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翼の証明Ⅱ ~黄昏の星~  作者: ニンジン
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■第15話:不死の集団 ~ nightmare party ~

一方、塔の門から広場に出ることができたトマスとレイア、ジルとルクセンの4人は、広場の演説台にリーンがいるのを見つけた。

リーンは広場の中を逃げ惑っているアカデメシア研究員達に対して何やら大声で怒鳴っているようだ。

リーン 「おおい!お前達、さっきの爆発音は地下牢の奴らの仕業だ。この隙に逃げようとしているぞ!奴らを捕まえに塔の中へ戻るんだ!」

どうやら逃げ出している研究員達を呼び戻そうとしている。その様子に気がついた先頭のトマスが慌てて身を隠そうとするが、リーンに見つかってしまった。

リーン 「・・・ん?ああっ!あいつらあんなところにいやがる!見ろっ!」 リーンはこちらを見るやいなや大声で叫んだ。

トマス 「面倒なことになったな。(俺1人なら飛んで逃げられそうだが、このメンバーじゃうまく全員逃げられないぞ・・・。)」

トマスは逃げ道を探しながら、足の悪いレイアと、ルクセンを背負っているジルを気遣う。

リーン 「なぜ逃げようとする!アルキス様はお前達とひとつになろうとしているのだぞ。」

ジル 「アンタら狂信者に捕まって殺されるのは御免だわ。」 ジルがルクセンを背中から降ろして一歩前に出て反論した。

トマス 「おいおい、こっちは病人がいるんだ。さっさと逃げるぞ!」 トマスが演説台と距離があるうちにどうにか広場を抜けようとしていた。

リーン 「黒き特質を受け継ぐ者どもを逃がしてはならん!お前達、あいつらを捕まえろ!」 リーンが逃げ出していた研究員に指図をする。

リーンはどうやら普通の研究員よりも高い地位についているようで、指示を聞いた何人かの研究員は逃げ出さずにトマス達を捕まえようと近づいてきた。

トマス 「おい、お前達、近づくと爆弾を投げるぞ!地下の扉を吹き飛ばしたものだ。人間に当たったら無事では済まないからな。」

本当はトマスは爆弾を持っていなかったが、ハッタリをかますのには十分であったようで、研究員は距離を保つどころか、むしろ演説台のところまで戻ってきてしまい、そこから全くトマス達に近づこうとしなかった。

リーン 「こら!お前達、言うことを聞くんだ!」 

研究員達 「それならリーンさんが行けよ。」「そうだそうだ。」「俺たちは、アルキス様に従っていれば死なない体が貰えるってんで協力してきたんだ。」「その前に爆弾で死んではたまらないからな。」 研究員達はリーンに向かって抗議しだした。

リーン 「な、何を・・・。(くっ!言うことをきかないなんて・・・。こんな奴らには勿体ないが、これを使うか・・・。)」

リーンは袖から袋を取り出して袋の中に手を入れると、何かを掴んで周囲にふりまいた。すると、リーンの近くにいた者達の様子に異変が起きたのだった。

研究員達 「これは紫色の粉?」「ううう。力が湧き出てくる。」「はあはあ・・・。」「うぐぐ・・・。」 

リーン 「これは純度の高い魔の胞子だ。吸い込むと好戦的になり、痛みも感じなくなる。こんなところで使うことになるとは思わなかったが、みすみす逃げられるよりましだ。」 

研究員達 「ううう苦しい。もっと胞子を。」

リーン 「魔の胞子は私が沢山持っている。黒き特質を捕まえた者に好きなだけやろう。」

研究員達 「黒き特質・・・。」

正気を失った研究員達が走ってトマス達に近づいてくる。

ジル 「ここは任せて!ていっ!」

ジルは近づいてきた研究員を思いきり殴った。しかし、殴られた研究員は痛みを感じていないのか、そのままジルの腕を掴んで投げようとした。

ジル 「なによ、 えっ?わっ!」

ジルは抵抗したものの軽々と投げられてしまった。ガオン族であるジルは女性とはいえかなり体が大きかったが、ジルよりも体の小さな研究員に簡単に遠くまで投げられてしまった。魔の胞子を吸ったことで、どうやら力まで強くなっているようである。ジルは砂煙とともにゴロゴロと地面に転がった。

