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廃アパートの人影

 A君の家の近所には、地元で有名な心霊スポットがある。

 それは、かなり昔に建てられたと思われる廃アパート。その1階3号室の窓に人影が映るらしい。

 A君の同級生にも、薄暗い室内にいる人影を目撃した者が数人いる。その人物は男性で、窓のすぐ向こうに立ち、薄笑いを浮かべながら、じっとこちらを見つめていたという。

 しかしある時、A君を含めた何人かのグループが例の部屋に侵入し、人影の正体が判明した。人影はポスターだった。窓ガラス部分に、背中をつけるようにして置かれた箪笥。そこに、ひと昔前の男性アイドルのポスターが、外から見えるように貼られていたのだ。誰かの悪戯だと思われた。

 幽霊の正体見たり枯れ尾花。

 それ以降、人影の正体は瞬く間に広がり、廃アパートは心霊スポットではなくなった。……ということはなく、今でもそこは怪しい人影が出る場所として有名である。

 A君たちは人影の正体を黙っていた。むしろ虚実入混ぜて話を盛り、他の同級生や後輩を怖がらせて楽しんでいた。そのおかげかは知らないが、A君たちが社会人になった今でも、廃アパートで男がこちらを見ているという噂は健在である。

 ただ、A君にはひとつだけ不思議なことがある。男がこちらを見ている。皆そう言うが、A君は未だかつて男と目が合ったことがないのだ。窓の外から覗いた時も、部屋に侵入して間近にポスターを見た時も、男はいつも黒目を右に寄せて横を見ていた。今でもそうだ。たまにアパートを覗くと、男は微笑みながら不自然に目だけ右に寄せている。

 この現象がなんなのか、A君にはよく分からない。

 

 



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― 新着の感想 ―
[良い点]  お互い短編ばかり書いてますが、特に短い物語ですね。  スッと読めました。    ポスターのとこは妙に納得出来ました。世の中の、噂って実際タネ明かしすると、こんなもんなんだろうなあ、と感じ…
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