々に愛されし者達の夜想曲  作者: 白雪慧流
魔術学園編 【二章 王族達の輪舞曲】
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第八話 【事後報告】

十九日分をミスで投稿できなかったので、二十日の昼に投稿してます。

二十日分は十八時に投稿されます。

 私は下げていた顔を上げる。咄嗟にリテア様に忠誠を誓ってしまったが、これカルデラには、なんて説明すればいい? 怒られない? 大丈夫よね。というか、これはカルデラとの婚約を認めてくれたって解釈でいいのかしら、王国魔術師団副団長になれってことはそうよね。

「あとね、あんた気を付けた方がいいわよ」

「気をつける?」

リテア様は倒れているガレイを見る。私も彼を見る。そう言えばティガシオンがどうとか言っていたな。

「ディウム・ティガシオン? とかいう、イカれたご当主様が、メリを狙ってるみたいね、獲物だとか、ガレイに言ったみたい」

「ティガシオンが?」

「知ってるの?」

私は頷く。ティガシオンと言えば、マシーナの王と喧嘩している家系だ。

 そして、カルデラの友人、ヴァニイと関係があるらしい。

「もしかして、ヴァニイ様がなんか言ったのかしら」

「ヴァニイ?」

「カルデラの友人です、大等部時代の、この間屋敷にいらっしゃいまして、どうやらティガシオン家とは深い関わりがあるらしく、ガレイ様のことも調べておくと」

しかし獲物とか、イカれたご当主って発言は気になる。カルデラは、王でも守れる保証はないって言っていたし、実はめちゃくちゃな変人なのでは。

「ディウムさんって、兄さんの友人だね」

「は?」

入ってきたマーベスが、物凄い爆弾を入れてくる。え、カルデラの友人? 友人が、私を獲物扱いしてるんですか。

「僕は詳しく知らないけど、ヴァニイさんと同じで大等部時代の同期だよ、昔はね手紙のやり取りがあったんだけど、最近はないね」

「その友人が、イカれたご当主様で、私を獲物とか言ってて、ガレイ様に圧力をかけたと……」

私の説明に、リテア様が青ざめる。きっと言いたい事は一緒だろう。

「……カルデラ様がメリを婚約者にしたこと、お気に召してないらしいわよ?」

「でしょうね……」

あぁ、カルデラ、この事を隠していたのかしら。そりゃ、友人がそんなこと言ってたら、隠したくもなるわよね。

 マーベスが私を心配そうに見る。私はにこりと微笑んだ。

「マーベス、クリア、リテア様、とりあえず今日のことは他言無用でお願いします、カルデラやマリア様、ソフィア様には私からご説明しましょう」

「それはいいけど、父様には報告しなきゃよ」

「そうですね……とりあえず、ディウム様に関しては伏せて頂けますか? マシーナとは友好関係です、ガレイ様の一件だけでも危ないのに、ディウム様のことまで入ったら戦争になりかねません」

リテア様は頷く。私は改めてマーベスを見た。

「マーベスも、お願いね?」

「兄さんには言うなってことだね?」

「えぇ、多分カルデラが隠してることはこれだと思うの、言ったらディウム様のとこに突撃しかねないわ」

王を止めてもカルデラのことを止められなかったら意味が無い。むしろ大惨事が目に見える。ディウムの方が心配だ。

 クリアにも、他言無用を改めてお願いして、ガレイを医務室に連れていくと、リテア様を馬車まで護衛を兼ねて案内し、見送ってから、マーベスと共にクロム家の馬車に乗る。

「しかし凄かったね、メリさんの魔法! 僕が入る隙もなかったよ」

「リテア様を守らなきゃって思ったらできたの、今でも不思議だわ」

馬車に乗るなり、マーベスがはしゃいだように言う。今回で大きな力を使うのは二回目だが、結局理由はわからない。ガレイに対しての怒りもあったのかもしれない。リテア様を殺そうとするなんて許すわけにはいかないのだ。

