第1話
7月も終わりカリキュラム通りならほぼ全国全ての小学生~大学生までが夏休みに入ったであろう時期の出来事だった。
「おにぃちゃん、ゲームしよ!」
いつもの様に部屋で学校の課題をやっているとノックもせずに妹の日和が飛び込んで来た。良く視ると日和の手には読み込み用のバーコードカードが二枚握られている。
どうやら一緒にゲームをしたくて買って来た様だ。
「ゲームをするのはいいぞ、兄ちゃんも嫌いじゃないからなら。ただその前にお前に言う事がある」
俺が日和をお前と呼ぶ時はだいたい怒るときだとわかっているのだろう妹はうぇっ、とイヤそうな顔をして逃げようとしたので捕まえた。
「何度言ったらお前は廊下や階段を走ったり、ノックをしないの直してくれるかのな?」
「はい、大変失礼しました。陳謝!」と言いながら光と見紛うほどの速さで土下座した。どこで覚えたし(´・ω・`; )
それを見て俺はふぅ、と一つため息を付いた。
「全く、日和ももう中学生なんだからもう少s」
「わかった、お兄ちゃんわかったからやってくれるのね?」
「はぁ、いいよ兄ちゃんそんなに忙しくないから一緒にやるよ。で、それはどんなゲームなんだ?」
「ぃやったぁぁぁ!お兄ちゃんなら一緒にやってくれると信じてたZ☆E」調子のいい妹である、、、
「それでね、これは|Secreto,Et Clave,Ordis Terrarumって言うMMORPGだよ!名前長いから皆略してSECOTとかセクオトとか呼んでる」
MMORPGか、日和はまた魔法使い系だろうし俺は前衛かな?
「オンラインのRPGか兄ちゃんは戦士とか騎士とかの前衛やればいいの?日和は昔からゲームとかで魔法使い大好きだし今回もそうなんだろ?後、そのゲームいくらしたんだ?」
「うん。日和は今回も魔法使いだよ、でも今回はお兄ちゃんも自由に好きな役職でいいよ。後ゲームは5000円だけどなんで?」
一つ5000円か、、、俺は断腸の思いで財布から諭吉さんを取り出し顔に出ない様に「いくら貧乏学生だからって妹にゲーム買わせるほど酷くないよ」そう言いながら日和に渡した。
「え!?別にいいのに、それに私のは宣伝用に事務所から貰ったやつだし払うにしても5000円でいいよ?お兄ちゃんに買って来たのだってプライベートの時の虫除けだから」
日和はアイドルで、そこそこ人気の三人グループの一人だ。たぶんゲームの宣伝とグループの宣伝両方に利益があってアイドル事務所とゲーム会社が組んだのだろう、それでプライベートで遊ぶ時にマナーの悪いファンやナンパから守ってもらうために日和は俺の分まで買ってきたのだろう。・・・・それで虫除けってもっと言い方あるだろうに
「まぁ、それでも兄ちゃんと遊びたくてわざわざ買って来てくれたんだろ?それなら兄ちゃんからの感謝と可愛い妹への小遣いだ。それにそろそろ夏のライブとかで出かける事もあるんだろ?なら買い物で困らない様に少し多めに持ってて損はないんじゃないか?」
そう言うと日和は笑顔になり「じゃあ、お兄ちゃんのお土産も買って来なきゃね」といって諭吉を自分の財布にしまった。
「あっ、そうだお兄ちゃんゲーム始めると最初の国が自由に選べるらしいけど最初は遊楽国テレジアっての選んでね。私たちのスタートがそこだから。それでキャラクター作成が終わったら町の中心にある噴水公園に出るみたいだからそこで待ってて、先に終わったら私もそこで待ってるから」
さっそく俺も自分のVRマシンにインストールしてキャラ作にかかろうとし、ロード画面が切り替わりったら薄暗く光りどこまでも四角く区切られた地面のいかにもバーチャルな空間に出た。そこには一人の女性が立っていて俺の方へ来るなり話しかけてきた。
「ようこそSECOTの世界へ。まずはゲームのご購入ありがとうございます。ここでは私サポートAIのNAVE-02がキャラクター作成、操作や遊び方のチュートリアルをさせて頂きます。先ずはプレイヤー様のキャラクター及びキャラクター名の決定からおこないます」