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異端力者の世界変革  作者: ぐりーなー
1/12

一章:誘い(1)

書き直し!!

「あ、あの!私と……」

「え、あ、はい」

 人通りの少ない閑散とした屋上付近の階段廊下で美少女のもじもじと恥じらう姿が俺の目に映る。

「私と……」

 ちらちらと揺れる毛先の揃った黒い前髪の奥から碧く済んだ猫の様に鋭く大きい瞳が上目遣いでこちらを見ている。

「私と!!」

唐突に意を決して大きな声を出す少女に俺は少しビビってしまう。

「私を……」

また少し弱く。

「私を!」

強く。

抑揚が凄い。

「はい」


「下僕にしてください!」


そしてついに奇麗なお辞儀と共にとんでもない発言が飛んできた。

ん?……どこのどMの人?いや俺の耳が急に老いたのか?

「下僕?」

「あ、す、すみません、急に……」

少女はハッとして頬を赤く染めるがその言葉を撤回するつもりは無いようだ。

マジか。

「いや、いいよ、いや良くないけど。つまりどういう事?」


「私とパートナーになって欲しいんです!」


ギュッと体を縮め込めて声を振り絞って出した少女。どれほど本気なのかがよく伝わってくる。

 ……あーはいはい、なるほどね。理解した。

「私は昔から……」

 でも、だからと言って……。

「ごめん、無理」

少女の言葉を遮り淡々とただそう言葉を返す。

冷淡が温情。俺はそう判断した。

「え?」

少女の悲しそうな顔にちょっと胸が痛むが、ここで去らないと。

「それじゃあ行くよ」

これ以上は危険だ。

「ま、待ってください」

少女は咄嗟に袖を掴み背を向けた俺を止めた。

可愛いかよ。

「雷斗様は代表になるべきお方なんですよ。違いますか?」

「俺に聞かれても…」

「いえ!なるべきです!」

「自分にそんな価値はない」


っ!?


「その言葉は貴方様であっても許せません……」


……殺気?

少女は冷ややかな目をこちらへと向ける。背筋が凍りそうだ。

本気で怒りを見せている様だが、俺に何故その感情をぶつけているのか、分かりかねる。

いや。この子が言っている事は全て可笑しいし、意味が分からない……やめだ、テンションが下がる。ここを去ろう。

「もう行くぞ」

「まだお話の途中です!」

「俺は生徒会戦挙に出るつもりもパートナーになるつもりもない」

「貴方様が……何故……」

 彼女は全身の力を失ったようにズルッと膝から頽れた。正に脱帽と言う感じだろう。

「……」

 二度目はない。俺は体の向きを戻して、自分の教室へ足を進めた。

少女の質問に答えるならば


『俺にその権利はない』






あー遠い。

 教室のドアが自動で開くと涼しい風がフワッと俺を迎え入れた。クラスメイトとおはようの挨拶を交わし、自分の席に着いた。

「おはようございます」

 ここで隣の子とまた挨拶を交わす。

「ああおはよ」

すっごい聞き覚えがある。

「雷斗様」

 見覚えも凄いわ。さっきだもん。てか先に戻ったよね俺。

「なんで??」

「おはようございます」

「うん、違うよね?クラスどこ?」

「一組です」

 まさかの最強からの勧誘だったのか。流石に驚きを隠せない。

「ランクは?」

「SSを一応……」

最強の称号を与えられたクラスの中でも最強と称えられる化け物みたいな能力の持ち主……何故俺だ。

無能力最底辺を歩いている俺が誘われる理由の一つも分からない。

「先程の会話の続きしましょう」

 急にめっちゃぐいぐい来る。

「嫌だよ」

「では独り言を」

 メンタルカチカチかよ。

「私は折羽 千鶴(おりばね ちづる)……十七歳です」

 ……独り言、なんだよな?

「雷斗様とパートナーになるために五年間生きてきました」

 こっち向いて話しすぎだろ。嫌でも耳に入るわ。

「私はストーカーをして更に雷斗様の優しさに触れました」

ん?聞き間違いを希望して良いか?

