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また災厄が家の扉をノックする

割と行き当たりばったりに書きます。

いろんな要素のごった煮だから簡便な!


「なんて可哀想……」


 けたたましい扉のノック音に急かされて焦って開けたその向こうには、ヤケにピンク色したドギツイ髪色の、とんでもなく可愛い美少女が立っていた。

 煌びやかで大胆な露出度の高い肩出しのドレスに、派手派手しい真っ赤なマント。

 所々に金色が眩しい装飾品や、指輪なんかが光っていてとても目によろしく無い。

 そんないかにも『金持ち』って感じの美少女は俺の顔を見上げながら、なんだかとっても悲しそうな表情を浮かべたと思いきや開口一番でそんな台詞を吐いた。


「お、おぉん?」


 俺は扉のドアノブに手をかけたまま、固まってしまう。

 

「アナタ……アナタその醜くて可哀想なお顔は、一体どうしてしまったと言うの? 呪い? ゴブリンと同じ顔面になる呪いでも受けたの? なんて酷いの……こんなのあんまりよ……腕の良い神官を紹介するわ」


「帰れ」


 勢いを付けて扉を閉める。またか、またこういうパターンか。


 なぜ見ず知らずの美少女から突然生まれ持ったこの顔面を哀れまれないといけないんだ。

 ちくしょう、どいつもこいつも人を馬鹿にしやがって。

 この世界に来てからと言うもの、ほんとロクな目に合ってねぇ。そろそろ泣くぞ俺。


『ちょ、ちょっと何よ急に! 開けなさいよ!』


「うるせぇな! 人の美醜に茶々いれるような奴にはなんも用は無ぇんだよ!」


 典型的な日本人の容貌がこの世界じゃ醜い部類に入るって事はもう理解しているが、面と向かって醜いとか言われるのはやっぱり辛い。俺が日本人の中でもトップクラスに不細工ってわけじゃないよな?

 なんだか不安になってきた。もうあの世界を離れてけっこう経ってるしなぁ。俺自身の認識と価値観に変化が起こってても不思議じゃない。


『人が心配してあげてるのになによその態度! 無礼にも程があるわ! お父様に言いつけるわよ!』


 無視だ無視。身に付けている高級そうな服である程度察していたが、やはりやんごとない身分の美少女であったか。

 経験上、例え美少女であろうがその横に居たムサいおっさんや筋肉モリモリのアッチ亜人であろうが、こんな僻地にわざわざ訪ねてくる奴なんか総じて疫病神だ。


 せっかく『アイツ』が留守にしてる俺の貴重なお昼タイムを邪魔されてたまるか。

 さぁて、優雅に紅茶でも飲みながら読みかけの魔導書の続きでも……。


『セイムソン! あの無礼で不躾で不細工なゴブリン似のブ男! 略して《5ブ男》をこの見窄らしい家ごと吹き飛ばしてやりなさい!』


『かしこまりっ☆』

 

「はぁっ!?」


 直後。


 かなり野太い男の返事と同時に、住みついて2ヶ月程の我が家が大きく揺れて吹き飛ばされる。


 ────俺の体ごと、全てが粉々になる程の威力で。


「ほーほっほっほっほ!! ざまぁ無いわね醜い5ブ男! アナタにもう少し知性と謙虚さと教養と美少女を尊び敬う姿勢があればもう少しだけ長生きできたでしょうに! このリセ・アイニス・ヴェル・グラートの前であんな失礼な態度! 神が許しても私が許さないわ! ええそう、美少女だもの!」


「お嬢様の言うとおりっ☆」


「アタシもそう思うわ♡」


「良い子ねセイムソンとエリカちゃん! やはり貴方達を供にして大正解だったわ!」


 …………困ったなぁ。話が通じない系の美少女かぁ。

 ウチのアレとはまた違うベクトルの、かなり厄介な感じ。

 これだから顔の良い女は信用ならねぇんだ。


「しかしお嬢様っ☆ ここがかの『辺境の魔女』の家なのは、ほぼ間違いないって話っ☆」


 スキンヘッドの癖に黒い顎髭と胸毛を腕白に生え散らかして、なぜか上半身裸な上にブーメランパンツ一丁の姿のおっさんが内股と腕をくねくねさせながら『お嬢様』なる人物に問いかける。


「でもセイムソン、この美少女たる私に対するあの様な態度は決して許されない事。いい? 美少女と言う存在は常に人から敬意を持って崇め奉られねばならないの。それは世の摂理であり真理。それを護らないのは例外なく、理から外れた無法者か知性を持たぬ獣なのよ。ならば人の世を生きる者として、そう言う輩を排除する事が高貴なる血筋に生まれ尚且つ美少女として生まれた私の義務。おわかり?」


 ……やっぱり、ぶっ飛んだ思考をしてやがる。

 この『世界』の女ってなみんなこうなのか? 