「しかも、リテアさんから、忠誠を誓えって言われるなんてねー、メリさん、やり手だね」

ニヤリとマーベスは笑う。そして、凄いとこ見ちゃったと茶化された。

「咄嗟に承諾しちゃったけど、大丈夫だったのかしら……」

「大丈夫だよ、むしろ兄さんの婚約者としてはいい仕事したんじゃない? だってこれで、魔術師団は安泰だよ、しかも、リテアさんっていう、難題の解決! 驚かれはするかもだけどね」

確かにいい仕事はしたのかもしれないが、報告するとなると気が重いなぁ……。

 クロム家に到着後。私は食堂にて全員がいることを確認する。マーベスは、私を見てウィンクした、さてどう切り出したものか。

「メリ、おかえりなさい、緊張しているようですが、何かありましたか?」

まだ仕事が終わってないのか、書類と睨めっこしていたカルデラは、私を見て子首を傾げる。私は深呼吸一つ、口を開いた。

「……カルデラ、マリア様、ソフィア様、この度、リテア様に認めて頂きました」

「認めてもらったって、リテアちゃんが、カルデラとメリちゃんの婚約を?」

「はい、アムレート王国魔術師団副団長になれと、そしてこの国のため、リテア様のために、私の力を使うことを私は承諾しました」

全員が黙った。カルデラに至っては持っている書類を落とした。しばらく沈黙し、叫んだのはマリア様だ。

「えーー! それって、リテアちゃんに忠誠を誓ったってことよね?」

「は、はい」

「……メリちゃん、凄いことしてくれたね」

「ホントに今日のメリさん、何もかも凄かったんだから!」

マーベスが、誇らしげに言う。彼は今日の全てを見ているのだから、当たり前なのだろう。

「な、何があったんですか……?」

流石のカルデラも、青ざめた顔をしている。なんか、ごめん。

 私とマーベスは、席に座ると今日あった事を話した。勿論、ディウムのことは伏せてだ。まぁ、伏せちゃうと、なんでガレイがリテア様を襲ったのか全くわからなくなるのだけど。

「マシーナの第二王子ねぇ、なんでまたそんな事に」

「わからないです、何か焦っていたみたいですよ、時間がないとかって」

マリア様、ソフィア様は顔を見合わせる。マーベスは見ていたのでなんとなく理解している。カルデラだけは、何かを考えている。恐らくディウムの事なのだろう。この様子では、ガレイに圧力をかけたのは知っていそうだ。

「時間……か、カルデラ、手紙は解読できたのかい?」

「手紙?」

「そうそう、カルデラ宛にね……」

「父様」

カルデラが低い声で止めに入る。ソフィア様は首を傾げた。私も首を傾げる。

「まだ、解読できていません、あいつの手紙は解読に時間がかかるので」

「そうかい、じゃあ解読できたら、内容を報告すること、いい?」

ソフィア様はカルデラを諭すように言うが、その言葉には絶対的なものがある。

「……わかりました」

カルデラも頷くしかなく、その返事を聞いたソフィア様はこの話はおしまい! とばかりに手を叩く。

「さーて、今日は祝杯だ!」

「祝杯ですか?」

「だって、メリちゃんが大役をしてくれた、これで魔術師団は安泰なわけだよ」

「リテアちゃんを解決できたのはお手柄よ!」

そして、どんだけ貯蔵してんだって量のお酒が運ばれてくる。今日の主役はメリちゃんよ! とマリア様がじゃんじゃん私にお酒を飲まし、私はそのまま寝てしまった。


 母とメリが寝始める。母はすぐに使用人によって、部屋に運ばれた。やれやれ、相変わらず飲む人だ。父は、飲む量を珍しく適量にしている。なんでかは理解出来た。マーベスにもう寝るように促し、食堂を出たのを確認して数分。父は口を開く。

