後日談 一話 【副団長の心構え】
本日から後日談となります!
今まで団長室には入ったことがあったが、奥の副団長室には入ったことがなかった。
そのため、マリア様に案内される形で、副団長室へと足を踏み入れる。
「うわぁ……」
いつものワインレッドのカーテンを潜り、更に奥の扉を開けた先は、所狭しと本棚が立ち並ぶ、正に補佐に相応しい部屋だった。
少しカルデラの部屋っぽいなと思いつつ、この部屋にある本、及び書類の一部が少し古いのに気付いた。
「あぁ、その少し古いのは私の前の副団長さんの物よ」
「お母様の前……」
つまり、カルデラの祖母の書物か。
「どんな人だったんですか?」
ちょっと気になって問うたのだが、マリア様は少し困った顔をした。
私が首を傾げると、実はねとちょっと声を小さくして言う。
「私は会ったことがないの」
「え?」
「無理がたたって若くして亡くなったそうよ、ソフィアからは、私との縁を繋いでくれた、としか聞いてないわ」
無理が……たたって……とは……? つい、ポカンとマリア様を見てしまう。そんな激動な時代だったのだろうか。
「……あのね、メリちゃん」
「は、はい!」
真剣な話だと、背筋を伸ばす。
私が改めたからか、ちょっとクスリと笑うと、カルデラは心配ないだろうけどと前置きされた。
「副団長とは、団長の補佐だけが仕事じゃない、団長が使えなかった時は、仮の団長としての役目も担うわ」
「団長が使えなかった時?」
「団長がいつでも有能とは限らないでしょう?」
そ、それは、祖父方があまり仕事ができる方ではなかった……ということでしょうか。
「今はソフィアが団長をやっていたわけだし、カルデラも有能過ぎるくらいだから、大丈夫だけど、魔術師団、ひいてはクロム家の信用ってね無かった時のあるのよ」
「え……」
「詳しくは私もわからないんだけどね」
肩を竦めてそう言ったが、浮かない顔をしている。
私はマリア様に問うのは違うなと口を噤む。きっと、彼女は概要くらいは知っている、それでいて、副団長で、ソフィア様の妻であったとしても、元はクロム家ではない彼女から聞くのは間違っていると思わされた。
「まぁ、今のは極端な例ね、今はちゃんと信用あるし、カルデラが団長の仕事で魔術師団を空けるってなったら、副団長であるメリちゃんがしっかりしなきゃダメよってこと」
「わかりました」
深刻さを感じない声色で、マリア様は言ったが、私の中には、副団長とは補佐だけではないと、重く受け止めるのが正解な気がした。
十章の後日談は、二話となります。
そして、続き物のようなものです。
明日は、カルデラの祖父の話となります!
さて、どのような方だったのでしょうか……。




