七人の天使
※ この世界の神話です。読まなくても大丈夫だと思います。
ある世界にて、大地を魔物達が蹂躙していた時代、人々は怯えながら暮らしていた。
その世界に秩序は無く、混沌のみが人々を包み込んでいた。
いつ魔物に食われるか分からない世界で人々は生きなくてはならない。
深い絶望と苦しみに包まれながら生き長らえる人々がそこにいた。
そんな人々を七人の天使達が憐れんだ。
彼らは天界に住まう神々に希い、人々を救う許しを得ると、それぞれが定められた世界の各地に降り立ち、その場所で生きる人々に恵みを与えた。
第一の天使は豊穣。北の果てにて、枯れた大地で怯える人々に富を約束した。
第二の天使は信頼。北西の地にて、混沌の中でいがみ合う人々に絆を促した。
第三の天使は勇敢。東の果てにて、命を蝕む影に震える人々に戦う勇気を与えた。
第四の天使は希望。中央の地にて、絶望に打ちひしがれる人々に奇跡を約束した。
第五の天使は愛情。西の果てにて、色のない世界に佇む人々に愛を説いた。
第六の天使は英知。南東の地にて、平穏にただ身を任せる人々に知恵を与えた。
第七の天使は真理。南の果てにて、暗闇の中を躊躇いなく歩く人々に真実を教えた。
彼らは人々の前に黄金の果実を差しだすと、それぞれの言葉で告げた。
「これは黄金の果実。黄金の果実が生み出すものは聖域である」
天使達が黄金の果実を地面に落とすと、地面は割れ、巨大な樹ユグドラシルが生えた。
「人々が樹を守り続ける限り、魔物達は人々に触れられないだろう。
ただし、油断してはならない。形のない悪意は生きとし生ける者の心に宿り、知らない内にこの樹の命である果実をもぎ取るだろう。
その時が、平穏の終わりとなる」
天使の言葉に人々は恐れ慄いた。
しかし、天使は穏やかな眼差しで人々を包んだ。
「絶望する必要はない。我々は武器を授ける。その武器ならば、果実はきっと守られるだろう。ただし、忘れるな。悪意は気付かない内に、人々の傍に忍び寄るものだ」
天使は己の羽根を人々に与えると、躊躇いもなく消えてしまった。
後に残ったのは天使の羽根とユグドラシル。そして、ユグドラシルの根元には石のような卵が生まれた。
それが人々を守り揺らす聖域の始まりであり、七つの国の始まりでもあった。