今度は別の研究員がレイアに向かって襲いかかる。トマスがすんでのところでレイアを抱えて空に飛び上がった。

リーン 「はん!どうやら爆弾なんぞ持っていないようだな!お前達、そこで気絶しているウィング族を先に殺ってしまえ!」

研究員達はゆっくりと意識の無いルクセンに近づいていく。

そしてついに手の届く距離になるとルクセンをめがけて剣が振り下ろされた。

次の瞬間-。『何か』が素早く研究員達の目の前を横切った。

研究員 「ぐああぁ!」 

剣を振り下ろそうとした研究員の右腕が宙に舞った。

リーン 「きょ、曲刀だと! ?」 

ジル 「こんなこともあろうかと門の近くに隠しておいたのよ。」

少し離れた場所に曲刀を数本腰に提げたジルが立っていた。得意の曲刀投げで研究員の腕を切り飛ばしたのだ。

ジル 「トマス、今のうちにレイアを連れて逃げて!ルクセンは私がなんとかするわ!」 ジルがそう叫んだときだった。

右腕を切り飛ばされた研究員がゆっくりと動き、剣を握られたままの状態で地面に落ちている自分の右腕を反対側の手で拾った。そしてジルに向かってその腕ごと振り下ろしてきた。ジルはすんでのところで避けたが、男は表情もなく自分の腕を振り回し続けている。それはぞっとするような光景であった。

ジル 「痛くないの!?」 

研究員 「よくも・・・。」

ジル 「そう、やっぱり痛みも感じないのね。遠慮はいらないってわけね。」

トマスはレイアを抱えたまま飛び上がってその様子を見ていた。 

トマス 「ジル、とにかくそいつらから離れるんだ。このままじゃまずい!」 

ジル 「でもルクセンが!」 ルクセンをかばうジルは自由に闘うこともできず、研究員達にじりじりと囲まれていき、ついに退路がなくなってしまった。

ジル (まずいわ。これだけの数に囲まれては・・・。)

リーン 「いいぞ!やれっ!」

その時である-。

声 「撃てー!」

ガアン!ガアン!ガアン!銃声とともにジルを囲んでいた研究員達が次々に膝をつき地面に倒れていった。

トマス 「この音はもしかして!?アポロか!」 真っ先にトマスが叫んだ。

アポロ 「トマス、無事か?待たせたな!どうやら想定以上にひどいことになっているようだな。」

アポロとともに複数のリース族が銃を構えて広場に来ていた。そこにはゴンとウルの姿もある。リース族達はジルを襲う研究員達に向かって銃を撃ち続けた。

ゴン 「この弾はガオン族用だったんだが、まさかガオン族を助けるために使うことになるとはな。」

リース族達はさらに銃撃を続けた。研究員達の動きが完全に止まったところで銃声が止み、あたりは一旦静かになった。ジルは突然の援護射撃に目を白黒させていたが、目の前の研究員達が倒れていくのを見て、どうやら突然やってきたリース族達が自分を助けてくれているのだということを理解した。

ジル (た、助かったわ・・・。なんでリース族達が助けてくれたのかわからないけど、とりあえず、研究員達をやっつけたようね・・・。) ジルは倒れている研究員達を見ながらほっと一息ついた。

しかし・・・。再びゆっくりと、研究員達は起き上がってきたのだった。それを見た団長代理のゴンが驚いて叫んだ。

ゴン 「アポロ!こいつら弾を体に受けても平気なようだぞ!どうなってやがる?」 

アポロ 「これこそがアカデメシアが悪さをしている証拠のようだな。アカデメシアには、吸い込むと痛みも感じない薬が存在するらしいんだ。」

ゴン 「アポロ、お前の言うことを聞くべきだったな。倒れているウィング族や、ガオン族とはいえ女を囲んで襲おうなんて、やっぱりアカデメシアは最低だぜ。本当は俺も人間を撃つのは好きじゃねえが、痛みも感じねえ狂人どもってことなら話は別だ!ここで成仏させてやるしかない。」 

塔の前の広場は狂った研究員達と銃を持ったリース族で一杯になった。狂人達も、もとは普通の人間であっただろうが、銃に撃たれ続けた体はボロボロで、もはや気味の悪い不死の集団となっていた。しだいに、無数の銃弾を浴びた研究員達は少しずつ起き上がることができなくなっていた。

演説台の陰からその様子を見ていたリーンはイライラしだした。

リーン (むむむ、小癪な・・・。あの銃撃にはさすがに近づけないし、こちら側は風下になっていて。あいつらに魔の胞子を嗅がすこともできやしない。)

リーンは演説台の土台の部分に手をかけ、土台の表面の板を外し、その中に手を入れた。

リーン 「念のためこいつで・・・。いや、しかし・・・。」

ためらいながらもリーンが取り出したものは、大きな『黒い箱』であった。

リーン (こいつを使ってしまったら最後、私は死神に魅入られ、普通の人間は戻れないかもしれない・・・。だが、ここで奴らに負けるようなことがあれば、アカデメシアでの私の地位も、路地裏での安息も、どちらも無いだろう・・・。仕方ない・・・。)

複雑な思いを抱えながら、リーンは黒い箱を開けたのだった。

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