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王のインケラーシャ  作者: Lopeye
勿忘草の胎動

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厄災の地鳴り4

 その一室に、ひしめくように詰め込まれた。

 意匠を凝らされた上質な身なり。煌めく宝石に彩られた指先。

 貴族とも見紛うような姿が、薄暗がりの中に揺らぐ。

 中心に座る男の前で、彼らは軍隊のように黙然として立ち尽くしていた。

「……何のつもりだ?」

 ほとんど葬儀じみたその空間で、ゲリーは一言そう呟く。


 不意のことだった。彼が夜明けを待たずに招集した討伐会議のさなか、集められた十二人の区画管理者たちが一斉に立ち上がった。わなわなと震えながら、しかし屹立して中空を凝視している。光を失った彼らの瞳を睨みつけると、示し合わせたように全員の視線がこちらを向く。


 赤子が泣き始める。


 彼らの瞳の中に抱かれた赤子が、猫のような声で喚き出す。

 間断なく続く号哭。

 息継ぎも無く、滔々と広がるその震えが、小さな一室を満たしていく。

 波となった声色が満ち引きを繰り返すのを、ゲリーはその胆力に任せて聞き続けた。

「……そういうことか、魔王」

 やがて身体中の血管が浮き上がり、皮膚を突き破った蔦が彼の四肢を這い回る。

「ぐぁっ……!!」

 激痛に狂いそうになる全身を押さえつける。背筋が別の生き物のように脈動する。

「だが……ならば、私も好きにさせてもらおう。たとえ悉く死に絶えようとも」


 男たちは恍惚とした目で、鬱蒼と播かれるゲリーを凝視した。

 それは彼らの身に着けたどんな装束よりも、宝石よりも。

 この世の如何なる奇跡にも勝る、彼らの神。

「収穫だ」

 誰かが唱える。

「収穫だ」

「収穫だ。収穫だ」

「収穫だ。収穫だ。収穫だ」

 緑の瞳を幽かに耀かせ、口々に神の言葉を繰り返す。

 べっとりと粘ついた思念が、渦を巻いて瞳の赤子を取り囲む。

 重なり合った鼓動、収束する魔力、振盪する胎動。


 赤子が、目を開ける。


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