プロローグ
プロローグ
人は死ぬと何になると思う?
転生へ向かうまで、いつか誰かの元へまた生れ落ちるまで
全てペンギンの形をしてるという。
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今日も青空、雲の上。
私は死神。死神の中でも案内人の役目を担っている。
ペタペタペタと雲の上を何人、何匹ものペンギンが列を為して進んでゆく。
列を乱さぬよう、悪いものに取り込まれぬよう、どこまで歩けばたどり着くか分からぬ光の方へ導いている。
私はこの一角しか知らない。
私はこのペンギンたちの行先を知らない。
ペンギンになれなかった者達がペンギンを喰らおうとするから
最後までたどり着けるよう、魔女の帽子を与える
そんな役目。
「死神さん、帽子をくださいな」
ぼーっとしていると1人のペンギンがそう私に言う。
うっかりすると混雑が起こる。
「すまない、受け取ってくれ。気をつけて」
「ありがとう、コレで怖くないね」
表情はわからないが、心無しかにこやかに去っていく。
ひたすら私の前を通るペンギンたちに、配る帽子。
前を見ても後ろを見てもペンギン。
「いつ見ても圧巻だな」
思わずそう呟いた。
この何匹ものペンギン達は信じている
この光の先に希望があるのだと
現世のしがらみを、苦しみを、悲しみと喜びと成長を忘れ
ただただ
波に逆らわず
揺れて
光の方へ
私は死神
希望も、喜びも、苦しみも、痛みも
人間の持つものだと
私はそう思っていた。
後ろの列から突如現れた
思いを残した、1匹のペンギンが私の前に現れ、私をさらって、この小さな世界から飛び出すまで。