 少なくとも俺が知ってる顔の良い女はドイツもコイツも思想がアブなかったり、行動がアブなかったり、性格が最悪だったりでもう良い加減にして欲しいんだが。


「でもねお嬢♡ あの子を殺しちゃったせいで『辺境の魔女』の怒りを買ったら、いくらアタシたちでもお嬢を守りきれないわ♡」


 犬耳で筋肉モリモリのなぜかビキニみたいな紐しか身に付けていない獣人が、またも内股でくねくねしながらお嬢様にそう告げる。

 その声は見た目に反してとても甲高く、どこかオレの神経を逆撫でした。


「都でも三本の指に入るクラン、『美の守護者ビューティー・セイヴァー』の一員たる貴方達がそんな弱気でどうするのよ! 良い? このリセ・アイニス・ヴェル・グラートが何者であるか、思い出しなさい?」


「お嬢様はあの名高きグラート家の令嬢だわっ☆」


「そしてアタシたち『美の守護者ビューティー・セイヴァー』の一番のパトロンね♡」


 お嬢様──リセと名乗る美少女を取り囲んで、ハゲのおっさんと獣の亜人がくねくねキャイキャイしだした。


 そんな二人に煽てられて、リセはその右手で豊満な胸をドレスの上から押し当てて、これでもかと胸を反らす。


「そう! そして私こそ、この国一番────いえ、世界で一番の『美少女』! 神に祝福を受けし美しき少女は何をしても許される! それは絶対! いくら噂に聞こえる『辺境の魔女』と言えど、『美少女』の行いに背く事は許されないわ! そうでしょ! 美少女の言う事に間違いなど無いわ!」


 あ、あちゃあ……。

 なまじ顔が良くて家柄もあってチヤホヤされてたら、人間ってああも歪になるんだなぁ。

 ウチの『アレ』も大概だけど、このピンクいアホも結構な曲がった人生を送っちゃってまぁ。


「で、でも殺しちゃったら話も聞けないじゃないっ☆?」


「家ごと粉々に吹き飛ばしたから、遺体もへったくれも残ってないわよ♡」


「深い森に大きな更地が誕生しちゃったっ☆」


 ……うーむ。こいつらこんな面白い格好と存在しておきながら、その力量は結構なもんだなぁ。

 いくら未熟なオレの腕とはいえ、アイツに教わりながらかけたこの家の結界ごとオレをこうまで粉々にするとは。


 まぁ、しかし。

 オレも慣れたなぁ。


 こんな理不尽な目にあっても、痛みにのたうち回る事もショックを受ける事も無くなってしまった。


 染まっちゃったのかなぁ。嫌だなぁ。

 心が、感情が、弄ばれすぎて死んでしまったのかなぁ。


 ────身体は、絶対死なないのに。


「なっ☆!!」


「なぁにあれ♡!!」


 うぜぇなお前ら(おっさんども)。感嘆符の前に記号なんか付けんじゃねぇよ素人かな?


「ひっ、グロっ! とてもじゃないけど形容できない醜い肉の塊がぶくぶくと膨れ上がって人間の形になっていくわ!」


「お嬢様っ☆ 見ちゃダメよっ☆」


「あれはきっと呪いとか天罰的な何かの邪悪な現象ね♡」


 失礼な。

 これでもこの身体は、この力は、この世界の人間(おまえら)が唯一神と崇めるあの弱虫卑怯者クソ女神によって与えられた絶大なるチート能力(呪い)だぞ?

 

 焼かれても裂かれても潰されても溶かされても締め上げられても幾度何度と殴られようが突かれ貫かれようが、必ず正常で健常な姿・精神までに復元される『魂は己を忘れない(キープ・メモリー)』。


 それはどのような場所、どのような世界においても効力を失う事のない、オレを縛りつける制約。


 オレがこの世界で唯一振るえる、忌々しい力。


 ここから一歩も動かなかった魂を寄る辺に、オレの血と肉が集まりオレを形作る。


 くそったれ。

 望んじゃいないぞこんなこと。


 オレは静かに、そして穏やかに、死にたいのに。


「ああ、騒がしすぎるぞアホども。この家の主人は留守なんだ。だから今すぐに帰ってくれ。でないと────」


 オレは修復されつつあるボロボロの服の胸元を握りしめ、三人の珍妙な来客をぎろりと睨みつける。


「────オレが、ただオレだけが苦しいだけの────無駄な時間になっちまうだろうが」


 ああ、世界がドブ色に見えて仕方がない。


 恨むぜ本当に、麗しくも荘厳で、儚くも美しき臆病な女神よ。

 

 お前がしっかりしてりゃあ、オレがこうも死に続けるハメには────ならなかったのに。

次の更新は日中にはなんとか(予定は全て未定)

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