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暁の歌、響け世界に3 《天の巻》  作者: John B.Rabitan
第8部 岩戸開き
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1 神界のトップシークレット

 話を始める前に、婆様は言った。


「前にも皆さんに申し上げたことがありますけれど、これからお話する御神霊のお名前は、人間界の方が勝手につけたもの、本当のお名前ではありません」


 そう前置きしてから、婆様の長い話が始まった。話の内容は、実に壮大なものだった。


        ※    ※    ※


 金龍姫神は四次元馳身ハセリミ神霊界最高の美しさを誇る女神様で、その母親は天帝ともいうべき国祖神の「国万造主大神くによろずつくりぬしのおおかみ」様の皇女の若姫様でありました。ですから金龍姫神は国祖様から見ると孫の代に当たります。父親は宰相の由良里彦ゆらりひこ大神でした。

 そしてそれはこの地球と人類が創造されてから現界の時間で三万五千年ほどたったころです。

 五次元耀身(カガリミ)の主宰神であらせられる「天照日大神あまてらすひおおかみ様」を中心とする天の御三体神のお一方である「月の大神」の直系の天照彦あめのてるひこ神が、金龍姫様に激しい恋心を抱いてしまったのです。

 この方は「月の大神」の直系ですから、当然水の眷属です。そして金龍姫神は国祖神の孫ですから、当然のこと火の眷属です。しかしいくら限定の世は終わって自在の世を迎えたといっても、国祖神の孫娘と水の眷属の天照彦神が結ばれることはあり得ないのです。

 神霊界での御神霊の結婚はすべて国祖神が司り、自由にはできないのが天の掟です。つまり、天照彦神と金龍姫神が勝手に結婚したら、それは天の掟破りとなります。

 しかもこの時、金龍姫神は天照彦神のことなど眼中になく、その恋愛感情は迷惑な話だったのです。


 ここで限定の世、自在に世についてお話しておきましょう。

 ここからは重大な神界の秘め事で、今この天の時だからこそ明かされること、この当時の四次元神霊界では国祖神「国万造主大神くによろずつくりぬしのおおかみ」様以外はまだどなたも知らないことだったのです。

 大宇宙の総ての総ての創造主であらせられる『大根本の主神ぬしがみ』様という絶対なるお方がおられます。この方の本当のお名前は人類界には知らされておりません。人類界どころか、神霊界にも知らされておりません。

 ですので他の御神霊と同様、人類は自ら考えて、つまりそれを許されてさまざまなお名前で及び申し上げています。

 例えば古文献では『天地真一大神あめつちまひとりのおおかみ』、『元無極主王大神もとふみくらいぬしおうのおおかみ』『宇宙大元霊』などさまざまなお名前でお呼びしています。

 ちょうど神霊界の国祖神も本当のお名前は明かされておらず、「国万造主大神」「国常立神くにのとこたちのかみ」「弥栄ヤハエの神」「聖観音」「ブラフマン」「ベイロカーナ」「アミターバ・アミターユス」といろいろなお名前でお呼びしているのと同じです。

 この『大根本の神様』はその大きさは人類界の尺度で申し上げますならば二百億光年の大きさで、お姿はなく、まさしく光そのものの智・情・意の大元の方です。つまり、この宇宙も神界・神霊界も、そして現界のすべてがこのお方のお体の一部であります。

 さて、その『大根本様』の御意思により七次元隠身(カクレミ)神界、六次元仮凝身(カゴリミ)神界と創造されましたが、『大根本様』より仮凝身カゴリミ神界の統治神の「天一天柱主大神あまはじめあまはしらぬしのおおかみ」様を通し、五次元耀身(カガリミ)神界の御三体神の「天照日大神あまてらすひおおかみ様、四次元馳身(ハセリミ)神霊界の「国万造主大神」様から三次元限身(カギリミ)現界の人類一人一人に至るまで縦の霊線がつながれていたのです。

 そしてこの人類創造より三万五千年ごろに、『大根本様』はその縦の霊線をすべて切断されました。

 なぜ『大根本様』はそのようなことをされたのか……ここからが神界の秘め事ですが、そもそも『大根本様』はなぜ三次元現界の宇宙の総ての天体をはじめこの地球を、そして山川草木や動物、そして人類を創造あそばされたのか……それは物質の肉体を持つ神の子である人類に神界の写し絵である地上天国を、物質をもってこの三次元界に建設させようという『神』の大芸術からなのです。

 でも、創造当初の人類は何から何まで与えられ、苦労して手に入れる必要もなく、また御神霊が直接コンタクトを取って何から何まで手取り足取り教えたので、自ら工夫して努力し、物質を開発しようという意欲がわきませんでした。

 そこで、御神霊の辛抱心は桁外れですが、それでもいつまでもこれではそもそも人類を創造した意味がないということで、『大根本様』は縦の霊線を切断する御決意をなされたのです。

 これが創造・統一の世から自在の世への転換の真相だったのです。

 こうして人類には初めて競争心や名誉欲、自己顕示欲、所有欲などの欲心が与えられました。でもそのことは現界の人類界だけのことではなく、当然その元である神霊界も影響を受けます。むしろ、そちらの方が人間界よりも先です。

 これまで縦の霊線を通して保たれていた秩序による自由が一気になくなるわけですから、自在の世はすなわち各自の自由意志による勝手気ままな意味での自由がはびこり、混沌とした状況になっていきました。

 これが自在の世の始まりです。


 このような中での天照彦神の金龍姫神への恋慕となるわけですが、そのアプローチは度を越しており、今の世でいうストーカーのような状況にまでなっていきました。

 もちろんそのような気は全くない金龍姫神にとっては迷惑この上ない話で、従姉いとこであり親友でもある気津久姫神に金龍姫神は相談したのです。

 金龍姫神は国祖神の皇太子ともいうべき大地将軍の娘で、夫は国祖神の側近である道城将軍でした。気津久姫神は金龍姫神ととても仲が良かったのですけれど、気津久姫神が言うには、天照彦は耀身カガリミ界の天の御三体神の「月の神」の直系、いわば水の眷属の頂点にいる立派な方だから、そんな方と夫婦になればきっと幸せになれるはず。だから、邪険にしないで今すぐにでも天照彦の求婚を受け入れるべきだということでした。

 金龍姫様は失望し、お父上の由良里彦神に相談したのです。怒った由良里彦神は直接天照彦神に談判に行ったのですが、天照彦神が言うのはすでに自在の世ですべての行動は各自の自由意思に委ねられる。すべてが自由、恋愛も自由だと。そこで由良里彦神は娘が貴殿の求婚を拒むのも自由。貴殿を嫌悪するのも自由と反論しまして、一応天照彦神は「ご忠告、かたじけのうございます。しかと肝に銘じておきまする」と慇懃にあいさつをされたのです。でもその内心は煮えくり返っていたようです。

 その後も天照彦神のストーカーは収まらず、時には懐柔策に、時には強硬な脅迫めいた手段で金龍姫神に迫り、ついに国祖神の御長男である大地将軍まで天照彦神の説得に乗り出しましたけれど、論破されて終わりです。

 怒った金龍姫の母親の若姫神は天照彦神との間でついに騒擾を起こしまして神霊界は大混乱、ついに国祖神の知る所となりました。


 国祖神「国万造主大神」様は神霊界の御神霊をお集めになり、自在に意見を述べさせました、皆喧々諤々(けんけんがくがく)で、気津久姫の配慮ない相談内容を責めるもの、金龍姫は被害者とてかばう者それぞれで、まさしく神霊界は混沌とした状態になってしまったのです。

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