「雷斗様の凄さを語るには一日ではたりませんがまあ……語りましょう」

こいつは何を言っとるんだ。

「雷斗様は私の尊敬ランキングで一位なんですよね」

まてまて何その怪しいランキング。

「雷斗様は自らの考えを否定しますが、私は肯定します。それを正しいと、その生き方が幸せを呼び込むと、誰になんと言われようが私はそう考えます」

……違う、甘いんだ。誰一人として救えないんだ。

「それは雷斗様が一人だったからです」

 なんで会話してんだよ。

「そこで!!どうですか?私」

グイっと俺に顔を近づけ立候補する少女。

独り言ってなんだ。こいつはなんだ。

「戦いたくないのならば私が全てを屠ります。苦しいのならば何をしてでも雷斗様を支えましょう」

なんなんだ、なんで。

「なんでそこまで……」

ふと気づくと少女の方を向き口から出ていた言葉。

「そりゃあ私の一番大好きな人ですから!」

そんな怪訝な面持ちの俺に対して少女は満面の笑みでそう答えた。

「俺の考えは人を殺すよ、間違ってる」

「いいえ、貴方は人を世界を救います」

少女の一転の曇りもない眼も、今までの仕草も見ていれば疑う気など一切消え失せる。

正直心躍る勧誘だ。でも、それでも自分の中の価値観という障壁は煩わしくも瓦解を許さない。

「誰とでも、何とでも平等な態度で、見方で、味方で……。悪だから、善だから?人にはどうあれ理由がある。そんなことを関係なしに救う、貴方様が素敵ですよ?」

「……無理だ」

結論、それが答えだ。

「いいえ、出来ます……」

それでも少女は真剣な眼差しで意固地にそう言い切る。

「そろそろ授業始まるぞ」

「構いません」

「隣の席の人の気持ち!!」

「ふふ。ほら、人の気持ちを(おもんぱか)れる……。優しい人ですね」

そう言うとやっと席を立ちにっこりと微笑む少女。

「みんなやってる、当然の事だ」

「いいえ、誰もは出来ません、皆さま結局行きつくところ自己中ですからね。こういう小さなところで本当の気遣いが出来る人は優しいのですよ」

「過大評価だ。さ、行った行った」

俺は少女の背中を押し、教室から追い出す。

「私は諦めません!雷斗様は間違ってなどいない!あなた様を肯定します!!」

 釘を指すように捨て台詞を吐いてやっと教室から去っていった。

「ようし、授業はじめっぞー」

そしてそれと入れ違いで先生は入って来た。切り替えよう。

そう思ってたのに。

なんで今日に限ってこの授業なんだよ……。


『生徒会戦挙 パートナー制度とは?」


 デジタル板書に先生は大きな字でそう題をつけた。

「はい、天田、生徒会戦挙とは?」

「生徒会戦挙は校内で一年に一度開かれる生徒会八名を決める能力者の大会です。能力を使った勝負をトーナメント方式で行い、優勝者から生徒会長、準優勝者、副会長、書記、会計、と役職が付いきます」

凄い簡単に言えば最強の能力者を決める大会。将来随分優遇されるんだよなぁ。代表への切符もあるし。

ま、俺には関係のない事だけど。

「流石は知識だけある男だ」

 地味にディスられた?

「よし、座っちゃ駄目だぞ」

 え?座っていいよの流れじゃないの?

「パートナー制度とは何でしょう」

クイズ番組でやれや。

「代表が決めた、相棒制度ですね。一人だと出来ないことも二人だと可能だよ、支え合おうよ、的な適当な意味合いから作られた制度で、代表者になりたいものは相棒と共に挑むこと。生徒会戦挙やその他、争いごとでも同様」

「はい、ありがとう、まあ、天田だししょうがないよね、座っていいよ」

しょうがないってなに。

そして授業は嫌でも進んでいった。俺はしっかり目を取り発言をし優等生を演じきれただろうか。

能力のない者が職に就くには学力と媚び諂う力は欠かせない。

「はい、今日はここまで、各自自習するように」

 今日は昼までの授業だ、さて帰ろう、とっとと帰ろう。ストーカーにばれる前に帰……「お帰りですか?」

 早えな。

「まあな」

「っと、普通に用事があるので行きますね!ではまた明日!お元気で!」

「え、うん」

何で来た。

まあ、のんびり帰るか……。

敷地を十五分程歩けばやっと学校の門。そこからビル&商業地帯を歩いて、人ごみに流され、大分家へと近づいてきた。

 学校から離れると先程の活気は閑散へと変わる。まあ、学校が中心の都市だ、そこに人が集まるのは当然だよな。

「おお、優等生君。ちょっと顔貸してくれる?」

 そして人がいない所に変な奴が現れるのも自然の摂理だ。

 身長百八十センチの大柄な外国の方を両サイドに添えて真ん中に居座る百四十センチの小人。

……捕縛されたエイリアン?

「何か用ですか?」

「あ゛あ゛?」

普通に尋ねただけなのにくいッとサングラスを持ち上げて怒の混じった音を漏らす。序にガンつけてるのか?これ。

ちっさ、スケールちっさ。

「お前……」

「はい?」

「俺が誰だか分かるかぁ?」

いや、ふんぞり返るのやめて。スケールが赤ちゃん。

「いえ、存じ上げません」

「なんだっ!……そうかぁ」

高圧的な態度をとった方思えば、急にシュンと落ち込む様子を見せる小っちゃい子。仕草が園児。

「まあ、いい、ちょっと来い」

「……」

「何黙ってんだよ?お前無能力だろうが、能力者のいう事は……?」

「……絶対です」

「よくわかってるじゃねえか」

 世の中そう言う事だ。

おっと、これはなんだ。隊列を崩すことなく背中を向けて歩く三人だが、小っちゃい子を挟んで巨体同士が気付かれないように手を繋ぎ合ってる。

どういう関係なんだこれ。

異様な光景を目に焼き付け、後ろを付いて行くと小っちゃいのが手をスッと上げ立ち止まった。

小学生の授業参観やん。

到着したらしい、そこは人の目につかない薄暗い路地裏だ。

小っちゃい子は俺の方を向き顔を見上げる。外国の方はパッと手を離し顔を赤らめる。

そして、小っちゃい子の方は地面に膝をつけ、腕をつけ、最終的に頭を地面に擦り付けた。


DOGEZA


……は?

理解できる所が一つとしてなかった。

俺は目を閉じて一度深呼吸、心を落ち着かせる。そして息を全て吐き切った所でもう一度目を開くと土下座する園児に顔を赤らめる男二人。

カオスだった。


「すいませんんんんん、私達に力を貸してくれないでしょうかぁあ!!!」


「……は?」

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