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異端力者の世界変革  作者: ぐりーなー
7/12

二章:再び(1)

小っちゃい子騒動から五日程経った、朝。

「雷斗様!」と、大きな声を出しながら当然の様に家に入ってくる少女は折羽千鶴。

いつもながら乱れのない黒いショートカットと紺色のセーラー服に、奇麗な碧い猫の様な目。相変わらず超絶美人で、超絶KYだ。

「なんでお前は鍵が掛かった部屋に普通に出入りするんだよ」

「合鍵を作るなど造作もない事ですよ!!」

褒めて下さいと言わんばかりに胸を張る千鶴に俺は警察に届けるのが正解か?

誰この子教育したの?

「って、三日連続で遅刻しますよ?準備しましょう?」

「どうしたら登校二時間前で遅刻することが出来るんだよ」

「私はここまで来るのに二時間半かかりました!!」

「その場合俺達は三十分遅刻してるんだが」

一時間もあれば着く距離を……。

「少し待っててくれ」

「はい!!」

千鶴は従順な犬の様に素直だ。部屋から出て俺の身支度を待つ。

「よし、行ってきます」

身支度を終え、一応部屋にそう告げて扉を施錠する。

「行きましょうか。今日も私が前を「まて、俺が行く」」

「な、何故……私では不満ですか……」

「二時間半歩かされるからな!!」


「雷斗君!!」


……聞き間違えだ、良し。

「行こう、千鶴」

「はい」

そうでなくともこれは幻聴だ。だから気にせず俺は学校へ足を進める。

「なんで無視するの?」

「……」

「ねえ」

……。

「ねえねえねーねー。あ!わかった!私が可愛すぎて照れてる!?」

「は?虫唾が走る」

「辛辣!!おはよー」

「……おはよ」

元気だが鬱陶しい女の子。俺はわざと嫌な顔を見せつけ渋々挨拶を返した。それでも笑顔を絶やさないこの女、メンタルだけは凄いと思う。

余計なものに懐かれてしまったものだ。

この女は小さい子事件でのあの女の子だ。水瀬 美衣。あれ以来俺を見つけてはウザ絡みをし、愉悦に浸っている。

勘弁してほしい。

「お、おい……」

水瀬は紛れもなく美少女だ。水色のストレート髪、整った前髪に被る輝く黄金色のぱっちりとした瞳。色白で均整で、出るとこは出すぎて、引っ込むところは引っ込むナイスボディは正しくモデルの様で男を魅了しない訳がない。小さい子の言った通り絵になる奴だと思う。

「くっつくなよ」

「照れてる!可愛い!」

そんな彼女に豊満なお胸様を押し付けられれば俺だって照れる。

「かわいいのはお前であって俺じゃねえ」

「私がかわいいのは当然だよ!」

何こいつ、逆に整形すればいいのに。

「おはよう!千鶴ちゃん!」

「……え、ええ、水瀬さん」

千鶴は水瀬のハイテンションに動揺しながらも挨拶を返した。そして何故か俺の袖をチョンと引っ張る。

「ふふ、今日も可愛いね?」

確かに可愛い。

「そ、そうですか……?」

顔を染め照れる千鶴は水瀬と違い純粋だ。

「うん!素敵!!」

どれだけ突き放してもぐいぐい来る水瀬をもう引き離す気力はない。しかし胸を押し付けられるのは不健全だと思いますので、それだけはしっかりと引っぺがしました。


「じゃあワタシはこっちだから!!」


「おー」

他愛ない会話をしていれば学校にはあっという間に着く。

水瀬は手を振りながら隣の建物へと入っていった。

あいつは凄いと感心する、と共に分からない。

時折鬱陶しいけど、元気で盛り上げ上手で凄いモテるだろうに、なんでわざわざ俺に会いに来るんだ?

「どうしたんですか?水瀬さんのお尻ばかり追って」

「そ、そんなまじまじ見てた!?俺!!」。

「い、いえ、物理的にではなく……その、言葉の言い回しと言いますか……」

俺が変態になった瞬間だった。

「あ、ああね。いや、そりゃ人気出るよなぁって」

「水瀬さんは人を元気にさせる天才ですよね」

「まあ、度が過ぎるけど、人には迷惑かけないしな、俺以外」

「ふふ、それだけ雷斗様が凄いって事ですよ?」

「そうかぁ?一種の嫌がらせだろあれ」

「そうですよ。あ、そう言えば、今日は講演会の日でしたね?」

「あ、もうそんな時期か。千鶴は見に行くのか?」

一年に一度の良くわからん、講演会。その講演会で将来が定まる人も、代表への決意もする人がいるみたいだが、俺の心にはてんで響かなかった記憶がある。が、周りにとっては重要なありがたーいお話なのだそう。

「悩んでいます。今日のゲストは結構な人みたいですし……」

「ふーん」

「雷斗様は?」

「まあ、いつも通りスマホで鑑賞かな」

クラスメイトの奴らも講演会の模様をスマホの中継で見るみたいだな。まあ、足運んだって特に意味はないよな。近くにホールがあるからと言って。

「分かりました。では雷斗様また午後に」

「おう」

千鶴は俺のクラスまで付き添いそこで別れた。ここから一組は相当遠いのだが、優しさか。

俺はクラスメイトと挨拶だけ交わし、自分の席に着く。そしてスマホを取り出し先ほど言っていた中継を繋いだ。

まだ準備中か……。空席も多いな。

予定開演時刻は一時間後とテロップが入る、そして、


本日の講演者……『天王寺 曜子』


!?


続き様に出るテロップを見るや否や俺は勢いよく立ち上がってしまった。流石に驚きを隠せない。


……師匠?


俺は足早に講演のホールへ向かう。

なんで?なんでだ?何で今に限ってあの人だ。疑問が消えない。視野は狭まりそれしか考えられなかった。

「雷斗様」

このタイミング、髪を乱し肩で息をする程慌てる千鶴の顔を見るに恐らく考えは一緒。

「千鶴……」

「私も行きます」

こいつは本当に……。

「ああ。行こうか」

尚リンゴジュース。

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