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コーヒーは回る


 彼女は酷く冷える空の下、ベンチに腰掛け、肩を落としていた。

 初めに襲ってきたのは、人生初の失恋だった。虫歯か火傷のように、じわじわと痛みが増そうとするのを為すすべもなく待っていた。

 だが、悪いものというのは、群れで襲いかかって来るものらしい。

 内定取り消しの通告が届いたのは、失恋の翌日のことだった。


 彼女は、友人たちの前では平然と振る舞っていたが、一人になると涙がぽろぽろと頬を伝うのを止められなかった。


 自分の人生をねじ曲げた、非常な文面を思う。

 通告はびりびりに破られ、廃棄された後だというのに、その文章は鮮やかな切り傷を彼女の心に残していた。


 あんな一文がしつこく自分を悩ますだなんて。

 自分の存在の耐えられない弱さに、彼女は押しつぶされそうな気がした。




 彼女は乱暴な手つきで涙を拭う。


 そして、隣のベンチに座る男の人に気づいた。

 スーツを着ているものの、終電を逃して、野宿したかのようなよれよれな姿だった。

 だが、その眼は穏やかだ。穏やかなだけではない。慈恵と言おうか、底深い色があった。


「こんにちは」


 男の人が静かに挨拶する。

 彼女は話しかけられることを想定していなかったため、うまく返事ができない。

 ただ眼を丸くして、見知らぬ男の人を見返すしかできなかった。


「あの……どこかで会ったことあります?」

「いいや」


 男の人は微笑を浮かべた。


「でも、寂しそうだからね」


 全く知らない男の人なのに、不思議と危機感を感じなかった。

 彼が、胸に魔法瓶を抱えているのがおかしかった。


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