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いつもと変わらない日常?(ドラマCD化)

俺の名前は仲村拓実。社会人1年目のただのサラリーマン。

毎朝の満員電車、時間いっぱいに仕事して、帰って、飯食って、風呂入って、寝るだけのつまんない生活にうんざりしていた。

これはある日、仮病で早退した日の帰宅の電車での出来事である。


電車のドアが開き、乗車する。


「閉まるドアにご注意ください。ドアが閉まります」


お、端の席空いてる、ラッキー。などと内心はしゃいでいた自分を後から思い出すと恥ずかしくなるが、無理もない。電車で座るなんてここ最近ではあり得なかったからだ。


電車のドアが閉まり、走り始める。


なんとなく早退してしまったがこのまま帰ったところでやることなんてない。どうせ飯の時間までだらだらゲームしたりして過ごすだけ、あとはいつもと変わらない日常を過ごすだけ。


「あるよな~。なんでか知らないけど、自分の隣にだけ誰も座ってないって事」


「あー俺もたまにあるけど、なんだか悲しくなるやつな」


大学生くらいの男2人が話している内容に、確かになと共感したが、辺りを見渡すと俺の隣にだけ誰も座っていないことに気が付いた。もしかしてこの2人が話してるのって...頼む、次の駅で誰か隣に座ってくれ~


「次は〇〇に止まります。お出口右側です」


電車が止まり、ドアが開くと同時に乗客が乗降する。


「それでさ~うちの親がさ~」


「え~まじで~?」


「それは嫌だねー」


「あ、ここちょうど3人座れそうじゃん」


どうぞどうぞ。むしろ座ってください、お願いします。


「男の人...」


ん? なんだか1人に汚いものを見るような眼差しで見られてる気がするのだが...気のせいか。


「そういや奈央、男の人苦手だっけ」


「じゃあ奈央はうちらの間に座りな~うちがこっち座るから、沙紀はそっちね~」


「おっけ~」


「ありがと」


汚物みたいに扱われた俺の精神的ダメージ凄かったけど! もうライフはゼロだよ。


「わぁ~沙紀の隣の赤ちゃんかわいい」


「ホントだ~」


「ちょっと触らせてもらってもいいですか? ありがとうございます」


「ほっぺめっちゃぷにぷに~」


う~ん。ギャルっぽい見た目どおり騒がしい子たちだなぁ、正直こういうのには関わりたくないから目でも瞑っておくか...


「ぐーーーー」


「うわっ!」


「莉乃、どうしたの急に大きな声出して」


「肩...」


「肩? あ、まじか...」


「ねぇちょっと! お兄さん起きてくんないかな?」


ん? 誰だよ俺のこと揺すってくるのは~今から課長の頭ハリセンでぶっ叩くところなんだぞ


「ってうわっ! すみません」


「あ、やっと起きた」


「ちょっと、気をつけてよね」


「すみません」


やってしまったー。しかもよだれまで垂らしちゃってるし。


「おい、今の見たか?」


「見た見た。慌ててたな」


は、恥ずかしい。大学生2人組にも見られてたー。寝ないように音楽でも聴いとくか。


どこからか音楽が流れている。


「ねぇ、この人、音漏れすごいんだけど」


「ホントだ。こっちまで聞こえるよ。その人の耳どうかしてるんじゃないかな」


「奈央、それは言い過ぎ! ウケる」


「次は〇〇に止まります。お出口左側です」


電車が止まりドアが開く音で目を覚ました俺。

急にたくさん乗ってきたな。あのおばあさん立ってるの辛そうだな。代わってあげよう。


「あの、すみません。良かったらここどうぞ」


「あら、親切にどうも。触らせてもらうわね」


良い事をすると気持ちがいいな。ただ...女子高生の前に立つっていうのはなんか嫌だなぁ


「意外と良いとこあるじゃん、この人」


「そうだね」


お褒めに預かり光栄です。ただ、おばあさんに席を譲ったのは...真横であなた達の罵声に耐えられなかったからなんです。


「単にうちらの隣に座ってる事に耐えられなくなっただけでしょ」


「確かにそうかも」


ば、バレてる~~


立ってると目のやり場に困るなぁ、広告でも見てるか。


「電車乗ってる時ってどこ見てればいいかわからなくならないか?」


「そうか? 俺は貼ってある広告見てるけど」


「あ~でも、広告見てると他の人から広告見てるのわかるから気づいた時には、広告見るのやめてスマホ見るようにしてる」


俺はそっとポケットからスマホを取り出した。


「なぁ、スマホってどう持ってる?」


「俺は小指でスマホの下支えて持ってるけど、お前は?」


「俺は電車の中だと盗撮してるって思われたくないから、カメラのとこ押さえてもらってかな」


なるほどなるほど。この大学生2人の話は勉強になるなぁ


「それよりさー、この人さっきからずっと俺らのこと見てない?」


「いやいや気のせいじゃないのか?」


やばいやばい、話を聞くのに夢中になってた。知らないふり知らないふり。


「なんか、汗臭くない?」


「えーそんなこと言って~沙紀なんじゃないの?」


「うちじゃないしー」


「前見て見てよ、前」


「ホントだ、この人脇汗かいてる」


おーい、聞こえてますよ、お三方。もう手の震えが止まりません。


「カシャッ!」


やばい、手の震えでスマホ誤作動でカメラ押しちゃった。


「なに今の音、盗撮?」


「え? まじ?」


「うそ、盗撮?」


「ちょっとあんた、スマホ見せなさいよ」


「ち、ちが、誤作動で」


「いいから見せろって」


どうしよう。どうしよう。もう少しで降りる駅に着く。そしたら走って逃げる。これしかない。


「次は〇〇に止まります。お出口右側です」


出口逆だったー。急いで右側に移動しないと。


「すみません! 降ります! 通してください! あっ!」


「閉まるドアにご注意ください。ドアが閉まります」


「逃さねぇぞ、ほらおとなしくスマホ見せろ!」


「ち、違うんだー」


「ちょっといいですか?」


「なに、お兄さん達? 今取り込み中なんだけど」


「多分その人盗撮してませんよ」


「いやでもシャッターの音したじゃん!」


「その人、俺らの話ちょいちょい聞いてて、スマホのカメラのとこ指で押さえてたから、たぶんなにも写って写ってないよ」


「ちょっとスマホ貸してみ」


「ど、どうぞ」


「ほんとだなにも写ってない」


「もう、紛らわしいことすんなよな」


「次は〇〇に止まります。お出口左側です」


「ほら、奈央行くよー」


「あ、待ってー」


「俺たちも行くぞ」


「お兄さん、じゃあな。仕事頑張れよー」


「うん。ありがとう。助かったよ」


「閉まるドアにご注意ください。ドアが閉まります」


ふぅ疲れた。全く散々な目にあった。

良い子たちだったなぁ。明日からは仕事、頑張るか!


「あっ! 降りるの忘れてたーー」




読んでいただきありがとうございました。

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