「で、内容は? 解読できてないってことはないだろう、メリちゃんに聞かれたくなかった、違うかい?」

「違いませんよ」

寝ているメリの髪を撫でる。私は話すかどうか迷い、父を見た。

「父様は、神の申し子はご存知ですか?」

「あれだろ、常軌を逸した奇跡を起こす者の名称、ほとんど迷信だけど、確か千年前に出た記述があったか、場所はマシーナだ」

「流石ですね」

私の言葉に、勉強はしているからねと返される。マシーナに現れた神の申し子。それは、魔具の発展を促し、石油を見つけ、マシーナを大国にしたという。初代魔法道具研究所リーダー。

「神の申し子については記述があまりありません、歴史には存在するのに、何ができるのか、どんな力を持っていたのかは記述がないのです」

「だから迷信だと言われてるわけだ」

「えぇ、ただ、共通点があります、神の申し子が生まれるのは千年周期であり、魔術師の家系に生まれながら、魔術は扱えず、しかし魔力は高いとのこと」

父は、メリを見る。自分はゆっくりと頷く。

「丁度二十三年前が千年経った時でした、ディウムは、その神の申し子を探しています」

「カルデラ、君はどうする気?」

それは、ディウムと、ティガシオンと敵対するのか、という意味だろう。

「あいつにメリを渡すわけにはいきません、渡せば苦しむのはメリです」

「敵対するって解釈でいいかな?」

頷く。父は悩むかと思ったが、にっこりと笑った。その笑顔には狂気が見える。

「了解、僕も可愛い未来の娘を渡したくない、それに、魔法道具研究所が潰せるならむしろ楽しみだね、だって邪魔だし」

邪魔と言ってのけれるのに、素直に感心する。マシーナの王ですら、警戒しているのに、それを一刀両断しているのだ。そこには絶対的王者の余裕が見える。

 これが、アムレートが誇る、王国魔術師団団長の威厳である。マギア王に対して、敬語を使わない数少ない人物。それが、ソフィア・クロムなのだ。それを服従させたマギア王もまた、敬うべき人物である。

「でさ、一つ確認なんだけど」

「どうしました?」

先程までの気迫はどこへやら、キラキラした目をされる。どうしたどうした。

「神の申し子であるメリちゃんは、この国の姫である、リテアちゃんに忠誠を誓ったわけだ、これって実は一大事なんじゃない? もしかしてアムレートそのものが安泰だったり?」

「……かもしれません」

二人でメリを見る。可愛い寝顔を無防備に晒しているこの存在は、この一日でアムレートという国すらも安泰へと導いたのだ。マシーナの申し子も、王に忠誠を誓い、マシーナを発展へと導いた。メリにどんな力があるかはわからないが、少なくともメリが生きている間は、アムレートが崩されることはないのかもしれない。

「凄いね、そんな子が娘になるわけか、カルデラ、随分なお手柄じゃないか」

「感謝ならマーベスに言ってください、メリを見つけてきたのはマーベスですよ」

「はっはっは、明日にでも礼を言わなきゃね! いやぁ、魔術師団も安泰だし未来があるって嬉しいねぇ!」

「余計な事は言わないでくださいよ」

言わない、言わないと、否定されたが、少々心配になる。まぁ、父なら大丈夫だろうが。

 本来は自分一人で片付けようと思っていたのだが、思わぬ所で味方が増えた。魔術師団、ここが動けば一人でやるよりは早く終わるかもしれない。

「さぁ、そうと決まれば明日から仕事が増えるよ、カルデラ、準備はいいね?」

「望む所です」

メリが知らぬとこで、事態は動く。しかし、二人はこの選択を後悔することになることなど、知りもしなかったのだった。

リテア様の解決です!

そして、メリの力について少し触れました。

今後、詳しく触れていく予定です。

本日は本当にすみませんでした、十八時をお楽しみください。

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