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出会い的なお話

【田崎光の場合】


順調に女子との距離を置いていた俺にとって、予想外の出来事が起きた。

いくら家柄が立派とはいえ、今どき若い年齢から婚約者を決められるなんて考えもしなかった。しかし、俺の女子との距離の置き方を見かねた両親(というか9割母親)が俺に婚約者を用意してしまった。

まあ、婚約とは言えまだ正式なものではないから、俺は何とか相手から断られるように仕向けるしかなかった。

なぜ相手から断られるようにしなければならないかと言うと、相手は石油関連企業の社長の娘で、彼女の祖父である会長は業界団体で作られる連盟の会長も務める人物のため、必然的に俺からは断ることができない状況に追い込まれていた。


婚約者の藤宮椿との顔合わせは、俺の自宅で行われることになった。

俺は自室へ案内することを想定して、壁には俺が今ハマっているイラストレーターの美少女のポスターを貼り、本棚には漫画を敷き詰め、見える場所にギャルゲーからRPG、格闘ゲームを置いておく。


普通の女子であれば、「え?この男重度のオタク?」と思って、一線を引いてくれるに違いない。俺は完璧な準備に満足しながら彼女が訪れるのを待ち構えた。


両親に連れられてきた俺の婚約者は、かなり可愛いというか美人の女の子だった。これだけの美人を俺から振るなんてことをして、彼女のプライドを傷つけた結果どんなことになるか最悪の状況を想定しただけで、俺は震えてしまった。


両家の顔合わせを兼ねた食事会がはじまった。

彼女は終始にこやかで、こちらに優しく笑いかけてくれるが、俺は前世の経験から女の笑顔ほど怖いものはないんだ!!!と気合をいれて、そのほほ笑みについつられて笑いそうになるのをこらえながら、愛想のない表情を崩さなかった。


そして案の定、部屋へ案内することになったので、彼女を俺の部屋に案内する。

中に入ると彼女は明らかに挙動不審で、戸惑っている様子だった。


その様子に俺は、この作戦が成功したことを確信した。おそらく彼女が帰ったすぐ後に、婚約はなかったことにという話があるだろう。


…と思ったが、彼女の両親から断りの連絡は来なかった。

おかしいとは思いながらも、今回は同じ格の家同士の婚約だったので、もしかしたら彼女の両親がすぐに断ることを反対したのかもしれない。とりあえずしばらくは様子をみることにした。


【藤宮椿の場合】


なぜか、突然降って湧いたように、私に婚約者なるものが発生した。

どうやら、私の母親と婚約者様の母親がなぜか意気投合して、そいう結果になったそうだが、かわいい娘の人生を勝手に決めることはやめて欲しい。

なんでも商社社長の三男で、将来的には私の家の婿養子として迎え入れるらしい、とそこまで聞いて私はとてつもないことに気づいてしまった。

所詮前世ただのオタクだったため、実は今世でも結局我慢ができずに、密かにマンガやゲームの類を楽しんでいたのだった。いまどきの女子中学生ともなれば彼氏の一人や二人いてもおかしくないのに、オタク根性が災いしたのか何なのかはわからないが、まだ誰とも付き合うこともなく(つまり前世から通算して何十年も男性とのまともな付き合いもなく)高校に進学してしまった。

そんな、私がいきなり婚約者とか、無理!うまくやれる自信もないし、一緒にいてオタクだとバレる方が怖い…。そこまで考えた末、私はとにかく婚約者の人と仲良くなって、お互い婚約なんてまだ早いしと言って二人で両親を説得する作戦に出ることにした。


婚約者の田崎光くんとのはじめての顔合わせは、彼の家で行われることになった。

私は前世オタクだったとは絶対にバレないくらい完璧に装い、どこからどう見ても完璧なお嬢様だった。


本質的にはあまり愛想の良くない私にとって、明るく可愛らしい感情豊かなお嬢様を演じるために、必死で過去に見たアニメのぶりっ子キャラになりきり、可愛く微笑み、相槌を打つ。

いつもより高めのキーに設定した声をだすのは後半疲れてしまったが、なんとか可愛いキャラを維持できたように思う。

実は、ここに来るまでの車内で母親から「今日は自分という人間は捨てて、可愛いご令嬢を演じ切るように」と言われていたので、チラリと母親を盗みみると、その調子だという感じの目線を返してくる。

とりあえず、どうやら私の演技は成功したようで、ほっとした。


そして、後は若いお二人でという流れになり、彼の部屋に案内された。


私はその部屋に踏み入れた途端、驚愕した。

私の好きなイラストレーターの描いた女の子のポスターが壁に貼ってあった。

それを見て「可愛い可愛い」と言ってポスターに頬ずりしたい衝動を抑えるために、沈黙という手段を取る。


そして、なんとか心を落ち着けようと、本棚の方に視線を向けると、読みたい漫画がぎっしり詰まっていた。


「漫画読んでいい?」

というのは、完全に私のキャラがすることでは無いので仕方なしに机に視線を向けると、私が今世では我慢しているゲームが無造作に置かれてあった。

しかも、私がプレイしたいなあ、と思っていたやつばっかり!!!


だめだ、この部屋は私の心臓に悪すぎる!!


田崎光はオタクなのか?という疑問を持ちながらも、ここでヲタ話をしようものなら、一気に引かれる可能性もあるため仕方なく彼の部屋を出て、両親に帰りを促すことにする。


部屋に入ってから明らかに挙動不審だった私は、もしかしたら、田崎光と友人になるどころか変に思われて距離を置かれるかもしれないと不安になった。


家に帰ってからも、電話が鳴って「この婚約はなかったことに」と告げられるのを恐れながらその晩と翌日を過ごしたが、田崎家から断りの連絡は無かった。


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