過呼吸と握る手。
思い出してしまった…あの事を…
辛い…裏切られた…信じてたのに…
友達だと思ってたのに…
嫌だ… 嫌だ… 嫌だ嫌だ…!
「リク!?」
リイナが駆け寄ってくる。
返事をしようとしても…
頭が、痛い…
「リイナ、リク君がどうした?!」
チャラ男も駆け寄って来た。
頭痛は酷くなるばかりで、まともに物を見ることも辛くなって来た。身体も痺れてきた。
「リク!」
リイナが呼んでいる…
「ヤバイ!これ、過呼吸だよ!」
チャラ男が慌てている。
ああ、これが過呼吸か…
息苦しいのと頭痛いのと、全身の痺れは、過呼吸のせいだったんだ…
「どうすればいいの?ショー!」
リイナが、ショーと言われたチャラ男に聞く。
「ボクは先生呼んでくるから、リイナはリク君の事見てて!ゆっくり呼吸するように促すんだ。」
ショーはそう言うと、階段を降りて先生を呼びに行った。
「はぁ…はぁ……」
苦しい…いっそ死ぬのも…悪くない…
「ゆっくり深呼吸!」
リイナが言っている。
それで、助かるのか?
僕はゆっくりと深呼吸しようとしたが、辛くてなかなかできない。
ギュッ
リイナが僕の右手を握った。
「私は、ここにいる。リクは、一人じゃないよ。」
バカヤロー。臭いセリフ言いやがって…
でも、リイナの言葉に偽りは感じられなかった。それに、リイナの手には暖かさがあった。僕にはない暖かさが。
「スゥー ハー スゥー ハー」
深呼吸…できた…
「そうそう!その調子!」
僕はゆっくり深呼吸を続けた。
身体が楽になってくるのを感じた。
数分後…
「リイナ…」
僕のリイナを呼んだ。
「何?」
「君のおかげで命拾いした。ありがとう。」
なかなかに臭いセリフだな…
苦笑したくなる。
「お礼なんて…婚約者として当然の事をしたまでよ。」
やっぱ前言撤回。
そもそも僕は君の婚約者ではない。
「リイナ~!先生連れてきたよー!」
保健の先生を連れたショーが来た。
それと同時に、僕の身体から力が抜けていくのを感じた。
バタン
「リク!」
「リク君!」
「東海林くん!」
どうやら、疲れすぎたみたいだ。




