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御影山の伝説
鎌倉殿が日ノ本を治められていた頃の話。
武蔵国の御影山のてっぺんには立派なお屋敷があり、たいそう美しい姫とたいそう賢い殿様がおりました。
領地こそ少なかったけれど、二人は仲睦まじく暮らしておりました。人々は二人を慕い、また二人は民を愛していました。
しかし、世は戦に乱れ、二人の領地も危うくなって参りました。
そんな折、鎌倉殿より殿様へ参陣の命が下ります。
もはや鎌倉の滅亡は必定。姫は必死に止めます。
しかし、殿様は制止を振り切り出陣して行きました。こんな言葉を遺して。
『私が帰るまで、どうか待っていてほしい』
姫は、ただひたすらに待ち続けました。月日が経ち屋敷は荒れ果て、それでも姫は少しも老けることなく、荒れ果てた屋敷で待ち続けました。
そのうち、全く老けない姫に恐れを為した人々は御影山に近づかなくなりました。
今でも夜半すぎ、御影山の頂上でボロボロの着物を纏った姫が目撃されるとかされないとか。
その姫の名は――――