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五章 プロローグ
歴史は変わらない。綴られる物語には虚実が混じり、変わったように見えるだけである。
物語の中の事実が実は間違いであることもある。そうして歴史は改変され、決して真実は伝わらない。そうまでして隠したいものが、人々が避けたいものがある。
真実を知るのは、その瞬間を、その時間を生きている者だけなのである。
湖の真ん中にその祠はある。
住民は、土地神を信仰し、彼の神の代弁者を求める。
「近く、明るい緑色の髪をした女性が神の遣いとして、この地を訪れると、土地神様は申しております」
神官様! と村人は代弁者を祭り上げた。
お告げを告げた当の本人が、ほくそ笑んでいるなど、誰も見ていなかった。




